第45話 パーティー
ワギャンエンペラーのドロップは帝王の鱗。
それとワギャンア―マーセットのうちの足と手に、魔石数個だ。
鱗はショボい報酬のイベント用。
ワギャンアーマーセットは水耐性のある重装防具だが、その防御力は今俺が着てるSSSランクの物より劣ると来てる。
しかも魔石もたった数個。
うん、果てしなくショボい。
まあそりゃこのドロップじゃ廃人には見向きもされんわな。
「さて……流石に此処は引き狩り出来ないから気合いを入れなおさないとな」
エンペラーを狩りワニ島から引き揚げた俺は、別の狩場へと足を運んでいる。
混沌の魔窟と呼ばれるダンジョンだ。
ここは三層構造のダンジョンで、俺は入ってすぐの上層と呼ばれる場所で狩りを行う。
出て来る魔物はグレイデーモン、ダークエンジェル、ダースリッチの三種類だ。
グレイデーモンはフィジカルお化けの近接ファイタータイプでマッチョ。
ダークエンジェルは攻撃魔法と回復魔法の賢者タイプの堕天使。
そしてダースリッチは、攻撃魔法や状態異常をばら撒くウィザードタイプの骨野郎となっている。
上層では、この三種がパーティーを組んで行動している形だ。
え?
魔物の癖に無駄にバランス良さそうなパーティーなんて組むな?
俺もそう思う。
特にヒーラーは迷惑極まりない。
殴って与えたダメージを背後から無かった事にするとか、正に外道のする事だ。
プレイヤー連中もやってる?
プレイヤーはいいんだよ。
プレイヤーは。
そう、人間様は特別なのだ。
因みにここはパーティー推奨の高難度狩場で、5人以上が好ましいと公式から提示されてている。
「まあ5人以上って表記を見て、じゃあ5人で行けると思うと痛い目に合う訳だが……」
実際俺も募集されてた臨時パーティーに参加して挑んで――もちろん5人な――綺麗に全滅した苦い思いでがある。
5人は5人でも、ある程度強くて連携できる5人だった訳だ。
まああれ以降ここには来てない訳だが、一応攻略方法自体は頭に叩き込んであるので問題ない。
「あの時のリベンジと行くか。バフを頼む」
精霊に入っていたユミルは用事があるとの事で、既に中身のないオート状態に変わっている。
なのでバフや回復は逐一俺が指示を出す必要があった。
ま、その方が俺的には楽でいい。
ユミルがいると、色々と気を使わないとならないからな。
それに分身なら、狙われた際気兼ねなく出しいれ出来るし。
「接近戦になったらバグリンは俺が攻撃してる奴にあわせてくれ。アシッドからニードルの順で。妖精は戦いが始まったら離れた場所で30秒に一度自己回復を」
『はーい』
ダンジョンを少し進むと一組目を発見。
先頭はデーモンで、少し後ろに堕天使と骨が並んで三角形の形の陣形だ。
この三体の魔物の中で、真っ先に始末しなければならないのが堕天使である。
理由は言わずもがなだろう。
コイツを後回しにすると延々回復されて、戦闘が無駄に長引くからな。
まあでも普通に殴りに行ったんじゃ、確実にデーモンに邪魔される事になるだろう。
こいつはパーティーのタンク役だからな。
なのでパーティーではアタッカーやタンカーがこいつを引きつけ、その間に他のメンバーで堕天使を沈めるのがセオリーとなっている。
タコ殴りにしてれば魔法の詠唱妨害も発生するので、自己回復も起きないしな。
だが俺はソロ。
バグリンや精霊はいるが、こいつらにそれを任せるのは流石にあれなので、他の手段で堕天使を落とす。
で、その次がデーモンで最後が骨野郎だ。
耐久力的に考えるとダースリッチの方が倒しやすいんだが、ぶっちゃけこいつは一番脅威度が低いからな。
攻撃魔法は闇属性で滅茶苦茶耐性効くし――バフで80%カット。
状態異常系もバフの50%カットに加えて、俺自身の幸運が高いのでほぼ喰らう心配もない。
そら最後に回すわって話である。
「じゃあ行くぞ!先制攻撃だ」
先制の斬撃を飛ばす。
距離はそれ程離れていないので直ぐに接近戦になるだろう。
まあダンジョンだし、超遠くからってのは現実的じゃないからな。
「ぐわお!」
狙いは堕天使だったが、それをデーモンが体を張って遮る。
タンク役の鑑の様な動きだ。
因みに、デーモンのHPはワギャンの20倍以上あるので流石に簡単には落とせない。
回復もあるなら猶更。
「ぐおおお!」
デーモンが俺とバグリンの攻撃を受けながら突っ込んで来る。
堕天使とリッチは途中まで一緒に突っ込んできたが、ある程度の距離で足を止めて遠距離魔法を詠唱しだした。
突っ込む前衛と、その場に留まる後衛。
当然そうなるとその両者の間には距離が開く。
これが俺の狙いだ。
「転移!」
「!?」
デーモンが俺の目の前に迫った瞬間、俺はタリスマンの転移を使用する。
ダークエンジェルに向かって。
まあ最大20メートルなので届かないが、足りない分は――
「アサシネーションキル!」
――移動効果付きのスキルで補う。
「バグリン!アシッドバレットを頼む!」
背後にスキル攻撃を入れつつ、バグリンに指示を出す。
至近距離で撃つと飛沫で俺もダメージを少し受けてしまうが、強力なデバフである防御ダウンは発生しないので必要経費として割り切る事にする。
ダークエンジェルを倒す事優先だ。
『はーい。ぷぷぷぷぷ』
「とっとと死ね!」
防御ダウンの入ったダークエンジェルを攻撃しまくる。
ダメージで魔法が中断され――魔法の詠唱は物理ダメージを受けると一定確率で中断する――ダークエンジェルは物理攻撃に切り替え、手に持った錫杖で殴りかかって来た。
が、攻撃は無視だ。
こいつの通常攻撃は闇属性なので、バフの80%カットが効くためたいして痛くはない。
リッチの対象を中心とした範囲魔法――黒い煙が俺を中心に渦巻く――が発動するがこれも無視。
コイツの魔法は状態異常がセットになっており、かかると厄介だがダメージ自体はそれ程でもないからな。
「ぐおおお!」
ダークエンジェルを殴る俺にデーモンが突っ込んで来る。
そこに俺は――
「ゴッドブロウ!」
――吹っ飛ばしかつスタンのデバフ付き強スキルを叩き込んでやる。
これでデーモンに大ダメージかつ、一定時間無力化が発生する。
いやホント素晴らしいわ。
このスキル。
因みにこれをダークエンジェルに使えば瞬殺も可能だったが、結構なオーバーキルになって無駄なダメージが勿体ない気がしてこういう使い方にしている。
デーモンくっそHP多いからな。
「よし!次はデーモンだ!」
スタンの間にダークエンジェルを処理出来たので、次はデーモンに移る。
相変わらずリッチの闇魔法は無視。
30秒に一度の妖精の自己回復だけで余裕でオーバーヒールだ。
「よっと!」
デーモンのぶん殴り攻撃や噛みつきは属性がないので普通に痛い。
なので可能な限り躱しつつ、攻撃を入れていく。
「よし!残すはリッチだ!」
ゴッドブロウが相当効いていたのだろう。
思ったより早くデーモンが沈み、残ったデーモンもサクッと処理する。
「ふぅ……」
ドロップは今一だった。
まあレアドロップが出ても不用品だから、その辺りはどうでもいいが。
「これでワギャン50匹分だからな。美味過ぎる」
殴られたり魔法喰らったりする分痛みはどうしても発生してしまうが、まあこの程度なら継続に支障はない。
ガンガン狩ってもりもり経験値を稼いでいこう。
「ああでもこのハイペースだと、クールタイムの都合で二回に一回しかゴッドブロウが使えないな……まあいいか。今の感触なら寧ろなしでも楽勝だろうし」
俺は超効率の叩き出せるこの狩り場で、レベルを95まで上げる。
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