異世界教義大戦
@Murasakizukin7
第1話 召喚事件
「一人回収しました!」
「よし。儀式阻止最低人数確保だ。このままいくぞ。」
声が聞こえる。テレビ、つけっぱなしにしてたっけ。
窓も開けっぱなしにしてたのか。すげえ風だ。
……あれ?雨雲が見え
ドッッッカ――――――――――ン
「うわっ!?」
「あ、起きてる」
空に稲妻が走り、鼓膜が破れそうなほどの轟音を立てて落下した。
「え?俺、寝てたは……ず!?」
地上が見えた。遠い、遠い下のほうに。俺は浮いていた。多分、上空1万メートルはあると思う。そんくらい高い。
「がっががが……したっしたがぁ」
「え?なんかあります?」
そういって、俺をお姫様抱っこして飛んでいる女が急降下する。
やめろ。いろいろやめろぉ。俺高所恐怖症なんだよ。状況が謎すぎて気付かなかったけど、なんでお姫様抱っこで急降下して、俺の身体はこいつの手から飛んでいかないんだよ。というか誰こいつ。ここはどこだ?なんで浮いてんの?
「なんもないじゃないですか!」
「ぐぼわぁ!?」
……ってえ!なんで急に腹パンしてくんだよ!
「はあ、さっさと病院行きますか。」
「ドゥワァァァァ!」
俺が顔面崩壊起こすくらいの猛スピードで、女は空を駆け抜けた。
何が起こってんだよぉ……
「……で?エーリス、彼が『大丈夫』に見えるかな?」
「はい!めっちゃ見えます!」
「……君、『大丈夫』?」
「まったくもって、大丈夫ではありません!」
病院に連れ込まれたかと思えば、会議室のような場所に連れていかれた。手錠付きで。
「……エーリス、明日までに反省文ね。」
「えー、患者様が弱いだけじゃないですか?」
「エーリス、君は救護にあたって。僕は彼を診るよ。」
有無を言わさず、男はエーリスとやらを部屋の外へと連れ出した。
「さて、まずは自己紹介からだね。名前を言ってもらってもいいかな?」
「……ハヤト。イカルガハヤト。」
「ハヤト君か。僕はヴィル・モッドニード。これに文字を書いて。手錠ついてても、文字くらいは書けるでしょ。」
そういって、ヴィルはメモ用紙のような紙を出した。
Vil Modneed……彼の名前か?だったら、こっちも合わせるか。
「Hayato Ikaruga……いい名前だね。ところでハヤト君、これ、読める?」
ヴィルの取り出した白い板には、英語のAとa、漢字の
「読めます。ぜんぶあと読めますね。」
「すばらしい!やっと来ましたか!」
そういうと、ヴィルは先ほどまでの穏やかな態度を
「我々と意思の疎通が図れる者!何千人、何万人に一人の逸材っ!この日をどれだけ待ったことか!」
その表情には、マッドサイエンティストのような、鬼気迫るものがあった。
「素晴らしいことですよ、ハヤトくぅんっ!」
「……えっと?すごいことなんですね?」
俺の声で我に返ったのか、ヴィルは先ほどまでの穏やかな顔に変わり、席に戻った。
「コホンッ。えー、まずは何から話そうか……。」
そういうと、ヴィルは机の引き出しからA4くらいの紙を取り出し、鉛筆でさらさらと図を描いていった。
「君は、『
「ちょちょ、何ですか?召喚事件とか、世界軸とか……」
興奮気味、というか完全に興奮しているヴィルは、ありったけの図で埋められた紙を裏返し、また鉛筆を滑らせ始めた。
「『
「は、はぁ。えっと……」
「まあ、それは周辺の国々により止められてしまったのですが。しかし、αは諦めない!何度も何度も召喚事件を起こし、今日に至ります。こちらとしても、召喚事件の処理はめんどいので、ほんと勘弁してほしいんですよぉ。」
急に早口で話し出したもんで驚いたが、とりあえずは、『原初』のαが神に近づこうとして、いろんな世界から人やら何やらを呼び出して、色々ヤバいことが起こった……ということだよな?
「な、なあ。なんでもってそいつはいろんなものをこっちの世界に召喚したんだ?」
「あ、それはですねぇ……」
コンコンコンッ。ノックとともに、先ほどの女性が部屋に入ってきた。
「救護おわりましたよ、せんせー。」
「今いいとこだったのになー。」
そういうと、ヴィルは俺に歩み寄り、肩をトントンと叩いた。
「彼、ハヤト・イカルガ君。言葉通じるし、読み書きもできるから、期待できるよ。この世界のこと教えてあげたりして、仲良くしてあげてねー。」
そういって、彼は足早に部屋を出て行ってしまった。
「えっと、ハヤトさん、ですよね。私、エーリス・ディコトミックです。さきほどは、本当に申し訳ありませんでしたぁ!」
そういうと、彼女は大人顔負けの勢いで上半身をぶん回し、土下座をした。
「ちょ、そこまでしなくても……」
「わたっ、私がお腹殴らなければ、ハヤトさんがこんなにおこっ、怒ることなんて……」
「もう怒ってませんよ。ほら、顔を上げてください。」
そういって、手を差し出した。手錠がついたままの手を。
「あ、ああ!」
エーリスは勢い良く立ち上がり、どたどたと俺と距離をとった。……なんで?
「怒ってるなら言ってください!ど、どうせ、手にテトロドトキシンとか塗って、私のこと殺す気でしょぉ!」
「そんなことするわけないでしょ!て、ちょっと、何ですかそれ!?」
エーリスは、サバイバルナイフより少し長い包丁をしっかりと握りしめていた。その瞳は、主人の仇討ちをしに来た女房のような、殺意に満ちた瞳だった。
「こ、殺される前に、お前を殺して私も死んでやるぅ!」
「なんであなたも俺も死ななきゃなんないんですか!」
「はーい、そこまで。」
「エーリス、新人君を刺そうとしない。貴重な人材なんだから。ほら、案内してあげなよ。ここ結構入り組んでるし。」
「はひぃ!わかりましたぁ!」
エーリスは俺の手をガシッとつかみ、腕が引きちぎれんばかりの強さで引っ張った。
「行きますよぉ新人さん!」
「ちょ、イタイイタイ折れるう!」
「仲良くねー」
そういうと、ヴィルは足早に去っていった。
俺の右腕をボキっとできそうな強さで腕をつかみ、俺の両足を筋肉痛にさせる確固たる意志を持った速さで早歩きしながら、エーリスは案内とやらを始めた……。
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