第137話 合同演習が終わって
合同演習は強制終了した。
三日間の休みのあと、合同演習の成績表をもらった。
「あれ? 気のせいか一番に見えるんだけど」
「気のせいじゃないな。俺にもそう見える」
俺とタビーは顔を見合わせた。
「静かに! 合同演習が中止となったが、それまでの採点で順位をつけた。中止になった時点で生存していた組の生存点はそれまでに獲得したポイントが多い順にふってある」
モレ―先生が俺たちの方を見たが、視線を戻した。
「合同演習で優秀な成績を残したものは上級学校に推薦がなされることもある。来年度以降も頑張って欲しい。なお、中止の原因は調査中だ。以上!」
連絡事項が終わって座学だ。その後にお昼、実技ともう平常運転だ。
お昼を食べに食堂に来た。先に来ていたルーンが席を取っていたのだけど、その隣にいてはいけない人がいた。
「私も一緒にいいだろうか?」
「は、はい」
「はい」
頷くしかないよね!
ルーンがすまなそうな顔をしていた。
とりあえず、食事をとろうということで、定食を取ってきた。
殿下の前には豪華な定食があった。
あれって、すっごい高い奴!
それから静かな食事が始まった。
(静かだね! 主!)
(うん。新しい人が一緒だからかな?)
(ご挨拶する?)
(食事が終わったらね)
ラヴァが空気を読んでいる!
みんなが食べ終わった頃、俺の肩からテーブルに降りたラヴァが第二王子殿下の前で前足を上げて挨拶した。
「……これは……」
第二王子殿下の戸惑った顔が俺に向けられる。
「挨拶です」
「……こんにちは。アリファーンと言う」
(よろしく!)
ラヴァは手を下げて戻ってきて俺の肩に戻った。
「火トカゲ? 挨拶する火トカゲ……?」
「ラヴァって呼んでください。アリファーン殿下」
「ラヴァ君……」
あ、第二王子の目がほっこりしてる。うんうん。ラヴァは癒しだよね!
ルーンは口を両手で押さえて震えていた。うん。我慢できるようになってる。
タビーが半眼になっていたが気にしないことにした。
午後の実技はマナーと乗馬だ。相変わらず馬たちの好意は変わらずで、俺はちょっと離れて乗る馬だけを教師が連れてくるという変則的な感じになっている。
多少上達したので、並足から早足も出来るように訓練中だ。
ラヴァは馬の頭に乗せてもらったりしている。嫌がらないので、教師も諦めた。
(みんな、主が好きだよ!)
そう言われるとちょっと嬉しい。
授業が終わるころ、先生が呼び出し状だと言って俺とタビーに召喚状を渡した。
師匠からだった。先生の目が何やったんだという目だった。
何もやってないです! と言い訳するのもあれなので、ありがとうございますと言って、着替えて師匠の研究室に向かった。
「なんだろうね」
「事前に聞いてないのか?」
「ううん。特には?」
「まあ、行ったらわかるだろう」
師匠の研究室の扉をノックする。
「入っていいぞ」
「失礼します」
中に入ると、前と同じようにテーブルに、ルーンがいた。
「師匠、呼び出し状って聞いてないけど」
「ヴァンデラー先生、何かありましたか?」
タビーが恐る恐る聞いた。
「まあ、座れ」
俺とタビーは前の通りに座った。そこに師匠がお茶を淹れて戻ってくる。
「合同演習、一位おめでとう」
「ありがとう師匠」
「ありがとうございます」
「おめでとう」
ルーンが驚いたようで祝いの言葉を口にした。
「一組はマイナス評価があって、九番目なんだ」
「あ、魔物の件で?」
「うん」
「三組もだな。最初に魔物を連れてきた二人は怪我で今も休学中だ。彼らは三組だった。原因は今も調査中だ。何も見つからなければ不幸な偶然で終わるな」
「そうなんだ」
「あんなに瘴気を発している魔物って初めて見ました」
「まあ、そうだな。人型は瘴気を纏いやすいんだが、あれほどは滅多にないんだ。俺も見たことはない」
「浄化魔法とか、ターンアンデッドとか効くのかな?」
「瘴気は浄化できるが、攻撃力はないから、どうだろうな?」
「用件はそのお話ですか?」
タビーが首を傾げた。
「……大変言いにくいんだが」
「なにか面倒なこと?」
「面倒といえば、面倒、だな」
「早く言ってください」
タビ―!
「ルオ、タビー、ルーンの三人は第二王子殿下の側近候補になっている」
「はああ!?」
俺とタビーとルーンの心は一つになった。
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