第278話 精霊がいっぱい
「兄様!」
「ルオ坊っちゃん」
俺の声に気付いて駆け寄ってくるイオは身長が伸びてた! というか逞しくなってない?
「あれ? 馬車は?」
イオがきょろきょろとする。
「馬車はまだだ。俺たちだけ先に帰ってきた」
師匠が、それに答える。馬車は荷物だけ運んでるんだよね。
「え、そうなんだ?」
イオが首を傾げつつ呟く。
「剣士系の天職なんだって? よかったね」
撫でるところだが、身長差はそれほどないからちょっと躊躇う。俺が今百六十五センチくらいだから、イオは百五十センチくらいあるのかもしれない。
「うん! スキルがいっぱいあったんだ。風魔法も使えるみたい」
「身体強化とか覚えるともっと強くなるかも」
「ルオ坊っちゃん、イオ坊っちゃんの成長は目を瞠るほどです。迂闊なアドバイスは私の身が危ういので、控えてくださると嬉しいです」
ウォルトの目が本気だった。そんなにイオは強いの?
「まあ、イオはもともと才能の塊みたいな感じだったからな。相当強くなるぞ」
師匠が笑って言う。
「そういえば師匠、昔イオに稽古つけてた時があったよね?」
師匠が俺の発言に余計なことを言うなって顔をした。
「師匠!! 僕に稽古つけて!」
そういえばイオも師匠呼びだった。
「いや、ほら、ウォルトがいるだろう」
師匠が笑顔で拒否した。
「いや! ここは放浪の賢者の本気が見たい!」
ウォルトは本当に本気が見たいんだろうか。昔師匠にコテンパンにされた記憶が俺にはある。
「待て待て、帰ってきたばかりなんだから、少し休ませろ」
師匠の言葉にハッとした二人は大人しく引いた。
「時間が空けば指導はするから」
師匠は完全には断らず、屋敷の方へ歩き出す。俺も一緒に屋敷に入ろうと続いた。
「ほんとにあとでだよ!」
「お願いします~!」
イオとウォルトの声を背に、中に入った。
「ルオ様! お帰りなさいませ」
中に入ると、ギードがいた。
「久しぶり! うわ~なんか、大人な感じする」
一年ぶりのギードは執事服がめちゃめちゃ様になっていた。二歳上だから、もう準成人だ。
「そうですか? 照れますね」
ギードも身長が伸びて師匠よりちょっと低いくらいだ。
「すまないが、領主様に取り次いでもらえるか」
「ヴァンデラー師、お帰りなさいませ。すぐ行ってまいります。これからお部屋へ行かれますでしょうか?」
「ああ。部屋で少し休んでいる」
「かしこまりました」
礼をしてギードは父の執務室の方へ向かっていった。
「僕は、部屋に行くね」
「ああ、ゆっくり休め。今日はありがとうな」
「ううん! また、あとで!」
「ああ」
師匠に見送られて、俺は部屋に向かった。
(お部屋だ~!)
「うん。久し振りだね」
ラヴァの声に頷いた。
部屋に入って窓を開ける。
空気が師匠の実家に比べると、断然涼しい。
霊峰は、相変わらず雲で頂上が見えない。
いつもは意識して見ないようにしている精霊を視界に移す。
きらきらとした光がたくさん舞っている。森にも、土にも、屋敷のあちこちにも。
ルヴェールには精霊がいっぱいいる。
目の前が眩しくて見えなくなるほどに。
(もう、主は僕の!)
ラヴァが吼えると光がばっと逃げ出すように散っていく。
「ラヴァ、怒らないの」
(だって、主の魔力吸っていったよ?)
「気付かなかった」
(主の体の周りにある魔力によく他の精霊が来て魔力食べていくんだよ?)
「え?」
(主の魔力は美味しいの。だって王様の愛し子になるくらいだからね)
「え、精霊が集ってくるのって好かれてるだけじゃないの?」
(主のことはみんなが好きだけど、魔力がみんなに好まれてるのもあると思う)
「そ、そうだったのか……」
なんとなく複雑な気持ちになった。
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