episode.37
気が付くと、雲一つない青空をぼーっと見上げていた。
あれ?ここは……?
クラウス様は、どこ?
ハッと気が付き辺りを見渡しても、一面に花が咲き乱れているだけ。
暫し現状を忘れて、その幻想的な景色に見惚れる。
どこを見回しても、花、花、花、一面どこまでも花……。
「………綺麗……」
思わず呟いて、私はハテと首を捻った。
私、確か自室でクラウス様と一緒にいたよね?
えっと……確か、クラウス様に想いを伝える事が、やっと出来て……。
ーーーーーーッ!
私はその後のクラウス様とのアレでナニなアレコレを思い出し、ボンッと頭を爆発させた。
あ、ああ、そうそう……。
アレよね?いたしちゃったのよね?
分かってる……、分かってるからっ!
フーフーと鼻から息を噴き出し、ますます顔が赤くなる。
いやいや、待って。
で、ここどこ?
私はまた辺りをキョロキョロ見渡して、首を捻った。
んっ?いつの間にこんな所に移動したんだろう?
そんな記憶まったく無いんだけど……。
私は必死に、この場所で意識を取り戻す前の事を思いだしてみた。
だから、クラウス様がアレでナニで……。
5回って言ったのに、全然離してくれなくて、私がへばったら回復魔法をかけられて、で、また……を繰り返し……て?
気を失ったんだっけ?
それで次に気が付いたら……ここ?
……んっ?待って、待って。
もしかして……ここって……。
……て、天国っ⁈
えっ?私、死んじゃった?
ちょ、じゃあ……もしかして……。
死因は……腹上死っ⁈
あ〜〜〜〜やっちゃった〜〜〜〜っ!
私はヘナヘナとその場にひざまずいた。
アレだけ死を回避しようと、アレコレやってきたのに、推しとの初エッチで腹上死とか………。
……最高じゃないですかっ!
画面越しじゃない推しとイチャラブ初エッチで腹上死っ!
尊っ!尊が過ぎるっ!
ファン冥利に尽きます、ありがとうございます。
私が産まれ変わってきたのはこの為だったのね〜〜っ!
そうして、私の長い異世界転生の旅が、今、終わった……。
皆さま、ご愛読ありがとうございましたっ!
ーー完ーー
いやいやいやっ、待て待てっ!
いや、本当に待ってっ!
やっと想いが通じ合ったのにっ?
(身体も通じ合ったが)
来月には婚約式だし、私が学園を卒業したら婚姻の予定だしっ!
そもそも、やっと想いが通じ合って、これからって時にっ!
いくら尊過ぎる死とはいえ、あんまり過ぎるっ!
そ、それに、クラウス様がいっぱいアレを中でナニしたから……。
も、もしかしたら、あ、赤ちゃんとか、出来てたかもだし……。
そこまで考えて、自分のお腹に手を当てた。
もし、の話でも、嫌だな。
クラウス様と私の赤ちゃん、一緒に連れてきちゃったとしたら……。
い、嫌だよっ!
そんなの、嫌だっ!
私、生きたいっ!
クラウス様と結婚して、2人の子供を産みたいし、育てたいっ!
ずっとずっと、クラウス様とずっと一緒にいたいっ!
こんなの、嫌だーーーーーーッ!
私は駄々をこねるように頭をブンブン振って、目の端に映った自分の髪にギョッとした。
えっ?えっ?
何か、黒いっ?髪が黒いっ!
いや待って、今気付いたけど、視界もおかしい。
なんか、厚い前髪で覆われてる……?
私は震える手で自分の厚く長い前髪を触った。
それから、左右におさげに結んであるボサボサの髪を見る。
あっ、黒くてボサボサ……。
な、懐かしい、こ、これは……。
もしや、前世の姿っ!
慌てて身体にも目をやると、前世通っていた学校のセーラー服を着ている事に気付く。
セーラー服をペタペタ触っていて、ハッとある事に気付いた。
前世友達が、『頼むからもう少し身だしなみに気を遣ってくれ』と言って胸ポケットにいれてくれた、携帯用の鏡。
私は胸ポケットを探って、その鏡を取り出すと、恐る恐る覗き込んだ……。
そこに写っていたのは、予想通りの、前世のボサ子の顔だった。
えっ、何これ。
まさかの転生帰りパターン?
異世界から帰ってきたパターン?
でも私、異世界に転移されたんじゃないのにっ!
転生なのに、そんなのアリっ⁈
はぁ〜〜〜と深い溜息を吐いて、私は地面に手をついた。
……いやいや、普通に考えて、夢オチでしょ……。
異世界転生も、〈キラおと〉の世界も、キティもクラウス様も、みんな……。
……ただの夢だったんだ……。
いい夢見たなぁ……。
やたら長くてリアルな夢だったけど……。
感触とか、感覚とか、もう本当に現実にしか思えなかった……。
私は急にクラウス様とのナニナニを思い出し、顔を真っ赤にして更に蹲った。
えっろっ!私の夢えっろっ!
どんだけ処女の妄想膨らませてんのっ!
ってか、ほぼ知らない知識だったのに、どうやって脳内で補填したのっ⁈
凄すぎない、私っ!
流石、Cカップ淫乱令嬢っ!
……いや、もう、Cカップでも令嬢でも無いのですが……。
こんなエロい夢見ちゃったので、淫乱は否定出来ませんが……。
えっ?私に残ったの、淫乱だけっ⁈
ノーーーーーーーーーッ!!
私は頭を抱えてのたうち回った。
恥ずか、恥ずか死ぬ。
いや、もう死んでる?
いやいや、夢オチだからセーフッ?
ハッ!私、今、混乱してる?
……もう、訳分からん……。
私は力無く身体を投げ出して、仰向けに花の中に寝っ転がった。
あ〜あ、夢オチだったかぁ……。
……いい夢だったけど、辛いなぁ。
うん、凄く辛くて哀しい。
あんなに恋して、あんなに愛した人が、夢の中の人だったなんて……。
そして、もう2度と会えないなんて……。
涙が滲んできて、直ぐにポロポロと流れ落ちた。
……い、たい。
会いたい……。
もう一度、クラウス様に会いたい……。
ポロポロと流れる涙を拭うことも出来ず、私はただただ願った。
もう一度、クラウス様に会いたい。
「キティ、良かった、見つけた」
えっ?
見上げるとそこに、金色の髪がキラキラ輝いて、青空に溶けてしまいそうなアイスブルーの瞳が私を見つめていた……。
「どうしたの、キティ?泣いているの?
ごめん、探すのに手間取って遅くなっちゃった。
怖かった?」
心配そうに顔を覗き込んでくる、彫刻のように整った美しい顔……。
「ク……ラウス……様?」
私は、震える声でその名を口にした。
「ん?」
首を傾げて不思議そうにするその人の姿に、私は涙が止まらなくなった。
「ど、どうしたの?キティ。
そんなに怖かった?」
焦るようにクラウス様が私を抱き起こし、頭を撫でてくれる。
その慣れ親しんだ感触に、私はますます涙が溢れて、思わずその胸に抱きついてしまう。
「クラウス様っ、クラウス様っ、クラウス様っ!
あ、会いたかったっ!」
しゃくり上げながらその名を何度も呼ぶと、優しく頭を撫でながら、クラウス様はいつものように微笑む。
「大丈夫、キティが何度迷子になっても、俺がこうして見つけ出すから。
心配しなくていいよ。」
その優しい声に、涙が後から後から溢れて、私は子供のようにクラウス様の胸で泣きじゃくった。
クラウス様は私が落ち着くまで、ずっと頭を優しく撫でてくれていた。
ひとしきり泣いて落ち着いた私は、クラウス様の瞳を見つめ、そこに写る自分の姿に、サーッと血の気が引いた……。
ちょっと……待って……。
わ、私今っ!ボサ子っ!
前世のボサ子の姿なのにっ!
その事にやっと気付いた私は、アワアワとクラウス様から離れた。
「どうしたの?キティ?」
クラウス様が眉間に皺を寄せて、低い声で聞いてくる。
「あ、あのっあのっ!私、キティじゃなくてっ!
キティじゃないのに、抱きついたり、胸を借りたりしてっ!
本当にっ!ごめんなさいっ!」
ペコーッと頭を下げると、不思議そうなクラウス様の声がした。
「何を言ってるの?キティはキティだよ?」
へっ?
私は驚き目を見開いてクラウス様を見た。
「確かに、懐かしい前髪に戻ってるけど、キティはキティでしょ?
あれ、髪が黒いね?
うん、黒いのも可愛いよ。
それに、その服初めて見る。
それ、なんか……」
そう言って、クラウス様はスッとスカートの中に手を滑り込ませ、太腿を撫でて言った。
「こういう事したくなるね、何でだろ?」
な、な、何ででしょうねっ⁈
私はアワワっと後退り、クラウス様の悪戯な手から逃れた。
クラウス様はそんな私の様子をクスクス笑って見ている。
「どうしてですかっ?どこからどう見てもキティじゃないでしょ?
クラウス様には、どうして私が私だと分かるんですか?」
訳が分からなくなり、私は目をグルグル回してクラウス様に聞いた。
「どうしてって……」
クラウス様は本当に不思議そうに首を傾げ、グッと私に近付いて、前髪を左右に分け、ジッと私の目を見つめた。
「ああ、目も黒いね。でも、キティはキティだよ。
ほら、その瞳の奥の、俺の全てを受け入れてくれる優しい光……。
俺が見間違う訳がない。
それに……」
クラウス様は私の胸を指差した。
指さされたそこが、ポゥッと光る。
「ほら、この美しくて暖かな魂の光……。
間違いなく、キティだ。
どんなに姿形がちがっても、君は俺の、俺だけのキティだよ……」
そう言って優しく微笑むと、クラウス様は私の頬を両手で包んだ。
涙がポロポロと流れて、その手を濡らしていく。
「キティ、君が例えどこにいこうと。
どれだけ変わってしまっても。
俺はその魂を必ず見つけ出して、捕まえるよ。
君はもう俺と出会ってしまったからね。
未来永劫、生まれ変わったその先も、ずっと……俺の、俺だけのキティだよ」
そう言っておでこに優しくキスをしてくれる。
私は我慢出来ず、クラウス様に抱きついて、また大声で泣きじゃくった。
クラウス様はそんな私をまるで安心させるように、頭や背中を撫でてくれた。
「わ、私、クラウス様に出会えて、良かったっ!
クラウス様っ、大好きっ!」
クラウス様は私をギュッと抱きしめて、髪に顔を埋めた。
「俺もキティが好きだよ。愛してる。
前にも言ったけど、俺は君に出会えて、もうずっと幸せなんだ。
絶対に手離したりしない。
ずっと俺と一緒だよ、キティ」
私はクラウス様の言葉に涙を流しながら、何度も頷いた。
少し落ち着いてきた私は、涙でぐしゃぐしゃになった顔を、ゆっくり上げた。
クラウス様と見つめ合い、どちらとも無く顔を寄せる。
唇が触れるだけの口付けを交わす。
優しくて甘いキスに、涙が頬を伝った。
その瞬間、風がザァッと吹いて、辺りの花の花びらが巻き上がった。
色とりどりの花びらが、まるで私達を祝福するかのように、ヒラヒラと舞い落ちてくる。
あっという間に花びらだらけになった私達は、お互いのその姿を見て、顔を見合わせて笑い合った。
「じゃあ、もう戻ろうか?」
「はい」
クラウス様に言われて、私は頷いた。
クラウス様は私をヒョイと抱き上げて、花の絨毯の中を歩き出した。
私はクラウス様の首に腕を巻き付け、頬にキスをした。
目を丸くしてクラウス様は私を見た後、嬉しそうに破顔して、私の頬に、おでこに、瞼に、沢山のキスを降らした。
私達は顔を見合わせ、たくさん笑った……。
ゆっくり瞼を開くと、そこは王宮の自室のベッドの上だった。
肩から流れ落ちている自分の髪の色がローズピンクである事を確認して、私は深い溜息をついた。
「………夢?」
まるで、そうとは思えないような、リアルな夢を見ていたようだ。
隣から寝息が聞こえて、ゆっくり見下ろすと、クラウス様がそこで眠っていた。
私はもう一度、安堵の溜息を吐いた。
クラウス様の身体がピクリと動いて、その瞼がゆっくりと開く。
アイスブルーの瞳が私を写して、嬉しそうに細められる。
「おはよう、キティ」
「おはようございます、クラウス様」
クラウス様は私の髪に手を伸ばし、一房掴むと、ふふっと笑った。
「髪……元の色に戻ってるね」
えっ?
私は、目を見開いた。
……さっきのは、夢じゃ……。
クラウス様はゆっくり起き上がり、私をその広い胸の中に抱きしめた。
「迷子のキティ。もう俺から離れちゃ駄目だよ。
もし離れてしまっても、また必ず探し出して、こうして捕まえるけどね」
にっこり微笑むクラウス様を、私はポカンと見つめた。
夢の続きを見ているような錯覚に囚われる。
でも、私の姿は、この世界のキティに戻っていた。
何が夢で、何が現実なのかも分からない……。
だけど、一つだけハッキリしている事は、クラウス様がどこにいても一緒にいてくれるという事。
厚い胸に抱かれて、私もにっこりクラウス様に笑い返した。
「私、クラウス様に出会えて、良かった」
そう言うと、クラウス様は照れたように笑って、私を抱く腕に力を込めた。
「離さないよ、キティ。愛してる」
顔が近付いてきて、私はそっと目を閉じた。
唇に口付けられ、ゆっくり厚い舌が侵入してくる。
私はそれに応えて、自分の舌を絡ませた。
甘い吐息を立てながら、そっとベッドに押し倒される。
クラウス様の手が胸に触れた瞬間、私はビクっと反射的にクラウス様の身体を押し退けた。
「……どうしたの、キティ?」
不安そうに揺れるクラウス様の瞳を見つめ、私は申し訳なく思いながら、顔を俯かせた。
「あ、あの、昨日からずっと、クラウス様と、その、睦み合ってましたので、あの……もしかすると……あ、赤ちゃんが出来ているかも……。
ですから、こういった事は、それがハッキリするまでは……控えた方がいいのかな?って」
顔を赤くして、もじもじしながら言う私を見て、クラウス様はバッとその顔を両手で覆い、プルプルと震えている。
ど、どうしたのかしら……?
ややして、クラウス様の震える声が聞こえた。
「ご、ごめん、キティ……。
実は、あの破瓜の痛みを消す魔法に、避妊の効果も付与してあるんだ……。
……だから、俺が魔法を取り払わない限り、キティは妊娠はしないよ」
そのクラウス様の言葉に、私はカッと顔を赤くした。
「ど、どうしてそれを教えて下さらなかったんですか⁈」
私はショックで頭がグワングワンに揺れた。
だって、あんなに悩んだのにっ!
赤ちゃんを道連れにしたかもしれないって、すごく哀しかったのにっ!
はぁ〜っとクラウス様は深く息を吐き、両手の指先を合わせて、自分の鼻と口が隠れるように顔の前に置いた。
「怒らない?」
おずおずといった感じで聞いてくるクラウス様に、私はジト目で返した。
「理由によります」
ちょっと冷たく言い返すと、クラウス様は頬を染めて、言いにくそうにその理由を話した。
「……どうしても、また、言わせたかったんだ……。
キティに、赤ちゃんできちゃうって……」
そう言って、クラウス様がおずおずとこちらを見た瞬間。
フシャーーーーーーーーッ!!
全身の毛を逆立てて、私はギラリと爪を立て、クラウス様の顔をバリバリバリィと引っ掻いた……。
その日、どんなにクラウス様が私のご機嫌を取ろうと頑張っても、私は頬をパンパンに膨らませ、ずっと跳ね返し続けた。
実家に帰らなかっただけ、感謝してよねっ!
クラウス様のアンポンタンッ!!
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