第40話 セット効果
「よし!防具完成!」
レベル上げに際し、俺はSSSランクの防具を製作する。
レジェンド防具を作らないのか?
うん、作らない。
というか、作れない。
何故なら、大成功が発生するのは武器だけだから。
そう、防具は製作では作れないのである。
武器は作れて何で防具は駄目なんだよって思わなくもないが、まあそれが仕様なのだからしょうがない。
なのでレジェンド以上の防具を手に入れるには、ボス系を狩る必要があった。
因みに、防具の製作に必要な素材はほぼ武器と同じだ。
なので新しく素材を手に入れる必要はない。
「これで水耐性もばっちりだし、狩りにいくか」
防具にはオプションがなく、代わりにセット効果という物があった。
セット効果は、同系統の防具を身に着ける事で効果が発揮される特殊効果だ。
その効果は特定の攻撃の威力が上がったり、属性や状態異常を防いでくれたりと多種多様である。
で、今回俺が作ったのは、アクアセットと呼ばれる水耐性の効果のあるSSSランク防具だ。
今から水属性攻撃が強めの奴を狩りに行くので、それに持って来いのセット効果である。
「じゃあ行くか。ワニ島へ」
向かうのはワニ型の魔物が大量に生息する島。
通称ワニ島である。
高レベル高効率の狩場で、そこでレベルをカンストまで上げる人も多い場所だ。
まあ俺は95までだけど……
95になるとイベントで行ける場所が増え、より高効率な狩場を選択できる様になる。
そこはかなり敵が強い場所であるため、基本廃人御用達の狩場なのだが、今の俺のステータス、それに装備と聖女のエリクサーさえあれば余裕だろうと踏んでいる。
……まあきつかったら、その時は弓を作ってバグリンの飛行を利用した引き狩りにシフトするだけだ。
殴るより少々効率は下がってしまうだろうけど、それでも間違いなくワニ島より効率が出る筈である。
「じゃあバグリン。ひとっ飛び頼む」
本来ワニ島へは海賊に依頼して船に乗せて行って貰う必要があるのだが、今の俺にはバグリンの飛行があるからな。
たいして陸地から距離も離れていないので――海岸から目視出来る程度の距離――バグウィングで運んで貰う事にする。
前提イベントを熟すのが面倒くさいし。
『いいよー。ばぐうぃーんぐ!』
バグリンの翼でワニ島へと渡る。
島は湿地が大半で若干不快だが、まあ狩りに支障が出る程ではない。
「よし、じゃあ始めるか」
狩るのは、島の名前の由来であるワニの魔物である。
二足歩行で、体長10メートルを超える横幅の広いマッチョな体格をした槍持ち――ワギャンランサー。
見た目はランサーとほぼ同じだが、手には大剣を持つワギャンウォリアー。
この二種が狩りのメインだ。
それ以外にも、ランサーなんかより二回りは小さく杖を持つワギャンソーサラー。
同じく小柄のワギャンアーチャーなんかもいる。
まあこの二種に関しては、絡まれたらやるって程度だな。
近接ワニに比べて旨味が少ないから。
ああ、後、この島の中央にはワギャンエンペラーというボスがいるが……
そいつとは戦わない。
クッソタフなだけなボスなので、倒す事自体は難しくない。
エリクサーもあるし。
けどこいつは雑魚なだけあって、大したものをドップしないのだ。
しかも経験値も、こいつを狩るより雑魚を狩ってた方が遥かに時間当たりの率がいいと来ている。
誰がそんな奴狩るかっての。
「よし、まずは槍だ」
最初に目についたのがランサーだ。
此方が見つけると同時に、相手も戦闘態勢に入った。
視認能力は俺とほぼ同等。
基本的に剣と槍は近接戦闘を仕掛けて来るが、最初だけは――
「よっと!」
――口から尖った水の塊を吐き出すスキル、ウォーターランスで遠距離攻撃を仕掛けて来る。
俺はそれを躱し、バグリンに指示を出す。
「バグリン!近づくまではアシッドバレットを頼む。接近戦になったらニードルで」
『わかったー。ぷぷぷぷぷぷ』
ランサーは水の槍を放つと同時に駆け出し、驚異的な足の速さで間合いを詰めて来る。
そんなワニに向かってバグリンがアシッドバレットを仕掛ける。
「ギュアアアアアア!!」
アシッドバレットが直撃するが、タフなランサーは
脳筋パワー系の見た目からも分かる通り、喰らうと結構なダメージを受ける事になるだろう。
俺はそれを――
「アサシネーションキル!」
――回避込みのスキルを使って躱し、ランサーの首筋に背後から短剣の一撃を叩き込む。
クリティカル!
左手に装備している影の刃には、クリティカル率を50%上昇する効果がある。
これはクリティカルの発生するアサシネーションキルにも乗るため、かなり相性がいい。
「おっと」
スキル後、落下しながらランサーの背中に攻撃を左右一セット叩き込む。
そして地面に着地すると同時に、俺はジャンプする。
こいつは敵に背後を取られると、振り返り際に尻尾による足払い攻撃が発生するためだ――尻尾はかなり太いので、足所か腰あたりまで刈られるレベル。
「ギュアアアアアア!!」
そしてそれをやり過ごしたら次は正面からの殴り合いである。
基本的に大振りの動きなので、気を付けてさえいれば槍の攻撃を真面に喰らう様な事はない。
まあとは言え、ノーダメージという訳にはいかない。
ちょくちょく近距離範囲攻撃――槍を天に掲げ、水の槍を自分の周囲に頭上から振らす――をやって来るからだ。
これは出が結構早く、また頭上から振って来る水の槍の数も多い。
そのため、攻撃を完璧に躱すの困難となっていた。
なので使われた時点で被ダメージ確定である。
まあ俺に当たる分にはどうって事も無いが……
範囲攻撃は、槍の直接攻撃に比べて威力が低めだ。
しかも俺には、防具のアクアセット効果による水属性ダメージの半減もある。
なので、喰らってもそのダメージはたかが知れていた。
問題はバグリンだな……
バグリンは俺より防御力が低い。
しかも、セット効果の耐性もないのだ。
そのため、喰らうとそこそこいいダメージを受ける事になる。
流石に数度当たった程度で死にはしないだろうが……HPがモリッと減るのは、余り楽しい気分ではない。
なのでここはHPと自分の精神を安定させるためにも、範囲攻撃が来たら体を張ってバグリンを庇うとする。
「よし!楽勝!」
範囲攻撃を使われる前にランサーのHPをササッと削り切る。
つまりノーダメージだ。
それが可能だったのは、想像以上の驚異的火力の賜物と言えるだろう。
「やっぱレジェンド武器は半端ねぇわ」
ゲームないではSSSランク武器が最高だった身としては、触れる事など無かったフル強化レジェンド武器の威力に感動を隠せない。
その素晴らしい火力に感激した俺は、思わず武器に頬ずりした。
二本の短剣に頬ずりする姿は、他人が見たら変態以外の何物でもないだろう。
だがここに人目はない。
何を憚る必要があろうか?
『あるじー。ぼくもがんばったよー』
「おう、バグリンのバレットとニードルも最高だったぞ」
『えへへー』
「これならあっという間に95にまで行けそうだな」
経験値半減を補って余りある火力である。
「そういや……このタリスマンには精霊召喚もあったな。ちょっと試しに使ってようかな」
出したからって効率に影響するとは思わないが、テストはしておいて損はない。
何処で使うか分からないしな。
能力は把握しておいた方が良いに決まっている。
「たしか……分身だから能力はユミルに準拠するんだったよな。で、本人がコントロールする事もある、と。なら先に一声かけとくか」
急に呼び出されたらびっくりするかもしれないので、俺は念話で事前にユミルに連絡した。
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