わたしの人生の意味はひとつしかない。貴女と生きる、それだけ
十二月二十五日、クリスマスであり彩瑛さんの誕生日、わたしは宣言通り彩瑛さんの家で過ごしていた。昨日の夜は珍しくわたし優位だったから、身体のダルさはないけれど、つい怠惰にごろごろしてしまう。それだけ彩瑛さんの部屋が落ち着くっていうことと……。
「まさか貴女、このままここで年を越すつもり?」
「えぇそうよ。いいでしょう? こうしてこたつもあることだし」
おしゃれな洋室の一角にござを敷いてこたつを用意した。これがわたしなりの誕生日プレゼントだ。彩瑛さんは物に頓着する人じゃないから、こうした体験をプレゼントするのがいいと思って、家具屋さんで吟味したうえでここに届けてもらったのだ。まぁ、こたつ自体は物ではあるんだけど、とにかく流通業の人たちに感謝!!
「そうね。こたつ、暖かくて……いいものね。それはさておき、本当にいいの? 家族で年越ししなくて」
「いいのいいの。だって夏休みの大半をこっちで過ごしても許されてるんだから、ちゃんと言ってあるわよ。それに、なんか公認みたいな感じだし。文化祭で会って、なんか納得したみたい。なんならうちに泊まればいいのにって言ってた」
彩瑛さんはどうやら猪俣家が遺伝子レベルで惚れるような、そんな人みたい。
「彩瑛さんがうちの養子になってくれればいいのに」
「また突飛なことを言いだすわね……じゃあ、愛弥お姉ちゃん」
そうか、わたしの方が誕生日が先だから……彩瑛さんが妹になるのか。妹にあんなことやそんなことされている姉……なんかこう、いかがなものなのか。それに見た目だって彩瑛さんの方が大人びている。
「むしろ彩瑛さんの方がお姉さんみたいだよね。彩瑛……お姉さま?」
「あはは、いいわね。ロザリオでも用意しようかしら。……そうだ、私ばかり祝ってもらって悪いわ。愛弥はいつが誕生日なの?」
「え? あぁ、四月の四日だよ。学校始まる直前だから友達に祝ってもらったこと、ほとんどないんだ」
「なるほど、そういうところからも愛弥の寂しさが見えてくるわね」
「だから……彩瑛さんは何か用意してくれたら嬉しいな」
「じゃあ、ロザリオを用意するわね」
「ほんとそういうとこですわよお姉さま!!」
二人で笑いあって、それから……。
「そろそろベッド、行く?」
「彩瑛さんまだ明るい時間なのに……」
「でも、期待していたんでしょう? 夕べはあまり可愛がってあげられなかったから」
彩瑛さんにご奉仕するのは、それなりに充足感があるけれど……やっぱり熱が残るというか、疼きが収まらない気持ちもあった。
「わたしのこと……めちゃくちゃにしてください」
事後、わたしは彩瑛さんの上で絶頂の余韻に浸っていた。
「重くないですか……」
「少しだけ」
「あぅ……」
重くないとは言ってくれないのが彩瑛さんらしい。寝がえりをうつようにして彩瑛さんと横並びで仰向けになる。視界の端で彩瑛さんの豊かな胸が規則正しく上下していた。
「彩瑛さんは……生きる意味、見出せましたか?」
七月に投げかけた問いを再び。わたしは見つけられた気がする。きっと、彩瑛さんと出会うために今まで生きてきたんだ。流石に恥ずかしくて言えないけれど……。
「……少しだけ、ね。とはいえこれはある意味、自分探しみたいなものなのかもしれないわ。だから愛弥、貴女が無理に付き合う必要もないのよ? いつか、離れ離れになってしまうかもしれないし」
そう呟いた彩瑛さんの横顔はなんだか寂しそうで、まるでわたしを遠ざけようとするみたいだった。だからわたしは、すぐにその言葉を否定した。
「無理なんてしてないよ。大丈夫、二年生になっても三年生になっても、きっと一緒のクラスだよ。卒業してからだって、ずっと一緒に過ごせるよ。それに、彩瑛さんがわたしのこと大事に想ってくれているの、分かるから」
左手で、彩瑛さんの右手に触れる。わたしのために深爪ぎりぎりに切りそろえられた爪、少し伸ばして色を乗せたらきっと華やかに彼女を飾るであろう爪を、指の腹で撫でながら伝える。
「彩瑛さん、何度でも伝えるよ。誕生日おめでとう、わたしの……恋人になってくれて、ありがとう」
「私からも、ありがとう愛弥。……愛してるわ」
わたしに覆いかぶさるような体勢でまっすぐわたしを見据える彩瑛さん。落とされた口づけが、二回戦目の始まりを告げた。
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