勇者(俺)いらなくね?
弱力粉
序章
転移
目を開けたら、露出の際どいおっぱいしか視界に入らなかった。
顔を上げると、そのおっぱいの持ち主は大層高そうな椅子に座り、少し微笑み、頬杖をついている。白髪のロングの髪は、周りの光を反射していて所々眩しい。
地べたに座りこんでいる俺を、眠たそうにこちらを見下ろしたそのおっぱいの持ち主はゆっくりと口を開き...
「じゃあ魔王討伐お願いね〜」
「そんな軽いノリで言うことじゃねえだろ!」
俺のツッコミに軽く眉をひそめるが、お構いなしという風に続ける。
「魔物に溢れた世界に転移させるから好きな能力決めなさ〜い」
むむ?こ、これはあれだ。異世界転生だ。
えーっと待て待て、俺は死んだから最強系主人公に生まれ変わって... は!?待てよ!?
「女の子とイチャイチャ出来るのか!?」
「ちゃ〜んと女の子三人のハーレムパーティーよ〜男の子ってこういうのが好きなんでしょ?面倒だからとっとと能力決めちゃってね〜」
これはもう確実にラノベテンプレのあれだ、だが俺はここで浮かれたりなんかしない。
最強の主人公になってかわゆい女の子とイチャイチャするために必要なのは、圧倒的な力!具体的にいうのなら魔物どもを一瞬で蹴散らせればいいわけで...
「ほ〜ら、タイムリミットつけちゃうわよ?なんでもいいから早く決めちゃって」
「なんかいろいろ端折られている気がするが、とにかく俺が必要なのは...
『魔物を一瞬で捻り潰す』
程の最強の能力だ!」
格好をつけて立ち上がり、一字一字はっきりと、目をあわせて口にした。結局これが一番。頭使うの苦手だし、魔王をとっととぶっ殺してイチャイチャできればそれでいいんだよ。
努力してレベル上げたり、魔法を習得する過程もぜ〜んぶすっ飛ばして魔王をぶっ殺す。非常に非情で完璧なプランだ。
「...具体的には?」
なぜか拍子抜けした表情でこちらをポカンと見つめてくるおっぱい。よほど簡単に魔王を倒されるのが恐ろしいらしいな。
「ククク... 指先にすら触れることなく、すべての魔物を塵と化すほど強くなれる能力だ」
「... 言い回しダサっ」
あ、なんかこれかっこいい、クール系主人公で行こうかな。いやここは欲望に忠実でありたいからありのままの自分で行くべきか?
全ての生物を蒸発させるように粉々にしてしまえば、武器を使わずとも俺が勝つことは必然!
「まあ〜それじゃあ能力は決まったみたいだし、とっとと転移でいいよね?一応魂は預かっておくから、死んでも生き返ることは出来るけど、めんどいからその度にペナルティね」
ん?なんか重要そうな伏線だな、まあでも魔物には殺されないだろうからそうそう簡単に死ぬことはないでしょう。
「は〜い、面倒なので質問があってももう飛ばすね〜」
え?ちょちょちょっといきなりなんでも早すぎないかこの女神、もう少し落ち着いてからでも...
と文句の一つでもと口を開こうとしたら時すでに遅し。目の前のおっぱいの持ち主が、いや俺の視界が白い光に包まれたかと思うと、次の瞬間には広く、赤い絨毯が敷いてある室内に座り込んでいた。
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