第22話 様子見と問答

「厳しいねぇ。」


無数の氷の槍をかわしながら呟くランシュウ。


「お姫様とやりあうつもりはなかったんですよー?」


「で、オーク達を殺しに来ただけだと。」


サリヤは枝の間に氷を張りその上に立っている。


「他に、目的があるのでしょう?」


「あるけども、お姫様にとって悪い話じゃないですよ?」


「良いか悪いかは城の地下の牢屋で聞きます。」


サリヤは無数に氷の槍を作り、ランシュウに向かわせる。ランシュウは矢を放ち槍を迎撃する。


「いやー、危ない危ない。」  


「...。」


(アイスランスはそう簡単に壊される事はないはず。かなりの魔力を矢に込めているのか。)


「黙ってやられるわけにはいかないんでねぇ。」


返す刀で矢を1本放つランシュウ。サリヤはいつの間にか手に握られていた魔具の槍でそれを迎撃した。


「やっぱり魔具を出すのが早いですねぇ。よく鍛錬している証拠ですね。」


魔具の槍を見ながらランシュウは呟く。


「何様のつもりですか。」


「申し訳ない、王族は戦闘慣れしてないって思い込んでたもので。」


会話の間にも矢は何本も放たれている。それをサリヤはその場から動かずに手元の槍や、生成された氷の槍で迎撃している。それを少し後ろで見ているレイトは思う。


(なんで、近づかないんだ?)


矢の使い手相手に近づいたほうがいいのは戦闘経験が全くないレイトでもわかる。しかしサリヤはその考えとは真逆の戦法、レイトの前に立ち彼を庇う形で矢を迎撃している。


「...。」


その様子を少し怪訝な顔で見ているランシュウ。矢の狙いをサリヤからレイトに変更する。


「え、」


矢の速度に全く反応できていないレイトに変わりサリヤが矢を落とす。


「そこの君。やっぱり、おかしいねぇ。」


ランシュウの興味がレイトに向いた。その瞬間。


「はぁ!」


サリヤが突っ込んでいき、槍の一撃をランシュウに放った!


「おおっと!」


「...。」


お互いに枝の上にのり、仕切り直している。


「彼の方に意識が向いたら勝負を急いだね。」


仕切り直した後も無数の氷の槍がランシュウに迫っていく。槍を避ける、と同時に槍が破裂し氷の礫がランシュウを襲う!しかし、顔に迫った礫を弓で払い、場所を移動し残りを避けた。


「何か彼の事で知られたくないことがあるのかな?お姫様?」


「ありますよ。」


直ぐに公定されて少し戸惑うランシュウ。


「え、言っちゃうの?」


「無い、と言っても仕方ないでしょう?」


「ま、まあそうかもだけど。」


そう言いながらもサリヤはその場から動かずに猛攻を続けていく。サリヤは氷を網目のようにして前方の広範囲に展開していく!網目は大きく作られている。どこに逃げても捕まえられそうだ。しかしランシュウは網目の繋目を正確に射貫き、氷の網を破壊した!


「こわいこわい。」


軽くやったように見せるランシュウ。


「足場が不安定だから身体強化での移動が難しいとみての網。御見逸れしました。」


「随分と余裕を、」


「しかし、」


言葉を遮り、話を進めていく。


「それはあなたにも言えますよね?皇女様。」


その言葉と共に何本も矢を放つランシュウだったが、そのすべてがサリヤによって撃ち落されてしまう。と撃ち落したと思っている彼女の足元の氷が燃え始めた!


「...。」


冷静に氷で覆おうとしたその瞬間。


バギィ!!


と足元の氷が割れた!


「!!」


かろうじて空中に逃げるサリヤ。


「隙あり。」


とランシュウがつぶやき、サリヤは身構える!

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