第四話 自己嫌悪

 脱衣室の鏡に映るのは、キノコような重苦しいショートカットに、ニキビとアバタで凹凸の肌をしたワタシ。骨ばった肩と鎖骨の下に申し訳程度にくっついた胸をスポーツブラで覆い隠し、肉割れの筋が走る下っ腹が見える。

 

 シャワーの水量を最大にして、浸かっている湯船の水面に拳を振り下ろす。音を立てて水飛沫が飛び跳ねる。体や頭を強く爪を立て引っ掻くように洗うと、皮膚が痛む分だけ気分が落ち着く。


 自室に戻ると、手に取ったスマホをタップし。ブロックリストを開く。もう追いかけてこなそうな人を何人か選んでブロック解除する。


 お互いのフォローが外れて接点のない状態に戻る。零状態にリセットされる。通称、ブロ解。せめてもの罪滅ぼしであり、ワタシなりの恩赦。ブロ解を終えると強張った首や肩がいくぶんか緩む。

 

 隣家のピットブルに体の心地よさを奪われる。夜なのに唸ったり、吠えたりする声が聞こえてくる。窓を開けて覗き込む。ピットブルが長縄のおもちゃを噛んで引っ張たり、追いかけたりして遊んでいる。


 どうだ。僕は強いだろう。なんて、得意気に尻尾を振ってやがる。役立たずの犬のくせにイキってるんじゃねぇよ。

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