第3話 8月30日 九重自宅[他者視点]

 九重の現在使っている自宅は分譲マンションらしかった。あまり目立つことのできないアンヘルとしては自然な選択なのだろう。


 最上階まであがり、周囲を見渡す。

 このあたりは山がちな土地であるため、見通しはそれほどよくはない。駅の向こうにわたしの母校でもある加賀瀬高校が見える。

 少し視線を流すと、青々とした山に朱色も鮮やかな鳥居が見えた。あそこが〈銀〉の実家である嘉上神社だ。山の上の神社といえば、このあたりでは結構有名だった。祭りなどでは結構賑わう。


「来る途中にビジネスホテルがあったな……」


 丁度、ここと学校との中間付近にあった。

 あの位置なら、学校と九重の自宅、どちらに鬼が出現しても気配でわかる範囲内だ。

 手練れの夜属が気配を隠した場合ならわからないかもしれないが、暴走している鬼などでは気配を隠すことはまずないと思っていい。


「よし」


 そうすることにとりあえず決定して、わたしは昼食を取るための店を探すことにした。

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