第8話 夏休みだけど水着イベントはない
「しかし、素晴らしい。」
世間の学生は夏休み後半の8月下旬。目覚めた僕は、ゴミ山を漁り見つけ出した刺激的過ぎる隠すべき所だけを隠さない下着を上下セットを大切に抱きながら、テーブルに載っかる黒く情欲を駆り立てる美しい布(人はそれをブラジャーと呼ぶ)に包まれた巨大な…いや、巨大とかちゃちな言葉では語れない素晴らしき双丘を眺めていた。
エチエチなお姉さんがいる夏休みといえば海、水着回が当たり前であるのだが、ここは汚部屋の中。しかし、全年齢対象な水着回よりも遥かに刺激的なその光景に、寝起きであることなど関係なく、もうひとりの僕は元気いっぱいにテントを作っているので立ち上がれない程だ。
「…ン…ンゥン…」
テーブルに突っ伏して眠る素晴らしき双丘の持ち主様は、寝苦しかったのか、艶かしくいやらしい吐息を漏らす。
はち切れんばかりに元気になったもうひとりの僕と、限界突破寸前の僕の理性。
「据え膳…これは据え膳…据え膳食わぬは男の恥…」
駄目な方の暗示を自身に掛ける僕。
某大怪盗3世の様なダイブをかました時だった。
「ぎゃぁああ!!」
僕は絶叫した。
経験したこともない程の強烈な痛みに。
「正常に作動したな。」
先程まで艶かしい吐息を漏らしていたおっぱい様こと師匠が、そう言って悪戯が成功した子供の様に笑っている。
「ㇶ…ㇶ…」
いろいろと言いたいことも聞きたいこともあるのだけれど、あまりの痛みに声が出ない。
「性欲に支配されたエロ弟子だからな、魔法で貞操帯作ったんだが、そんな感じになんだな。」
痛みに悶える僕を観察しながらそう楽しそうに言う師匠。
「貞操帯!?まさかあの時に!!」
病室で愛しいマイサンに何かされたことを思い出す。
「そらそうよ。世界最高で最強の美女たる私と住むんだ、マスターベーション覚えた猿よりも盛んなエロガキには保険掛けるだろ。」
悶える僕を楽しそうに見下ろし言う師匠。近づいてみるおっぱいと際どい角度のTバック…
「痛い!!痛い!!」
さらに強烈な痛みがマイサンに奔る。
「というわけだ。この部屋で本能のまま動くとそうなるし、本番まですればお前のそいつはモゲる。」
「ちょっと待って下さい!!モゲるってなんですか!?」
恐ろしい言葉に僕は絶叫する。
「言葉通りだ。根本からポロンと落ちて、お前は本当の魔女になる。」
ケラケラと笑う師匠。
「待って下さい!!僕童貞なんですよ!!」
せめて、せめて初体験くらい…
「うん、知ってる。だからなんだ?」
ニンマリと笑う師匠に、あぁ、この人生粋のサディストなのだと知りゾクッとする。
それと同時に、僕は新しい扉を開けた。
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「本州と九州は
華の美少女JKたる私は、長野の山の中、幻の高級食材たる熊の手を処理しながらそう言う。
「熊さんは初めて見たばってん、可愛かね。」
動物ラブな私は、先程まで死闘を繰り広げた相手を思い返し、そう感傷に浸る。
もっとも、目の前にある熊さんだったものは食材であり、美味しそうという感情しか湧かないけど。
「夢の食材たる熊の手やけん、遅刻も許してくれるやろ。」
下処理を終えた食材を魔法のクーラーボックスに積め、私は箒に跨がる。
「お母さんが有明海の珍味ば積めとるごたるし、熊さんを筆頭にレア食材がいっぱいやけん、まあ大丈夫やろ。」
お母さん曰く、私の師となる魔女は無類の呑兵衛らしい。
お酒の共となる珍味でご機嫌をとれば数日の遅刻くらいなかったことになる筈。
「それに、私可愛かけん。」
何より、可愛い私に免じて全て許される筈。それに何よりも…
「そもそも、全部お母さんのせいやけん。」
そう、私は悪くない。悪くないのだ。
交通費さえくれないお母さんが悪い。どうやっても間に合わない旅路なので仕方ないのだ。
「有明海と筑後平野…八女のお茶が恋しか…」
故郷を離れ数日、私は早くもホームシックになっていた。
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