第5話 一緒にゲームでもしよ!
土曜日。双子の幼馴染である、姶良姉妹とやって来たわけだが、休日に外に出ること自体、理久からしたら珍しかった。
いつもと違う事をすると、その状況に体が馴染むまで大変なのだ。
普段は自室に引きこもり、恋愛シミュレーションゲームばかりしている事も相まって、街中の光景が逆に新鮮に感じていた。
今日は二次元の恋愛ではなく、リアルな方のデートをしなければいけない日である。
太陽の日差しが照り付ける中、理久は両隣に姶良姉妹の存在を感じながら、大勢の人が行き交うアーケード街の通りを歩いていたのだ。
「それで、これからどこに行くんだ? 街にもついたし、そろそろ教えてくれてもいいような気がするけど」
理久は両隣にいる二人を交互に見て話しかける。
優羽は理久の左腕に抱きついていた。
そういった理由もあって、彼女のおっぱいが私服越しに当たってしまっているのだ。
昨日も感じていた事だが、彼女の胸はデカい。
料理の腕は確かに下手ではあるものの、夜の行為はちゃんとできそうなほどに、立派だと思う。
というか、そんな事は今、考えるべきじゃないよな。
理久は自身の変態的な感情をグッと堪えようと必死になっていた。
気分を切り替える事にしたのだ。
「まだよ。もう少し歩いたところにいいところがあるんです。そこに着いたら教えますから、そんなに焦らないで」
理久の左隣を歩いている双子姉の
余計な心配はしなくてもいいですよと、彼女が自信ありげに言っていた。
この先に何があるのだろうか?
理久は首を傾げていた。
理久は殆ど街中に来る機会が殆どなく。訪れるとしても、ゲームショップくらいだった。
今ではネット通販やオンライン上でゲームを購入する機会が多く、ゲームショップに足を運ぶ事すらなくなっていた。
今歩いている道は多分、昔利用していた通りだと思う。
がしかし、一年近くも街中に来てないと、大分街中も様変わりしていてわからない建物が多かった。
全然知らない店屋がオープンしていたりと、理久は過去の記憶と照らし合わせ、困惑していた。
案内されながら歩いていると、とある建物が見えてきたのだ。
「変態、ここに入って」
曲がり角を曲がった際、右隣にいた
「街中で変な呼び方をしないでくれ」
美羽のセリフで、周りにいる他人の視線が変わった気がする。
理久は気だるげに、美羽に反論する事にしたのだ。
「変態は変態なんだから、しょうがないじゃない」
美羽は強気な態度で、理久の方を見ている。
「でも、人がいるところで、そんな言い方をされたら俺が困るんだけど」
「それはあんたが変態なのがいけないんでしょ!」
美羽は理久に対し、ビシッと指先を向け、指摘してくるのだ。
「そ、そうかもしれないけど」
「それに、さっきから何? 優羽のを感じてるじゃない」
「そ、それは……」
何も言い返せなかった。
確かに変態なのはしょうがない。
それに、普段からやっている恋愛ゲームをプレイしている理久が本気で反論しようとしたところで負けるのは目に見えていた。
ここは折れるしかないと思ったのだ。
二人に導かれるまま、理久らが今入ったビルというのが、色々な遊びが出来る大型店だった。
このビルは七階もあり、それらすべての階に何かしらの娯楽施設が存在しているのだ。
例えば、カラオケやボーリング。その他にテニス、ゲームセンターなどもある。
一つの建物内で、多様な遊びが出来る事で有名な場所だ。
理久はあまり訪れた事はなく、今日初めて足を踏み入れた感じだった。
店内に入った瞬間から、一階のクレーンゲームで遊んでいる人らの姿を見て取れる。
クレーンゲームもいいのだが、二人が行きたいと思っている場所は、ここではないらしい。
目的地は上の方。
しかし、上の階に行こうとすると、休日と言う事もあり、エレベーター前には数人ほどいる。
エスカレーターは点検中らしく利用できない。
待っていると余計に時間がかかると思い、三人は階段を使い、上へと向かって行く事にしたのである。
今、三人はボーリングが出来るフロアへと向かっている最中だった。
到着し、そのフロアの扉を開け、三人は受付のところで手続きを済ませると自身の足に合ったシューズをかりる事にした。
休日はやはりといった感じに、お客が多い印象だ。
三人は端っこの場所を利用する事になった。
場所が決まったら次はボーリングの球を選ばないといけない。
それらは別の場所に重さごと用意されている。
ボーリングの球は自分に合ったのを選んだ方が投げやすい。
重すぎたりすると、ピンに当たらないどころか、ガターになってしまう場合もあるのだ。
「これくらいでいいかな」
シューズを履き終えた理久は、ボーリングの球を手に持って、重さを確認してみる。
ボーリング自体、久しぶりにやるのだ。
感覚が鈍ってなければいいと思いながらも、自分らが遊ぶレーンのある席へと向かって行く。
「遊びたかったのって、この場所だったのか?」
レーンのある席に向かうと、すでに優羽がボーリングの球を機械の上に置き、近くにあるタオルで拭いていたのだ。
「そうだよ。ここなら色々と遊べるでしょ」
「確かにそうだな。それにしてもボーリングって、昔一緒に遊んでたな」
「そうだよね。やっぱり、理久とはボーリングしたいなって思って。懐かしいと思ってもらいたくて、行き先を言わなかったの。昔利用していた場所はもうないから。この場所にしたってわけ」
「そうだったのか。というか、昔の、あの場所はもうないのか?」
「そうだよ。去年くらいかな。閉店したって張り紙が張ってあって」
優羽は思い出しながら言う。
状況が移り変わっていくのも時代だから、しょうがないと思ってしまうが、思い出の場所がなくなるのは悲しい事である。
「ねえ、私と美羽。どっちかが、このボーリングに勝ったらね、理久を独り占めできるって遊びをしたいんだけど、どう?」
優羽が大体な追加ルールを提案してきた。
「どうって言われても」
「いいでしょ。その方が、理久もこれからの結婚相手を選びやすいと思うし。それに、将来の事もいっぱい考えられるね」
「まあ、いいけどさ。そういうのは一応、美羽にも聞いた方がいいんじゃないか?」
二人はボーリングの球を選んでいる美羽の方へと視線を移す。
「え? なに?」
「だからね、二人で勝負をしないって事」
ボーリングの球を選び終えた美羽がやってくる。
優羽は、改めて美羽に説明をしていた。
「な、なんで、そういう事にするのよ……でも、勝てばいいんでしょ。勝てば……理久と」
美羽は躊躇いがちな反応を見せていたが、理久に対する何かしらの感情がある為か、優羽からの提案を何とか受け入れようと必死になっていたのだ。
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