第22話:骸王【リッチ】VS魔道士【アレン】
魔王さん宅にお邪魔した訳だが、すっごいジメジメしてんな。湿気が凄い。もうちょっと換気した方がいいぜ?
「にしても、魔物がいねぇな。ド派手に訪問したからすぐにお出迎えしてくれると思ったが。留守かな?」
まぁ、そんなことは無いと思うが。すると魔法で周囲を探知していたアレンが声を上げる。
「みんな、複数の魔物がこっちに向かっている。城の外にいたヤツらよりかは手強そうな感じだ。」
「敵の本拠地ですもんね。今のうちに支援魔法かけときます!【付与・強化&俊敏】」
俺たちの体の周りに粒子が浮かぶ。今更だけど、支援魔法って強化されたかどうか視覚的に分かるから良いよね。
Gya!gyaaaaaaA!!!
そうこうしている内に、魔物がすぐ側までやってきたようだ。数はパッと見で10体。禍々しい色の甲冑を着たヤツとか赤色のデケェ狼とかユーリくんと一緒に倒した死神の別個体がいる。さすが魔物の本拠地。見るからにヤバそうなヤツらがうようよいるなぁ。
「来たぞ!迎え撃て!!」
「「「「了解!」」」」
だが、強化された俺の仲間の敵ではない。余裕で撃退に成功する。ちなみに俺は弱った魔物にトドメを刺すという手法であたかも活躍しているかのように見せかける。仲間に働いてないって思われたくないからな!
襲いかかる魔物を処理しながら魔王城の中を進んでいく。この魔王城はどうやらいくつかの階層に別れているようだ。一つの階層の広さと魔王城の外観から考えると3階または4階程の大きさだろう。
……そう考えると、やっぱり掃除とか移動が面倒くさいだろと思ってしまうな。地球人の性だろうか。
くだらないことを考えながら、さらに奥へと進むと、見るからに怪しい巨大な扉が現れる。
「うわっ、絶対ボス部屋じゃん。この雰囲気、間違いない。」
「どうやらそのようであるな。この先から強い魔力の気配を感じる。……以前戦った竜王よりは弱いがそれでも強大なのには違いない。」
……来たな、四天王ポジション!絶対いると思ってたんだよなぁ。多分1階層ごとに一体配置されてる感じだろ。俺には分かる。
「まぁ、大丈夫でしょ。俺たちなら勝てるさ。……行くぞ。」
そうして俺は扉を開けた。
部屋は閑散としており、奥には階段がある。しかし俺たちの目線は階段ではなく、部屋の中央に鎮座している存在へと集まる。
豪華な装飾が施されたローブを身にまとう骸骨。その立ち振る舞いからどこか気品が感じられる。そして俺たちを認識した骸骨の口がゆっくりと開いた。
「……よくここまで来ることが出来ましたね。素晴らしいです。……おっと、私(わたくし)としたことが、名乗るのを忘れていましたね。私の名は骸王【リッチ】魔王直属の三天王が1人です。」
「えっ?四天王じゃないの?」
「元々四天王でしたが、貴方達の手で四天王1人である竜王さんが倒されてしまったので、減らしたんですよ。」
あっ、そうなんだ。……なんか申し訳なく感じてきたな。しかも竜王って四天王だったんだ。
「なんかすんません。」
「いえいえお気になさらず。……貴方達が死ねばそれで丸く治まりますから。」
瞬間、周囲の空気が変わる。体から汗がぶわっと吹き出し、一気に緊張感が走り、竜王と対峙した時と似たような感覚に陥る。
……無事に勝てるかなぁ……
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吾輩達の前に三天王を名乗るスケルトンが現れる。……ふむ、魔力総量は吾輩より上であるか。
「まず手始めに【
ヤツが魔法を唱えると、ヤツの周辺の魔力が一変する。……この魔力の動きは……
Guaa……Guoo……
すると地面から鎧を纏ったスケルトンの次々に現れる。……やはり召喚魔法であったか。しかも装備持ちを複数か……かなり練度が高いな。
「【
土で形成した槍で召喚されたスケルトンを串刺しにし、全滅させる。この程度なら対処は容易い。
「ほう、なかなかやりますね。」
「貴殿もな。」
「では次はこれでどうでしょうか。【
次に召喚されたのは四足歩行の獣型スケルトン。俊敏な動きに警戒せねばならないと思ったが、召喚された瞬間にミナ殿とフィレス殿が突っ込んで一瞬で粉砕してしまった。
「……いくら出てきてもたかが骨。」
「簡単に砕けますね。」
「ふむ、これは出し惜しみはしない方が良さそうですね。【
こちらの力量をある程度把握したのか、先程よりもより膨大な魔力を行使し、この部屋の天井まで届くほどに巨大なスケルトンと小柄な騎士を数十体召喚する。
「さぁ、これはどうします?」
……これはスケルトンの相手をしているとリッチに隙をつかれて攻撃されるかもしれない。そうなれば一気にこちらが不利となるだろう。なら、役割分担といこう。
「……ヒビキ殿、吾輩が奴を倒す。その間、召喚されたスケルトンの相手を頼みたい。」
「よし、分かった。絶対勝てよ!」
「もちろんである。」
ヒビキ殿に後押しされて、リッチと対面する。視界の端ではヒビキ殿達が迫り来るスケルトンと戦っているのが見える。早いとこ決着をつけねばこちら側が一方的に消耗してしまうだろう。
「私に1対1の勝負を挑むとはよほど自身がおありのようで。」
「貴殿を甘く見ている訳では無い。気に障ったようなら謝る」
「大丈夫ですよ。……さて、雑談はこのくらいにして、始めましょうか。【
ヤツがそう唱えると今まで見たことの無い系統の魔法が飛び出した。牙を生やした禍々しい球。死霊のような見た目だな。……撃ち落とすか。
「開戦の合図もなしか。【
吾輩が繰り出したのは触れると周囲に衝撃波を発生させる雹。無数に宙から降り注ぐ雹による障壁によって防ぎ切れる……かに思えたが。
ヤツの放った一撃は吾輩の魔法を意にも介さず、そのまま吾輩の体に喰らいついた。
「ぐっ!?」
ヤツの魔法は吾輩の肩や腕の肉を抉りとり、そのまま自然消滅し、べちゃっと床に吾輩の1部だった肉片が落ちる。体の痛みと謎の喪失感が同時に襲いかかる。
「痛そうですねぇ。私のように肉なんて捨てたらそんな苦しみは無いですよ?」
「……遠慮しておこう。骨だけだと見苦しいのでな。」
「そうですか。まぁ、遅かれ早かれ。いずれは骨になるのですから、関係ないですね。」
……あの魔法をどうにかするか、吾輩が死ぬ前にヤツを倒すか。どちらかを達成出来ねば吾輩は骨にされてしまうだろう。
「【
電気を帯びた小規模の竜巻を発生させる。普通の魔物なら即死する威力だが……
「これまた派手な魔法ですね。まともに受けたらタダじゃ済まないですね。……まともに受けたらですが。【
先程と同じ牙を持った無数の死霊がヤツの盾となり、吾輩の魔法と衝突する。すると吾輩の魔法は次第に勢いを失い、消滅する。
……どうなっている?吾輩の魔法はあの程度の障壁で守れる規模と威力では無いぞ?……まさか?
「どうやらお気づきになられたようですね。そう、私の魔法は魔力を喰らうんですよ。」
……やはりな。通りでヤツの魔法を喰らった瞬間、妙な喪失感に襲われたわけだ。
「私は魔法を使う相手にはめっぽう強くてですね。……貴方にとって私は天敵にあたるのではないでしょうか?」
「……確かにそうだな。魔道士である我輩にとって魔力を喰われるんじゃ、どうしようもない。」
「おや?潔いですね。……なら、一思いに殺してあげましょう。【
「ぐっ!?」
再び襲い来る死霊を吾輩は
「……【
吾輩は残り少ない魔力を使い、一つの火球をヤツに向かって放った。傍から見れば苦し紛れの一撃にしか見えないそれは勢いを増しながらヤツ目掛けて飛んでいく。
「この期に及んでまだ魔法を使うとは。それでは勝ち目なんてないですよ?【
ヤツは再び死霊の壁を築き、万全の構えで吾輩の魔法を受け入れようとする。確かにこれでは先程と同じことの繰り返しになってしまうだろう。
……ならば見せよう、魔法の真髄を
「【
ぽつりとそう呟き、手で死霊の壁を払い除ける仕草をする。……すると、死霊の壁は元からそこになかったかのように消え失せる。
「なっ!?がぁっ!?」
盾を失い動揺したヤツは吾輩の魔法をモロにくらい燃やされ尽くす。
「……吾輩の魔法の真髄。それは他者の魔法を理解し、自身の意のままに操ること。……初めて見た魔法だったから理解するのに多少時間がかかったがな。」
「……だ、だからっ……私の魔法を……喰らい続けていたのですねっ……」
「自ら体験しないとイメージがしずらいであるからな。……おかげで良い学びを得られた。」
「……ふふっ、勝ち目がないのは……私の方でしたかっ……最後に……名前をお聞かせ願えますか?」
「……アレン……魔法をこよなく愛し、探究する魔導士だ。」
「アレン……良い名前ですね……敵同士じゃなければ……きっと……良い……お友達になれた……でしょう……」
そう言うと彼は喋らなくなり、最後には灰も残さずに消えた。……命乞いをせず、吾輩に好意すら示した彼に吾輩は敬意を表し、静かに黙祷を捧げた。
……次に会えるとしたら、その時は良い友人関係を築けたら良いものだ。
《骸王リッチVSアレン》
勝者【アレン】
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