第288話 学院の始まり

 俺は基本に戻ってガラスそのものの研究をすることに決めた。

 材料の質の向上は作品の質にも影響するからだ。

 素材自体も、色々試したい。


 用途によってもガラスの質を変える必要がある。

 例えば、扉や棚に使うなら強化ガラス。

 防音ならペアガラス。

 料理などに使うなら耐熱ガラス。

 火事対策なら防火強化ガラス。一般的に網ガラスも防火対策のガラスだ。


 基本はソーダ石灰ガラス。一般的なガラスはこれ。

 ガラス細工とかにはこれを使っている。

 ホウケイ酸ガラス。師匠の領地で獲れる珪砂にはホウ酸が多く含まれていて硬質ガラスになる。

 硬質ガラスは耐熱ガラスになる。熱に強いガラスだ。

 ガラスペンにはこのガラスが適している。

 クリスタルガラスは酸化鉛が使われているから俺は作らないけれど、透明度の高いガラスだ。前世では高級なガラス食器によく使われている。

 あと結晶化ガラス。

 ガラスは非結晶構造だけど、ガラス内部に結晶を作って特殊な状態にしたガラス。

 熱による膨張が少ないので火災被害を抑える点が特徴。


 あとは機能によってすりガラスとか、いろいろあるけれど、この世界には魔法というファンタジー要素があるからそれを含めて開発するべきだと思う。

 もちろん魔法を使わないガラスをって言っていたのは俺だけど、ハンスやハンスの弟子たちに任せたいなって思う。現にハンスは透明度の高いガラスを開発してくれたしね。

 錬金術は金属などの物質を変化させる魔法が主体だから、薬草をあれこれしてポーションにしたり、鉱石から特定の物質を抽出して錬成して金属の延べ棒(いわゆるインゴット)を作ったりできる。

 前世でもガラスと錬金術は関係性が深いものだから、錬金術師の天職をもらったのは嬉しい。

 師匠は凄いし、恵まれている。


 とりあえず、ガラスの材料から吟味して、鑑定しまくるかな?

 師匠は鑑定じゃなくユニークスキルを使っているみたいで、そこはちょっと違うけれど。


 そして一日、ガラスを作って終わった。夕方には成長痛が来るので、その時点で強制終了だ。

(まだ痛いの?)

 ラヴァが心配そうに聞いてくるから、鼻筋を指で撫でる。

「痛いけど、病気じゃないし、大丈夫だよ」

(よかった)

 工房を出ると丁度呼びに来たスピネルと会った。

「ルオ様、食事の時間なので呼びにまいりました」

「ありがとう。着替えていくよ」

「かしこまりました」

 一緒に屋敷に戻ってから着替えて食堂に顔を出した。

 師匠も来て、夕食が始まった。

「明日から学院が始まるな」

「うん。卒院できるように残りの単位とらないと」

「頑張れ。見守っているぞ」

「師匠、見守るだけなの?」

「応援もする」

「ありがとうございます?」

 師匠が笑って、俺も笑う。

「研究も大詰めだからな。ガラスの器具も増えたし、検証も増やすぞ」

「そこはケンダルたちに頑張ってもらって……」

「ルオ……」

 師匠が悲しげな顔で俺を見る。罪悪感に頷くしかない。

「わ、わかったよ。頑張る」

「よし」

 すぐに表情を切り替えたのを見て、やられたって思った。

「大人はずるい」

(ずるい)

 ラヴァも乗っかった。

「それが大人になることなんだよ」

「えー」

「まあ、冗談半分てところだな。色々経験すればわかっていくことも多いぞ」

「経験かあ」

「そうだ。ルオはまだ十四歳だからな。準成人まで二年あるし、成人までは四年ある。成人して、ちゃんと大人になれるかは別問題だが、ルオなら大丈夫だろう」

「大丈夫?」

「ルオだからな」

 ふっと笑った師匠の顔は俺のことを信頼してるように思えて嬉しかった。


「よう、ルオ、今期もよろしく」

 学院についたら、掲示板にクラス分けが書かれていた。

 3-Bだった。

 タビーと一緒だった。

「タビー、今期もよろしく」

 タビーの背が伸びて、体格もがっしりしていた。

 お互い、成長してるんだと、俺は思った。





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