第32話 チェックポイント・眠り姫の安息の地

「もしくは教室のどこかに姫をイメージした物があるとか?」

俺は宇佐ちゃんに返す。

「姫っぽいものはなかった気がするけど」

資格取得部の受付には二部開始直後と札が置いてある。受付を済ませて教室に入る。横でそっと宇佐ちゃんが呟いた。

「生徒会は、この入場料は出してくれるのかな」

「……どうだろ」

この呟きは忘れてあげる方が優しさか。

正面に森の探検の参加案内がある。

「ねえ、宇佐ちゃん。さっき来た時も思ったんだけど、あの参加案内ってもしかして」

二人で参加案内のパンフレットが入ったプラスティックのカゴをあさる。

「あ、あった」

俺はカゴから小さいスタンプを拾い上げた。

スタンプを押して一年二組を目指す。

「ね〜、さっき匿名懺悔室ってあったじゃん? あんなの個人企画だよね」

「だろうね。めちゃめちゃ空いてたし。誰が企画したんだろね」

「確か体育館前だったっけ」

俺は思わず通っていった派手な制服の学生を目で追った。

「洸君はああいう系の女の子が好み?」

宇佐ちゃんに冷たい視線を向けられる。いや、女の子を見たんじゃなくて、内容が気になっただけなのだけど。

「匿名懺悔室なんてユーリちゃんが企画しそうだなと思って」

否定しても怪しいだけだ、と思ったことをそのまま言った。案の定、宇佐ちゃんは興味を失ったようで話題に乗った。

「動き回っているユーリさんは大人しく個人企画をするかなあ?」

ユーリと聞いて、先ほどの報告を忘れていたことを思い出した。一応、一緒に捜しているのだから言っておかなければいけないだろう。後から人伝に聞くのは気分が良いものではない。

「そういえば、さっき飲み物を買いに行った時、ユーリちゃんぽい人を見たんだけど、白鳥先輩とすれ違って見失ったんだ」

宇佐ちゃんは勢いよく振り返る。

「それを先に言ってよ! 急いで追いかけないと」

俺は走り出しそうな宇佐ちゃんを引き止める。

「いや続きがあって、白鳥先輩はそのままスタンプラリーを続けてって言ったんだよ」

立ち止まった宇佐ちゃんはまたも冷たい視線を向けてくる。

「だから、それを、先に言ってよ……」

俺はどうやら口下手らしい。

一年二組の前でコンプリートした台紙を渡す。

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