重い
頭や顔が大きいと体重が必然的に重くなってしまう。
僕がそのことに気が付いたのは、中学三年生の時だ。
その時の手記が残っていたため、その手記の内容を見直してみると、当時の僕はその理由が三つあるのではないかと推測していた。
一つ目は単純に頭が重いということだ。
人間の頭の重さは体重の約一割と言われている。体重が六十キロであれば、頭の重さは六キロ。
体重が七十キロであれば、頭の重さは七キロとなる。しかし、頭が大きい人にとって、この話は通用しない。
実際に頭だけを切り取って、重さを測ったわけではないため、本当の重さはわからない。
だが、確実に言えることは僕の頭の重さは体重の約二割以上はあるのではないかと推測している。
二つ目は頭が大きいことで首回りが勝手に鍛えられてしまうことだ。
首を前に傾ける時に使われる胸鎖乳頭筋や頭を支える後頭下筋群などがあり、頭が大きいだけでそれらの筋肉が勝手に鍛えられてしまう。
それらの筋肉が人体の中で大きいものではないため、体重にそこまで関係ないのかもしれないが、体重を軽くしたい人にとっては難しい問題であろう。
三つ目は頭を大きいことを少しでも緩和させるために肩幅を広くするためだ。
肩幅が広くなれば、その上に鎮座する頭がたとえ大きくても、相対的に小さく見えることだろう。
だから、三角筋や胸筋を鍛え、肉付けをして、頭が大きいことを隠す。誤差の範囲しかないため、意味がないことかもしれない。
だけど、やらずにはいられないため、肉がついて体重が重たくなってしまうのだ。
ここまで体重が重いことがデメリットのように書いてきたが、もちろんメリットもあり、筋力があることで平均より運動神経が高いことだ。
例え初めてやるスポーツだったとしても、平均以上の結果を残せるのだ。
僕はサッカー部に入っていたのだが、そこでも筋肉で覆われた体は大いに活かされた。
例えば相手の選手とボールとの間に体を入れて、ボールを奪う時には肉の鎧を帯びた体で相手の進行方向を阻むことが容易にできた。
人からボールを奪われそうになった時も、体勢さえ整ってさえいれば簡単に奪われることはない。
また球技以外でも鎧を帯びた体は活かされる。例えば中学生の時に体育の授業の一つで柔道があった。
毎年十二月から一月ごろにダンスと柔道のどちらかを受けなければならず、リズム感がなかった僕は柔道を選択していた。
冷たい体育館の床や畳の上で素足を晒し、体の芯を冷え切りながらも、僕は受け身の練習などをして体を温め、いざ実戦へと入る。
本来、同じくらいの身長の人とペアを組むのだが、僕がペアを組まされたのは僕より一回りほど大きい柔道部のクラスメイトと組まされることとなった。
ああ、終わった。
綺麗に投げられて終わりだと思いながら、僕はその柔道部の子と組んだ。だが、意外にも柔道部の子に投げられない。
僕の体重が重くて投げられないのか、怪我をしないように手加減をしてくれているのかわからないが、とりあえず僕は投げられることはなかった。
結果は制限時間切れでドロー。僕も投げることはできない。
これを得意と言っていいのかは不明だが、柔道部に負けなかったというのは、僕の中で鋭く光る自尊心を高める要因となった。
顔が大きくて良かった。
僕はそう思い込むことにした。
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