第29話 六英衆
それは十年前、魔王城に踏み入り、魔王を打倒した六人のことを言う。世界最強の六人と言い換えてもいい。
最強の勇者ロイ=シャオンベル。
万物の召喚士ペネロペ=ペイルパープ。
格闘王ビリー=ヴァイル。
天帝ティア=バグショット。
吸血鬼殺しメイビス=ハイター。
魔王を倒し、世界を救済した英雄たちである。
六人が揃えば世界を壊すことも、世界を創り変えることも可能だと言われている。
「つまり、勇者パーティの一人ってことですか?」
「いいや、そういうわけじゃねぇ。俺とティアは最後の詰めに手を貸しただけで、常に勇者と一緒に行動していたわけじゃない。どっちかって言うとライバルみたいなモンだったな。誰が魔王を先に倒せるか競ってた。結局、人類のために手を組んで、魔王はアイツに取られちまったけどな」
トビはゴクリと唾を飲み込む。
(強い……間違いなく、僕が出会った中で一番強い。里長よりも、V・タイタンよりも……!)
「あ~、俺のことはもういいだろ。話を本題に戻そうぜ皆さん。ヴァンパイア化したドラゴンのことを話そう」
掠れ気味の渋い声でメイビスは言う。
「ドラゴンの一匹ぐらいじっちゃんなら余裕でしょ」
「勘弁してくれ。十年前とは違うんだよ。あちこち体にガタがきている」
嘘だ。とトビは思った。
この男の身体はまだまだ現役だ。恐らく、自分など一瞬の内に肉塊にできるだろう。
「これ以上やつを放置するのは危険だ。今日中にカタをつけよう。若者たちよ、このご老体に手を貸しておくれ」
メイビスは立ち上がり、トビを見下ろす。
トビの身長は平均はあるが、メイビスはそれより頭一つ分高かった。
「お前、名前は?」
「トビです」
「……あ~、トビだな。よし覚えた」
どうやら話の最初に『あ~』と付けるのがこの男の癖のようだ。
「そっちのエルフは?」
ソフィアは耳当てで耳を隠している。にもかかわらず、メイビスはソフィアがエルフだと看破した。ソフィアはメイビスの洞察力に冷や汗を一滴かいた。
「ソフィアです」
「ソフィア。良い召喚獣を持っているな」
ソフィアの頭にヨタザルが乗っていたため、メイビスはヨタザルがソフィアの召喚獣だと勘違いしたようだ。
「違うよじっちゃん。この猿は私の召喚獣!」
「……イヴン、お前が……? そうか。努力したんだな」
「え? いやいや、努力はそんなしてないってか……」
「お前は昔から努力家だったからな。実って何よりだ」
「努力家って言うのやめて! 天才だってば!!」
メイビスは村長の家の出口に向かう。
「お前らちょっと実力見てやる。外に出ろ」
有無を言わせぬ迫力でメイビスは言い放つ。
トビは意気揚々とメイビスの後を追った。伝説の英雄に実力を見てもらえる、そんな機会は滅多に巡り合えない、奇跡のようなことだ。
村を出て、少し山を下ったところにある崖に囲まれた岩場で、トビたち三人とメイビスは向かい合う。
「あ~、とりあえず三対一でいい。好きにかかってこい」
メイビスは気だるそうに首を鳴らす。
「V・ドラゴンと戦う前に余計な体力を使いたくないのですが」
ソフィアが言うと、メイビスは三人をコケにするように欠伸をした。
「心配はいらん。体力使う間もなく倒してやるから」
例え英雄とはいえ、メイビスの物言いにカチンとくる三人。
「十年前と同じだと思わないでよね。じっちゃん」
「伝説の英雄とはいえ、舐められたものですね」
「ご老体とはいえ、加減はしませんよ」
イブン、ソフィア、トビは続けざまに言う。
戦闘態勢に入る三人。メイビスは武器を一切持たず、拳を構える。
「来いガキ共。年季の違いを見せてやる」
まず飛び出したのはイヴンだ。
「ヨタ!
「あいさお任せ!」
ヨタマルが盾になる。盾の表面には『銀』と書かれている。
「成長したところ見せてあげるわ!」
盾を前に突進するイヴン。イヴンは結界を纏い、さらに攻撃力を増す。
メイビスはため息混じりに「持ち腐れだな」と駆け出した。
イヴンが目で追えたのはメイビスが一歩踏み出したところまで。その次の瞬間にはメイビスはすでにイヴンの目の前に立っていた。
コツン。と、扉をノックする時と同じモーションでメイビスは結界を手の甲で叩く。それだけで結界は割れて散った。
「え」
「結界術も使えるようになっているとはな。驚いた。だが――」
メイビスは盾を正面から蹴り飛ばす。イヴンは盾ごと弾き飛ばされた。
「強度はまだまだだな」
弾き飛ばされたイヴンをソフィアが風のクッションでキャッチする。
「イヴンさん! 一人で飛び出さないでください! あなたは
「誰がタンクよ誰が! そんな芋臭い役割やるわけないでしょ!!」
「イヴン。メイビスさんは強い。三人で協力しないと一泡吹かせるのは無理だ。ここは役割をハッキリさせて一緒に戦おう」
今の接触で成す術なくやられた手前、イヴンは断れず、「ぐぬぬ……」と歯ぎしりしながらも頷いた。
「ソフィアは後ろで援護。イヴンが攻撃を捌いて、僕が隙をついてアタックする」
「イヴンさん、理解できましたか?」
「そんな簡単な指示、理解できないわけないでしょ!」
「よし、行くよ!」
トビとイヴンが飛び出す。
まずソフィアが風の刃を発射し、メイビスにそれを捌かせ足を止めさせる。足の止まったメイビスにトビとイヴンが迫る。
メイビスは迎撃の手として拳の連打を繰り出すが、イヴンがそれを盾で防ぐ。メイビスの攻撃が止んだところで、トビはイヴンの背後から飛び出し、籠手による連打を繰り出す。
「そら!」
「おせぇ」
メイビスはトビの攻撃を手のひらで全て受け流し、肩で体当たりしてトビを突き飛ばす。トビは吹っ飛びながら足をイヴンに向ける。
「イヴン!」
「わかってるって!」
トビの意図を察したイヴンは盾を前に出し、盾をトビの足場にする。トビはイヴンの盾を踏み台にして飛び出した。
「ソフィア!」
「はい!」
ソフィアが風魔法でトビの背中を押し、さらに加速させる。
「可愛い連携技だな」
トビの右の大振りをメイビスは躱し、隙だらけのトビに右拳を突き出す。
「あくまで、今のは囮ですよ」
「なに?」
トビはニヤリと口角を上げ、メイビスの右拳に籠手の甲を合わせる。
「
「!?」
メイビスの右拳が大きく弾かれる。
「三方向からの攻撃!」
「さすがにじっちゃんでも……」
「捌けません!」
メイビスは三人の動きを見て、嬉しそうに笑った。
「やるな」
――――――――――
【あとがき】
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