第26話 造園部
「なぜユーリちゃんが造園部へ向かったか」
俺が呟く。
俺と宇佐ちゃんは造園部へ向かって廊下を歩いていた。靴を履き替えパンフレットを頼りに歩を進める。
「サンザシは園芸部ではなく造園部にある、ということかな」
「確かにサンザシは園芸ではなく造園に用いられることが多い。造園部があることを見落としていたね」
ハッと顔を上げた宇佐ちゃん。
「私がユーリさんと会った場所の近くにサンザシが植えられていたかも知れない。ヤマモモの木の近くなんだけど」
ユーリちゃんが飛び降りた、ということはかなり成長した木なのだろう。
「ヤマモモはかなり大きく成長するから、目立つと思う。宇佐ちゃんはヤマモモの木を見分けられるんだよね?」
宇佐ちゃんは大きく頷く。
「場所もなんとなく覚えてるから、近くまで行けると思う。近くまで行ければ見つけられるよ」
造園部についた俺と宇佐ちゃんはユーリちゃんがどこかに隠れていないか、見渡しながら歩く。
「あ、あの編笠門を通った先の池庭を越えるとサンザシの植えられた場所があるはず」
美しい池庭を、石畳に沿って歩く。庭の池を横断する橋の中心まで来ると、庭を見渡せた。
「ここにはユーリちゃんはいなさそうだね」
俺の言葉は、少し落ち込んだ雰囲気が乗ってしまっていた。反して宇佐ちゃんは前向きだ。
「だったら、素早く次の“眠り姫の安息の地”にたどり着けばユーリさんと合流できるかも」
宇佐ちゃんがあまりに前向きな言葉を笑顔で言うものだから、俺も笑顔で同意する。
「俺もその通りだと思うよ」
橋の後半を、早足で進んだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます