第28話 眠り姫の”安息の地”

「そこは、ほら。王子が茨を切り開いて姫を見つけないと。努力して来てくれた方が姫も嬉しいんじゃないのかな」

第一声の俺の感想に、宇佐ちゃんは苦笑いだ。

「有名な映画とかだとそういう風に書かれるけど、諸説あるんだよ。興味があるなら読んでみなよ」

俺は「ふーん」と流した。興味は無い。

「でも重要な部分はわかったよ。眠り姫の“安息の地”落ち着いて眠っていた場所」

「茨の森?」

「そう。で、このパンフレット上で茨のある場所は?」

宇佐ちゃんは思い至ったようだが、半信半疑といった様子だ。

「同じ場所に帰ってくるスタンプラリー、なんてある?」

――そう言われると俺も自信がなくなるけれど。

「でも、これだけ難易度が高くて世界観を重視しているとしたら、可能性はあると思う。あ、サンザシ」

サンザシはこのために植えられたと思うほど、堂々とした姿で生えている。しかし元々ここにあったかのように、この庭に馴染んでいた。

二人でウロウロとサンザシの周りを歩き回る。

「あ、ここ」

俺とは反対周りでサンザシを観察していた宇佐ちゃんが声を上げた。

サンザシの枝から軽そうなスタンプがぶら下がっている。

二人でスタンプを押し、眠り姫の安息の地を目指した。

「この難易度のスタンプラリー、クリアした人いるのかな」

宇佐ちゃんはワクワクした様子だ。

確かに、と俺も言っておいた。

「俺たちが最初かもしれないね」

「それだとかなり嬉しいかも。達成感凄いだろうな」

正直、ユーリちゃんの呟きで造園部、と聞かないと行き詰まっていたと思う。パンフレットを見たときに、行ってみようと思ってすっかり忘れていた。

「これは気合が入るね! ユーリさんより早いと良いけど」

そんな風に、一番乗りを楽しみに歩き続ける。

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