二人きり息子と過ごす新生活 夢見る義母に鉄槌が下る

 二人きり息子と過ごす新生活 夢見る義母に鉄槌が下る



 金貸してくれ事件からしばらくは平穏に時が過ぎていきましたが、とあるカフェでまったりしていた時に元ダンと遭遇してしまいました。私を見つけた元ダンが嬉しそうにしながら私の隣にやってきます。


 久しぶりと話しかけてきてまた勝手に喋りはじめました。


「女は離婚したあと半年は結婚できないけど男は直ぐにできるから得だよな、そういえばもう半年過ぎてるからお前も結婚できるぞ」


 また何を言い出すかと思えば……


「ひょっとして離婚前から付き合ってた女の人がいたわけ? だったら慰謝料もらわないとね」


「ち、違う。まぁ俺に粉かけてくる女はたくさんいたけどな、結婚している間は付き合っていなかった」と焦ってました。


「ふーん、それよりお金はサラ金に借りたの? それともあの鬼、じゃなくて親に出してもらったの」


 義母の話を出した途端に元ダンの眉間にしわが寄りいろいろと愚痴を言い始めます。


 私がいなくなった後、義母はたいそう喜んで息子と二人だけの生活にあれこれ夢を見ていたそうです。毎晩、好物の夕食を作って帰りをずっと待っていたり、家を建てようと資料を集めてきたり、それはそれは楽しそうなんだとか。


 しかしながらその新築は元ダンが長期ローンを組んで支払う計画で次に嫁に来る人に頭金を払ってもらうという身勝手なものだったそうです。


 普通なら引くと思いますが私はこの家族だからなと別段驚きもしませんでした。


 ですが元ダンは珍しくおかしいと思ったようで彼曰く、晩飯は作らなくていいと言ってるのに毎晩大量に作ってはテーブルに並べてるし、家なんて建てたくないのに勝手に話を進めてしかも俺が払うとか、ぶちギレて怒鳴ったら泣き出したんだと。


 へぇー、あの鬼も泣くんだぁ。


 実のところ元ダンはよく泣く人で結婚前に一度私から別れ話をしたらお前も俺を捨てるのかって泣かれた事がありました。義母から叱られて泣いていたこともあって威張り散らす割にメンタル弱い人だったのですが義母を泣かすとはなんだか面白い展開になっています。


 そこで私はアドバイスをしてあげる事にしました。


「次のお嫁さんは大事にしてあげなよ。同居とか本当に可哀そうだから絶対にやめたげて。あなたのお母さんはまだ若いし一人でも大丈夫なんだからアパート借りてあげればいいのよ」


 元ダンはうんうんと大人しく聞いてそれを実行したようです。


 つづく

   

※ ちなみに2024年4月1日以降、民法の改正により女性も男性と同様に離婚後すぐに再婚できるようになりました。

 

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