第7話

時は、5月11日の日中であった。


美香子は、母親から『ハローワークへ行きなさい!!』と強烈な声で言われたので、仕方なく仕事を探しに行くことにした。


ハローワークへ着いた時に、美香子は大パニックを起した。


大パニックを起した美香子は、山下公園へ逃げた。


ところ変わって、山下公園にて…


ベンチに座っている美香子は、ぼうとした表情で海をながめながらつぶやいた。


アタシ…


シューカツいや…


やっぱり結婚した…


…………


ううん、結婚もイヤ!!


アタシ…


生まれてきた家をまちがえたわ…


男の子ばかりの家に生まれて来たから…


蝶よ華よとまわりから言われて…


デキアイされた…


だから失敗したのよ…


こんなことになるのだったら…


女の子が多い家に生まれたかった…


大金持ちのお屋敷に生まれたかった…


…………


この時、美香子は20年以上前のことを思い出した。


美香子は、高校を卒業した後に進学をする予定だった女子大の入学を自己都合で辞退した。


その後、おばの紹介で地元の信用金庫シンキンに就職した。


1年ごとに更新する契約職員ケーヤクであったが、まじめにがんばれば終身雇用にかわると言い聞かせながらがんばった。


だが、時の経過と共に『アタシ、選択ミスをしたのかもしれない…』と思うようになった。


どんなにがんばってもお給料が上がらない…


いつになったら終身雇用に変わるのか?


そのように思った美香子は、21の時に信用金庫シンキンをやめて結婚することを選んだ。


その後、都内にある結婚相談の店で結婚相手を探したが身の丈に合う相手が見つからなかったのでやめた。


そしてシューカツを始めたが、不採用がつづいたのでシューカツをやめた。


そしてまた結婚することを選んでコンカツしたが、またやめた。


美香子が結婚できない原因は、父親にあった。


父親は『美香子をやしなうことができる相手じゃないとダメ!!』と言うて、結婚相手の条件をより厳しく設定した。


その上に、父親がお世話をしてくださるご夫婦に対して不満ばかりを言うことが多かった。


父親ひとりのせいで、美香子はお見合いをやめた。


そしてまたシューカツを始めたが、不採用がつづいたのでまたお見合いをする…


またお見合いやーめたでまたシューカツ…


また不採用がつづいたのでまたお見合い…


…と言う悪循環が繰り返してつづいた。


父親が美香子のお見合いをぶち壊した原因はもう一つあった。


それは、父親がお見合いの席でキュウヨメイサイを見せてくれと強要したことであった。


父親は、お見合い相手に対して『キュウヨメイサイを見せてほしい…』と言うたが初対面の相手に対して失礼極まりない…


父親はお見合い相手の男性がどれくらい稼いでいるのかを知りたいと言うけど、その時点でお見合いは破綻したことが分からないからなおダメだ。


またその上に、父親がお見合いの席で大酒をのんだあと酔った勢いで、失言暴言をところ構わずにいいまくったこともあった。


いつだったか覚えてないが、父親がお見合いの席で大酒をのんでジョウキゲンになっていた時だった。


「お願いがあるけどいいかな…」


父親は、お見合い相手の男性に対してキュウヨメイサイを見せてくれと強要した。


父親は、世話人夫婦が紹介して下さった通りに安定した収入かどうかを確認したいからキュウヨメイサイを見せてほしいと頼んだ。


美香子のお見合い相手の男性は、ムッとした表情で父親に言うた。


「お願いって何ですか!?」

「ああ…お気を悪くしてしまったらあやまるよ…だけど…ひとつだけお願いを聞いてくれるかな?」

「それは何でしょうか!?」

「キュウヨメイサイを見せてくれるかな?」

「キュウヨメイサイを見せろだと!?」

「ワシは、君がいくら稼いでいるのかを知りたいのだよ〜」

「ふざけるなクソジジイ!!ぶっ殺してやる!!」

「ああ…落ち着いて落ち着いて…」


仲人の奥さまは、相手の男性をなだめたあと父親に対して怒った声で言うた。


「小松崎さん!!」

「なんだよ〜」

「あなたの失言が原因で娘さんのお見合いが何度壊れたのか分かっているのですか!?」

「知らない…」

「知らないじゃないでしょ!!」


世話人の奥さまの言葉を聞いた父親は、思い切りブチ切れた。


「何や!!もういっぺんいってみろ!!ワシはあんたらに美香子の身丈に合うお見合い相手を探せと言ってお願いしたのにまた安月給の男を紹介したのか!!」

「小松崎さん!!私たちは誠心誠意を持ってお世話をしたのですよ!!」

「ふざけるな!!」


デイスイ状態におちいった父親は、暴言をはいた。


「ワシはな!!美香子が専業主婦で通して行くことができる安定した収入がある男性を求めているのに…どうして安月給の男性を紹介したのだ!!あんたらが小うるさく反論したから頭に来ているのだ!!」

「小松崎さん!!」

「ケッ…ふざけやがって…ワシは娘の結婚相手になる男性がどれだけお給料をかせいでいるのかが知りたいから給与明細を見せてほしいと頼んだだけだ!!お見合い相手の男性の給与明細を見るのは娘の父親としての義務だ!!文句あるか!!」

「小松崎さん!!うちの長男だって安月給ですよ!!うちの長男の嫁は足りない分を補うために共稼ぎをしてるのよ!!」

「やかましいだまれ!!なんで安月給の男を紹介した!!」

「ふざけるなクソジジイ!!」


(ガチャーン!!)


思い切りブチ切れたお見合い相手の男性は、近くにあった空のビール瓶をテーブルにたたきつけた。


お見合い相手の男性は、父親に対して怒鳴り声をあげた。


「オドレクソジジイ!!ぶっ殺してやる!!」

「やるんか若造!!」

「小松崎さん、やめてください!!」


このあと、父親とお見合い相手の男性がお見合いの席で乱闘を繰り広げた。


それが原因で美香子のお見合いがこわれた。


その後またシューカツを始めた…


だけどまた不採用が続いたのでまたお見合い…


こんな悪循環がこんにちまでつづいたので、美香子は生きる気力をなくした。


アタシ…


もう…


たえられない…


もう、やり直しの機会はめぐってこない…


もうイヤ…


「くすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすんくすん…」


美香子は、顔を下に向けたあとくすんくすんと泣いた。


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