第10話 二人一組! スタンプラリー!
そんなことを思って歩いていると、ようやく一年二組にたどり着いた。一年生で副部長とは、他の先輩は何をしているのか。
ふと思ったが、とりあえず一年二組の看板を見る。考えても答えは出ないのだから、厄介な用事を済ませる方が先だ。
『二人一組! スタンプラリー!』
笑えない。二人一組である必要性を感じない。先ほど神田さんの申し出を断らなければ良かった。どう相手を探すべきか。
スタンプラリーを二人で行うシステムに首を傾げる。謎解き要素や、ミッションクリア系のミニゲームでもあるのか。
中を覗き込んでも受付と説明のスタッフがいるだけで、目当ての三原椎名先輩は見当たらない。カーテンで仕切られた教室の残り半分も気になる。おそらく小道具や備品が置かれているのだろうけれど。
どこかで休んでいるのか、スタンプを持って立っているのか。どのみち探し回らなければならないなら、スタンプラリーをしながらだと効率は良い。仕事中だったら会いやすい。
「二人、一組……」
横で俺と同じように唸っている少女が現れた。
――奇跡!
制服は公立中学のセーラー。確か新井中学だ。ピンクの髪で赤いリボンをつけたふわふわしたウサギのような少女だ。
俺が見つめすぎたのか、下から見上げてくる。苦笑いの微笑みを向けられる。
「二人一組で困ってますか?」
目が合った以上、無視するわけにもいかず声をかけた。
「はい。ちょっと訳あってここのクラスの方に用事があるんですけど、お仕事中に私情でお声がけするなら参加しないとな、と思って」
仲間ができてホッとした。おそらく断られることはなさそうだ。困り眉になっている少女は、うんうんと唸っている。
「もし、連れがいないようなら俺と組みませんか? 俺もこのクラスの方に用事がーー」
そう言って視線を下す。目が合うようにおろしただけなのだが、見覚えのあるヘアピンがセーラー服の襟についている。
ユーリちゃんとやらは、かなりのイタズラ好きらしい。
「もしかしてですけど、その用事のお相手は三原椎名さんだったりします?」
ウサギさんは驚いた顔で俺を見上げる。元々、小さくはない目を大きく開く姿は、神田さんとは違い、いわゆる養殖系ではなく天然らしい。
とはいえ、見上げているから気が付かないのだろう。
「なんでわかったんですか!?」
そして、かなり素直である。
「俺も、おそらく君と同じ用事なんだけど……」
扱い方がわからないため、壊さないように、と付けたままだったブレザーの胸ポケットを指差す。
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