第4話

次の日の午後3時過ぎであった。


場所は、多香子の父親が勤務している職場にて…


前夜に発生した熊本地震による影響で従業員の4分の1が一時帰休の申請を出した。


このため、職場は休業状態に近い状態であった。


(4分の1の従業員さんたちの実家が熊本県か大分県で、熊本地震で被災をしたことによる一時帰休である)


多香子の父親は、従業員さんたちから一時帰休の申請書を受け取った。


しかし、上の人に書面を提出していなかった。


多香子の父親は『一時帰休の申請と言うが、うちの従業員どもは甘ったればかりだ!!』と言う表情で怒り狂っていた。


多香子の父親が書面をシュレッダーにかけようとしていた時であった。


会計の男性が大きめの封筒を持って多香子の父親のもとにやって来た。


「小松崎部長。」

「何だ!!」

「すみません…」

「また結婚の祝い金か!!」

「いえ、違いますよ…」

「それじゃあ何だ!!」

「大地震の支援金と香典のことで…部長、何をなされていたのですか?」

「一時帰休申請書をシュレッダーにかけていたところだ!!」

「なんでシュレッダーにかけるのですか?」

「従業員たちが甘えているからだ!!」

「部長…今朝のニュース見ていないのですか?」

「知らない!!」

「部長はゆうべ9時半過ぎに九州地方で大規模な地震が発生したことを知らないのですか?」

「知らないと言ったら知らない!!」

「それじゃあ、部長は三課の内川さんの気持ちなんか分からないと言うのですね~」

「内川がどうかしたのか!?」

「部長!!内川さんは益城町ましきにあるご実家が全壊した上にご両親が亡くなられたのですよ!!今朝方、内川さんが部長に一時帰休の申請書を出しにこられたとき、ものすごくフキゲンな顔をしていましたね〜」

「あれは甘えるなと言うて注意しただけだ!!」

「そうですか…部長は大規模災害で被災した人たちの気持ちが分からないと言うのですね…」

「キサマは、わしになにが言いたいのだ!?」

「部長は、5年前に東日本大震災が発生した時も、大津波で実家が被災したので石巻へ一時帰休を申請した従業員さんに対して暴力をふるいましたね…それだけではありませんよ…部長は出産のために産休を申請しに来た女性従業員さんにも暴力をふるっていたなど…部長のせいで被害を受けた従業員さんたちは、これで100人に達しましたよ〜」

「ワシは甘えるなと言うただけだ!!」

「そうですか…それならこちらにも考えがありますよ…今から22年前に都筑区つづきの山林で女性が首を吊って命を絶った事件がありました…忘れたとは言うてもだめですよ…命を絶った女性は、部長に申請した産休の申請書をシュレッダーにかけた上に女性に対してものを投げつけた…投げつけたものが大きなおなかにぶつかったことが原因で胎児が亡くなりました…」

「ワシは甘えるなと言うただけだ!!」

「あんたは、事件をもみ消すために知人のプロボクサーの男を利用した…プロボクサーの男とその知人であるヤクザ稼業の男数人を利用して女性を封じ込めた…そのせいで女性は自殺したのですよ…女性が遺した遺書には、あんたに対するうらみつらみがたくさん書かれていましたよ〜」

「だまれ!!ワシは甘えるなと言うただけだ!!」

「あっそうですか…それじゃあもうダメですね…それなら最後にひとこと言わせてください…きのう、あんたの次女がすき家をクビになったようですね…」

「それがどうかしたのか!?」

「うちのメイゴがあんたの次女からカネのムシンをされたことを聞いたので怒っていますよ…これ以上テイコウを続けるようであれば、あんたとプロボクサーの男とヤクザ稼業の関係を知人の(タブロイド夕刊の)キシャにちくりますよ…それでは…」

「待てコラ!!」


思い切りブチ切れた多香子の父親は、会計の男性のエリクビをつかんだあとボコボコに殴りつけた。


会計の男性従業員は、テイコウすることなく殴られつづけた。


それから3日後の4月18日の朝7時20分過ぎであった。


またところ変わって、多香子の家の玄関の前にて…


「章介!!待ちなさい!!」

「何するんだよ!!集合時間に遅れるのだよ!!」


多香子は、寝坊したヨウスケを置き去りにして出ていこうとした章介を止めた。


行く手を阻まれた章介は、多香子に対して『どけよ!!』と言うて怒った。


多香子は『ヨウスケを連れて学校へ行きなさい!!』と言うたので言うて、押し合いへし合いになった。


「どけよ!!」

「ダメです!!」

「どけよ!!」

「ダメです!!」

「どけよ!!」

「ヨウスケを連れて学校へ行きなさい!!」

「どけよ!!」

「いいえ!!ヨウスケを連れて学校へ行きなさい!!」


思い切りブチ切れた章介は、やっと家から出てきたヨウスケに石を投げた。


石は、ヨウスケの右ひざを直撃した。


「ギャー!!」


ヨウスケがより強烈な声で泣き叫んだ。


多香子は、章介に対して『どうしてヨウスケを殴るのよ!!』と怒鳴りつけたあと章介の顔を平手打ちで5回たたいた。


(パチーン!!パチーン!!パチーン!!パチーン!!パチーン!!)


顔をたたかれた章介は、多香子の右足をけとばして反撃した。


その後、家から出ていった。


ヨウスケは、この日も学校へ行くことができなかった。


この時、多香子の母親が家から出てきた。


多香子は、母親に対して『もうイヤ!!』と叫んだあと家の中に入った。


多香子の母親は、置き去りにされたヨウスケを両手で抱きしめた。


ヨウスケは、ぐすんぐすんと泣きながら言うた。


「学校へ行きたい…学校へ行きたい…ぐすんぐすんぐすんぐすん…」

「ヨウスケはおにいちゃんと同じ学校へ行きたいのね…」

「おにいちゃんと同じ学校へ行きたい…ぐすんぐすん…」


困ったわね…


どうすればいいのかしら…


多香子の母親がヨウスケを抱きしめてなぐさめていた時であった。


近所の奥さまが、しかめた表情で多香子の母親のもとへやって来た。


「奥さま!!」

「あら、ご近所の奥さま。」

「ヨウスケちゃん、今日も学校へ行くことができなかったの?」

「ええ…」

「まあ、かわいそうに…」

「なんて言えばいいのか分からない…」

「ねえ、ヨウスケちゃんは身体からだの具合でが悪いの?」

「いいえ…元気ですわよ…ちょっと眠れなかっただけよ…」


多香子の母親は大したことないと近所の奥さまに言うた。


近所の奥さまは、へんな目つきで多香子の母親を見つめながら『ふーん…そうかしら…』と言うた。


多香子の母親は、困った声で言うた。


「奥さま!!それはどういう意味ですか!?」

「意味はないわよ…」

「奥さま!!うちの孫に言いがかりをつけないでください!!」

「つけてないわよ…ああ、話しをかわるけど…奥さま…ちょいと小耳にはさんだ話だけど…きのうの夜、この近くで30代くらいの女性が首を吊って命を絶った事件があったのよ。」

「女性が首を吊って命を絶った事件があったって?」

「亡くなった女性は、職場に産休の申請を断られたことを苦に命を絶ったのよ…」

「ですからなにが言いたいのですか!?」

「なにひとりでイライラしているのよ…奥さま、ひとつチューコクしておくけど…一度鏡に自分のお顔を写してごらんになったらどうかしら…亡くなった女性は、あんたのご主人が勤めている職場の女性従業員さんよ…遺された遺書の中にあんたのダンナに対するうらみつらみがたくさん書かれていたわよ…あんたのダンナがパワハラセクハラマタハラ男になった原因を作ったのは女房であるあんたに全部あることを忘れないでね…」

「それはどう言うことですか!?」

「他にも、うちはあんたの次女にうらみがあるのよ!!あんたの次女がコーコーにいた時に人のお弁当を食べさせてもらうなど…たくさん悪いことをしていたわね…他にもあんたの次女がいじめを加えたことが原因で数人の生徒が命を絶ったのよ!!…他にも、あんたの次女が家出したあと元カレとドーセーしていたことなども知っているわよ…近いうちに、カネをもらいに来るから覚悟しなさいよ!!」


近所の奥さまは、多香子の母親をキョーハクしたあとその場から立ち去った。


キョーハクを受けた多香子の母親は、ひどく困っていた。


どうしたらいいのよ…


なんでうちがキョーハクを受けなければならないのよ…


助けてよ…


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