第2話

――――――夜の公園のベンチ。


『お疲れ』

『お疲れ』

『隣どうぞ?』


僕はみやびの横に座った。


『……。』

『うるさい』


貧乏ゆすりをする僕にみやびが笑う。


『みやび、しよ?』

『なにを?』

『……。』


僕が両手で自身の下半身を指さしてにやにやする。


『あ、あたし、女しか興味無い。ごめん。』

『……え?』

『うん。残念。』

『……あり?』

『なにが。』

『めちゃくちゃ色っぽいのに。』

『そんな固くて大きいの入れられてもね…痛いだけ。それに乱暴なやつばっか。』


『俺は違うよ』

『違わない。私は、私がリード出来る子としかしないの。』

『……なるほどな。』


『……』

『でもやっぱしたい!』

『今の話聞いてた?』




―――――――――――――――自宅。


『先風呂入っていいよ。』

『覗かないでよ。』

『フリなら行くぞ』

『マジでやめて。』

『わかったー。』


みやびはカバンの中から着替えやタオルを持って風呂へ向かった。


『タオルならあるぞ、』

『使ったタオルの匂い嗅がれても嫌。』

『お前どんな変態といたの。』

『……。』


みやびは僕を指さした。


『は?俺?』

『人の服の匂い嗅ぐの好きでしょ?』

『……なんで知ってんの?!』


小声でそう言うと、


『あたし寝たあと、あんたソファーで寝てる時にあたしのパーカー抱いて寝てた。』

『……マジか。見てたんだ。』


『でも、嫌いじゃない。』


みやびが聞こえるか聞こえないかで囁いた。


『え?今なんて?!』

『なんも言ってない。変態!』



この日は、お互いの仕事終わりに公園で待ち合わせて僕の家に連れ込んだ。


今僕らは30代。子供の頃からの仲。

お互い相手は今いない。というか僕の場合、ずっと居ない。


みやびは…どうなんだろ。



たまにこうやってお互いの家に泊まる仲。

行為はしたりしなかったり。それが重要ではない。


この日も交代で風呂に入って、みやびは僕のベットへ。僕はソファへ。…の予定だった。



――――――――――――『雅』

僕らは珍しい。男のみやびと女のみやびの組み合わせ。それが面白くて友達になった。



『みやび。』

『なに?』


みやびが、長い髪をタオルドライしながら答える。リビングであぐらをかいて、…もう我が家みたい。


『みやびに渡したいものあってさ。』

『なに?』

髪をバサバサ乾かしながら僕を見てる。


『その前に…髪乾かさねーと。風邪ひいちゃう。』


僕はみやびの後ろに回って髪を乾かしながらトリートメントを付けた。


『毛先だけ…毛先だけ…』

『ここ来ると楽…。ドライヤーまで付いてる。』

『Hも付いてるぞ。』

『それ別に要らない』

『俺は欲しい。』

『あたしは要らない。まぁ、たまにね、あってもいいかなってときは、あるけど。』

『3食H付き。こんなとこあったらいいな。』

『ババァしか出てないよきっと。』

『うぇ…要らね。プロ呼ぼ。プロ。』

『野球選手呼ぶの?』

『付いてるやつは要らん!女の子呼ぶの!』


みやびが笑ってる。

こいつがここに来る時は心が疲れた時。

ここか、みやびの家かどっちか。


あぁ!でもたまにどっちかの誕生日とか、クリスマスとかに泊まりもある。……付き合ってんのかこれ??



『お風呂入ってきたら?私に渡したいってあれ、後でいいからさ。それとも今がいいの?』

『うーん…。』

『10、9、8、』

『後!あとでいい!』


『あはは…。ほんとにあんたは面白い。』



――――――――――――――――――。


『雅。』

『はい。』

『これ?渡したいものって。』


みやびが僕に婚姻届を見せた。


『それもだけど、もう1個ある。』


僕は鞄の中から小さな箱を出した。


『……ダメもとだから。』

『うん?』

『……俺と結婚して。俺が雅を幸せにしたい。今他がいるなら切って欲しい。別に見た目に自信なんてないけど、でも俺、誰よりも雅のことが好き。』


すると、雅は僕に襲いかかって上に乗ってきた。


『……。』

『雅。毎日ここにいていいの?帰ってきていいの?「鬱陶しい」とか言わない?』

『言いません。むしろ…ずっとここに居てください。ここに帰ってきてください。』


雅は僕にキスした。


『何年待たせんの。』

『え?……』

『私の想定3年前だった。30に入る前。』

『ごめん。。』

『いい。別に。女の匂いもしなかったから。私だけなんだって安心できてたから。』

『当たり前だろ。。お前の他になんて要らない。』

『……ありがとう。』

『……貰わせろ。』

『貰って。』

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