客観性

最近になって顔や頭が大きいという事実に驚いている自分がいる。

例えば風呂に入った後、右手にドライヤーを持ち、左手で髪が濡れている場所を探り当てて、その頭の箇所に重点的にドライヤーを当てる。僕はいつも頭頂部から後頭部を先に乾かし、最後に前髪をあとに乾かす。

だからいつも頭を前に傾けてから、前髪を乾かすときに頭を上げる。

それと同時に鏡の中の自分と目を合わせる。

「何だこの顔の大きさは〜!!」

と、声には出さないが、心の中でそう叫んでしまっている。

誰かに殴られてしまったのか、とコンマ数秒に満たないほどの時間でそう思ってしまっている。

いつも見ている顔のはずなのに、何故僕はそんなことを考えてしまったのだろうか。

不思議な気分に襲われ、衝動的に僕はいつものように匿名で質問できるサイトに文字を打ち込んでしまっていた。

ことの経緯を全て書き込み、何故改めて自分の顔が大きいと思ったのか、という趣旨の投稿をした。

数時間後、僕は自分の質問できるサイトを見てみると、一件の回答が届いたという通知が来ており、すぐさま回答を開いた。

『大人になるにつれて客観的に物事を見ることができるようになります。あなたが不意に、自分の顔の大きさに気がついたのであれば、それは大人になってきたということでしょう』

どこか上からの回答に、眉を顰めてしまったが、内容自体は的を射ているため、僕はその回答をしっかりと飲み込んだ。

そうか。

僕は少し大人になってきているのか。

その日、僕はスキップをしながら散歩をした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る