ぼっちゃんとカマキリちゃん
ぼっちゃんがハリガネムシを知ったのは寄生虫図鑑からです。
メイドちゃんたちもこんな気持ちの悪い本を買ってあげたくはなかったんですけど、お屋敷の主人である祭ちゃんは、ぼっちゃんの欲しがるものならなんでも買ってあげてしまうんですよね。
ところで、ハリガネムシがどんな虫かといえば、名前の通りハリガネのような形をした生きものです。 寄生虫図鑑なんかに載ってるからにはこいつも寄生虫に違いなく、主にカマキリのやつに寄生するみたいです。
ぼっちゃんはその項目を読んだとき、はっとしました。大事なカマキリちゃんのことが心配になったのです。
ぼっちゃんは虫カゴからカマキリちゃんをだし、紙コップに水を組み、お尻をつけてやりました。もしハリガネムシが寄生してる場合お尻から出てくるそうなんです。
大切に育てたカマキリちゃんは無事であって欲しいですよね。ぼっちゃんは祈るようにカマキリちゃんを見守りました。
でも数秒後―カマキリちゃんのお尻からはなんかにょろにょろしたやつが出てきました。
図鑑に載ってた姿と同じです。ハリガネムシ野郎に違いありませんでした。カマキリちゃんのお腹はすっかり萎んでしまいました。
「びっ、びぃぃぃっっ」
ぼっちゃんは悲鳴をあげました。
「どうしたのぼっちゃん」
悲鳴を聞き、モモちゃんとひまわりちゃんが駆けつけました。
「うわ、なにこれ気持ちわるっ」
ひまわりちゃんはハリガネムシ悪口は言いました。
でもそんなことはどうでいいんです。ぼっちゃんはハリガネムシがあまり気持ち悪いから泣いてるわけじゃないんです。ただカマキリちゃんのことが心配なんです。たしかにカマキリちゃんは明らかに衰弱している様子でした。
ぼっちゃんはもうどうしたらいいかわからなくなってました。カマキリちゃんを手のひらに乗せ、助けを求めるようにモモちゃんとひまわりちゃんを交互に見ました。そして、また弱ったカマキリちゃんを見て、ほろほろと涙を流しました。
モモちゃんもひまわりちゃんも助けてあげたい気持ちはあります。でもふたりとも昆虫のことなんかさっぱりなんですよ。
「あ、まにまになら…」
モモちゃんは助けてくれる知識を持った存在を思いつきました。
ぼっちゃんははっと顔をあげ、井戸端のまにまにたちのところに駆け出しました。井戸には梯子がかかっています。でもあまり急いでるものですから、ぼっちゃんは梯子から落ちてしまいました。
安全用無重力化装置の作動に気づき、まにまにたちは落ちたぼっちゃんの元に駆けつけました。ぼっちゃんはカマキリちゃんを庇うように転がってました。顔をあげるとサマーショーとウィンタースノウの他にもうひとりまにまにがおりました。なんと昆虫博士として名高いマニーブル博士と居合わせたのです。
マニーブル博士はぼっちゃんの前に座り、カマキリちゃんを観察しました。ぼっちゃんは訴えるようにマニーブル博士を見てました。やがてマニーブル博士はフルフルと首を振りました。
もう手遅れだったのです。カマキリちゃんはもうじき死んでしまうでしょう。
ぼっちゃんは力なくお屋敷に戻りました。玄関を開けてくれたのは青ちゃんでした。不のオーラが近づいて来ることに気づいたのです。このときにはすでに騒ぎはメイドちゃんみんなに知れ渡ってました。
「どうだった?」
ひまわりちゃんは尋ねました。でもぼっちゃんはなにも答えずトボトボと虫カゴの前に戻り、カマキリちゃんを戻しました。もう長くはないけれど、ここがカマキリちゃんのおウチですからね。
虫カゴの横にはハリガネムシのいる紙コップが置いたままになってました。ぼっちゃんの瞳が憎悪が満ちました。
ぼっちゃんは紙コップを持ったまま外に飛び出し、中身を地面に打ち捨てました。そして、地面でのたうち回るハリガネムシをなん度も、なん度も靴で踏みつけてやりました。
ハリガネムシだって生きるためにしてることです。人間がブタさんや鳥さんを食べるのとなんら変わりはありません。でもぼっちゃんはハリガネムシなんかより、カマキリちゃんの方が好きだったんですよ。
みなさんもカマキリを飼うときは、くれぐれもハリガネムシにはご用心ください。
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