第6話 情報屋のもとへ
苛立ちながら、アラビカはコーヒーを流し込む。
「カルエ・キャベンディッシュ……。ランクBの無法者ですか?」
「ああ。最近躍動してる義賊気取りの野郎どもがいるだろ? アイツは、ソイツらを襲うつもりだったようだ」
「なぜそんなこと知ってるんです?」
「アイツらの動向を追ってたら嫌でも分かる。カルエ・キャベンディッシュはいまのところあまり目立たねェが……後々厄介になるのはヤツのほうかもしれん」
「ランクBのギアも持ってない半端な悪党が?」
「これでも不良を見極める審美眼は良いほうだと思うが? というか、そうでなきゃ生き残ってないし、薄給でこんな激務こなす意味がなかろう」
*
カルエとルキアは隠れ家に戻ってきていた。
(こんなにもトントン拍子に進むとは、予想外だね……)
カルエの中の少年は、これからの計画を立てるために頭を巡らす。今しがた強奪したデバイスと、カルエに入り込んだ少年が持つ、この世界への知識が組み合わされば、次の一手は簡単に思いつく。
ただし、すでに原作を改変している以上、ここから先は未知数だ。
「さて、次はどうするつもり?」
ルキアが尋ねてきた。彼女はまだシックス・センス慣れていない様子だったが、すこしずつ普段通りの落ち着きを取り戻しつつあった。
「そうだな……、まず、この街の勢力図を再確認したほうが良いかな。オルタナが消えたことで、すこしばかりバランスが崩れたはずだ。なら、早めに手を打っておこう」
「具体的には?」
「情報を集めよう。ウィング・シティの裏側でうごめいてる連中の動向を掴むんだ。情報屋を使うしかないな」
「この街で信用できる情報屋なんているの?」
「すくなくとも、ひとりくらいいるさ」カルエは手を頭の後ろに回し、「レイ・ウォーカーとかね。彼はカネさえ払えば、なんでも教えてくれる」
カルエは、レイ・ウォーカーに思いを馳せる。時には主人公側に、時にはカルエのような悪役にも情報を提供してくれる存在だ。彼を引き入れれば、カルエは貴重な味方を手に入れられる。
*
翌日、カルエとルキアはレイ・ウォーカーの隠れ家に向かった。倒壊しそうな古びたビルの地下にある彼の家は、薄暗く、湿気が多い場所だ。
「気味が悪いわね」
「否定はできないな。でも、レイは本物の情報屋だぞ?」
カルエは、ドアを3回ノックした。
「誰だ?」中から低い声が響く。
「カルエ・キャベンディッシュだ。情報がほしい」
ドアがゆっくり開き、レイ・ウォーカーが顔を出した。細身の男だが、目には知性と警戒心が漂っている。
「カルエ・キャベンディッシュか。ランクBの無法者がどうやっておれの家を割り出した?」
現時点ではカルエとレイは知り合いでもないらしい。しかし、カルエは臆することなく言う。
「経緯はどうだって良い。問題は、ウィング・シティの裏社会の現状と、オルタナの豚野郎が死んだあとの動きだ」
カルエはルキアに目配せし、彼女はカバンからきのう強奪した札束の一部を取り出した。
レイはカネを受け取り、重さを確かめ、ニヤリと笑った。
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