チャーシューからの解放

O.K

第1話:チャーシュー依存症の彼

主人公の田中一郎は、幼少期からチャーシューが大好きだった。母親が作る柔らかくてジューシーなチャーシューは、彼にとって至福の一品であり、どんなに辛い日でもチャーシューを食べることで元気を取り戻すことができた。


成長するにつれて、彼のチャーシューへの愛はますます深まった。大学生になると、一郎はアルバイト代をほとんどチャーシューに使うようになり、自炊する際もチャーシューを欠かすことはなかった。彼の冷蔵庫にはいつもチャーシューがぎっしり詰まっていた。


転機

社会人になり、一郎はIT企業で働くようになった。忙しい毎日を送る中で、彼の唯一の楽しみは仕事終わりに行くラーメン屋のチャーシューだった。彼は毎日のようにそのラーメン屋に通い、特盛チャーシューラーメンを注文していた。


そんな生活が続いたある日、一郎は体調に異変を感じた。腹痛や吐き気、そして異常な疲労感が続くようになったのだ。病院に行くと、医者から驚愕の診断が下された。彼は胃がんを患っていたのだ。原因は過剰なチャーシューの摂取によるものだと言われ、一郎は愕然とした。


入院生活

入院が決まり、手術と化学療法が始まった。病院食は味気なく、一郎はチャーシューを食べることができない日々に苦しんだ。彼の病室には友人や同僚が見舞いに来たが、一郎の心はいつもチャーシューへの渇望でいっぱいだった。


ある夜、一郎はどうしてもチャーシューが食べたくてたまらなくなった。寝静まった病院をこっそり抜け出し、タクシーでお気に入りのラーメン屋へ向かった。ところが、財布を持ってくるのを忘れてしまい、店内でラーメンを食べることができなかった。


禁断の行為

お腹を空かせたまま店の前に立ち尽くす一郎。やがて我慢できなくなり、彼は大胆な行動に出た。ラーメン屋の裏口からキッチンに忍び込み、生のチャーシューを冷蔵庫から取り出して食べ始めた。しかし、生肉は彼の胃に負担をかけ、その場で激しい腹痛に襲われた。


倒れ込んだ一郎はラーメン屋のスタッフに見つかり、救急車で再び病院へ運ばれた。医師たちは彼の無謀な行動に呆れつつも、なんとか一命を取り留めることができた。


変化と回復

この出来事をきっかけに、一郎の心に変化が訪れた。チャーシューへの異常な執着が消え去り、彼は健康的な食生活を送るようになった。退院後、一郎は野菜中心の食事に切り替え、毎日適度な運動を心がけた。その結果、体調はみるみる改善され、癌も完治した。


一郎は、チャーシュー依存症から解放されたことで新しい人生を歩み始めた。彼の冷蔵庫には、もうチャーシューは一切入っていない。代わりに新鮮な野菜や果物が並び、一郎はそれらを楽しみながら健康な毎日を送っていた。


終章

過去の過ちから学び、今では健康的な生活を送る一郎。彼は時折、病気で苦しんでいた頃を思い出しながらも、前向きに生きることの大切さを感じていた。かつてのチャーシュー依存症は、彼にとって忘れられない教訓となり、彼の人生をより良いものに変えたのだった。

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