第2話 甘えんぼ
1月。雪の無いベランダ。寒さが身に染みる。
「寒ーい!凍っちゃう。中入りなよ。」
「これ吸ったら入る。」
「あぁ、煙草吸ってたんだ。」
「うん。
「子供みたいに言わないでよ。」
ブランケットに体を包み込んだ翔が拗ねてみせる。
「…可愛い。」
「なんか言った?」
「いや、なんも。」
「そう?」
息を吐くように出した言葉。
翔には届いてない。けど、なんか笑ってる。
「しかしさみーな。。」
僕はベランダの窓からソファでココアを飲む翔を見ていた。
翔も僕の様子を見てたくて少しカーテンを開けていた。
──────そして目が合う。
……翔が微笑むと、世界中の戦争がなくなる気がする。
それくらいあいつの笑顔は平和的だ。
僕は、灰皿に吸殻を捨てて部屋の中へ戻った。
「おかえり。来て。」
「うがいしてくる。」
「いいよ。気にしないから。」
「俺が嫌。」
「いいって!」
「お?かけさん珍しい。お怒り?」
僕が隣に座って抱きよせると、
「遅い。僕溶けていなくなっちゃうとこだったよ??」
「なにその可愛いやつ。すげーなほんと。『可愛い』が滝みたいに無限に流れてくる。」
「…。」
上目遣いで僕を見る翔の頭にキスした。
「違う!こっち。」
翔は自分の唇を指さした。
僕はこいつの指も好き。すらっと伸びた白い手。爪もちゃんと手入れされてて伸び過ぎず、短過ぎず、『可愛い』と『清潔』の黄金比率のような手。
「あ?こっち?」
僕はわざとその人差し指にキスした。
「うーー。違う…」
「なに。泣いちゃうの…?」
僕はへの字に曲げた唇に僕の唇を重ねた。
「稜太…」
「うん?」
「大好き。」
「俺もだよ?……ちょっと待て。」
「??」
僕はテーブルの引き出しから翔のハンドクリームを出して翔の手に塗った。
「可愛そうに。痛かったんじゃない?気付いてあげなくてごめん。」
「え?あぁ…逆剥け。痛くなかったから放置してた。」
「俺も気付かなくてごめん。」
翔は僕を引き寄せてキスした。
「かけ。。」
「うん?なぁに?」
「何このブランケット。耳ついてんのか。食っちまうぞ。」
「可愛いでしょ?」
「お前は本当に可愛いの似合うな。」
「でしょ?」
「……。」
「なに?」
翔の目をじっと見て…優しく抱きしめて帽子の上から頭を撫でた。
「…苦しいの?」
「うん…」
「僕はどこにも行かないよ?」
「うん…」
僕はたまに心に穴があきそうになる事がある。
そのまま気付かないふりをしたら壊れてしまいそうになる…。
それを翔は知ってる。だから見逃さない。。。
僕が少しきつめに 翔を抱きしめると、
「大丈夫。僕はここにいるよ?ずっとここにいる。」
僕は…翔の背中で泣いてた。
翔はそんな僕の背中を撫でた。
「大丈夫だよ。大丈夫。」
「ありがとう…。かけ…。」
僕が翔の目を見ると、
「泣き虫稜太。」
そう言ってソファの端に置いてあるティッシュに手を伸ばして僕の涙を拭った。
「ごめん…」
「いいよ。」
「稜太はねぇ…」
「うん?」
「いいのそのままで。僕が全部受け止めてあげるから。」
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