呪いの装備で始まるVRMMO

@samidare334

第1話

キーンコーンカーンコーン、授業の終わりを告げる鐘の音が鳴る


「よし!早く帰ろう。あ~楽しみだな~」グフフ


俺の名前は、風間司かざまつかさ。この春、高校2年になった16歳だ。何故こんなにも気持ち悪い笑いをしているかって、それはな



「お~い、司。一緒に帰ろうぜ」


「ん、卓也か。いいけど、今日は寄り道しないぞ」


「分かってるって。じゃ、行くか」


今、俺に声を掛けてくれたのは、幼馴染の不知火卓也しらぬいたくや。家が近い事もあり、小さい時から家族ぐるみで付き合いがある。他にもう一人いるのだが、まあアイツは煩いからなぁ


「おう!早く帰ろうぜ」グフフ


「司。笑い方が気持ち悪いぞ」


「煩い。卓也は良いよな、サービス当初から始められてさ。それに比べて、俺は今回の第三弾の応募でやっと当選出来たんだから」


「そればっかりは、運だからな」


今俺達が話しているのは、サイファー社が出したVRMMO【Freedom of Good and Evil Online】通称FGEOだ。従来のVRMMOとは違い、このFGEOは名前の通りプレイヤーは、自由に出来るそれも善悪問わずに。Evil側には、それなりの重いペナルティーがあるらしいので、俺は普通にプレイしようとは思うが



「まあ、良いや。早く帰ろうぜ卓也」


「はいよ」


卓也と一緒に学校から帰る。帰宅途中の会話で卓也から



「司は相変わらずソロでやるのか?」


「そうだな。何でそんな事を聞くんだ?卓也も今はソロだろ」


「いや今は、4人でパーティーを組んでる。それで、良かったら司もって思ってな」


「そうなのか。お誘いは有り難いけど、辞めとくよ。俺は後発組だし、他のメンバーに迷惑を掛けそうだから」


「別に気にしなくても。まあ、司がそう言うなら、これ以上は言わないよ」


その後は、男二人くだらない世間話をしながら帰宅する




「ただいま~」


「つー君おかえりー」


「あれ?姉さん居たんだ」


「居たとは何よ。そんな酷い事を言う子には、こうだ」エイッ


「ちょっ!姉さんいきなり抱き着かないで」


「ダーメ。お姉ちゃんの愛を素直に受け取りなさい」


今俺に抱き着いているのが、姉の風間真理かざままり。歳は俺の二個上で、今年の春から大学に通っている。そして、言動から分かると思うが、かなりのブラコンなのだ



「姉さん、ほら離れて」グイッ


「むー。つー君成分を補給しないと、お姉ちゃんは死んでしまうのです。つー君はお姉ちゃんを見捨てるの」


「冗談を言ってないで、俺やる事があるから」


「そんな!『ヤル事』って、つー君は男の子だし、溜まっているかもしれないけど、それならお姉ちゃんが」


「何言ってんの!この馬鹿姉がー」


あまりにも頭ピンクな姉に対し、脳天にチョップをするのだが


「何、つー君はSなの?でも、そんなつー君でもお姉ちゃんは受け入れるよ」


駄目だ、この姉強すぎる。相手にするだけ無駄だな



「姉さんが、何を考えているか分からないけど」


「何って、『ナニ』だよ。つー君」コスコス


そう言って、女性がやってはいけないジェスチャーをする


「いい加減にしないと、怒るよ」


「キャー。ついに、つー君に『ピー』されちゃうのね。さあさあ」


アホな事を言って、手を広げる姉


「、、、、、部屋に行くわ」


それをスルーして、自分の部屋へ行く


「もう、つー君のいけず。今日の晩御飯は、お姉ちゃんの愛が篭ったカレーだから」


「、、、りょーかい」ハァ


早く部屋に行ってゲームをしよう






「よし!準備が出来たから、早速やるか」


帰宅早々、姉さんに絡まれるアクシデントがあったが、やっと【Freedom of Good and Evil Online】が出来るぜ。ゲームする為のヘッドギアを装着して、ベッドに横になる


「さあて、始めるとしますか。あぁ、楽しみだ」


ゲームの世界へとダイブする




【Freedom of Good and Evil Online】の世界へようこそ。キャラクター名の登録をお願いします。登録完了が終わった後に、ナビゲーターから説明が御座います。それでは、【Freedom of Good and Evil Online】の世界を、お楽しみ下さい


「先ずは名前からか。いつも通り『フーマ』でいっか」


風間の名字から、読み方を変えただけなので安直ではあるのだが、忍者っぽくて俺は気に入っている


「『フーマ』っと、これで決定を押せばいいのか」


決定ボタンを押す。すると、、、



「パンパカパーン。おめでとう御座います」パンパン


クラッカーを鳴らしながら現れる女性、、、、これが、ナビゲーターなのか?


「あの、おめでとうって、何が?」


気になっている事を質問してみる、答が返って来るか分からないけど



「それはですね、『フーマ』様は、ななな何と【Freedom of Good and Evil Online】サービス開始から4,444,444番目の登録者になられました。それでですね【Freedom of Good and Evil Online】では、所謂キリ番での登録者様になりますので、特典が御座います」


まともに答が返って来るとは、最近のAI技術って凄いんだな。キリ番なのは良いけど、数字が全部4なのは、日本人的には嫌ではある



「それで、特典って何が貰えるの?」


「それは、キャラメイク後の発表になりますので、先ずはキャラメイクからお願いします」


「分かった。それで、キャラメイクはどうやれば」


「基本的に身長、体重はデータ登録されている物と一緒になりますので。変更出来るのは、髪と顔のみになります」


ふーん、身長と体重はそのままなのか。まあ、何年か前にその件で事件があったから、そこはどの会社でも慎重になるのだろう。それじゃあ、キャラメイクをしますか



~ ゲーム内2時間経過 ~


「あの~、フーマ様。まだ、終わりませんか」


「うーん、どれもしっくり来ないんだよな」


髪は少しだけ赤色に染め、顔はそのままにして、いざFGEOを始める為の職業を選択する段階で、迷いに迷って時間だけが経過する。いや、最初はフーマに因んで忍者になれそうな職業を聞いてみたけど、どうやら忍者はEvilになるらしく、その段階で諦める。他にも色々見ているのだが、どれも俺の興味を引くのが無い


うーんうーんと、考え中の俺に痺れを切らしたのか、ナビゲーターの女性から提案をされる


「フーマ様。職業で迷っているのであれば、『ランダム』で選ぶ事も出来ますが」


へぇ~『ランダム』か。ギャンブルだが、それはそれで良いかも



「『ランダム』で職業を決めた場合の、メリットとデメリットってあるの?」


一応これだけは聞いておかないと


「メリットに関しては、ランダムで選んだ場合、この中には無い強い職業が御座います。デメリットに関しては、その逆に弱い職業もありますので」


「成程ね、他には何か無いの?」


「それ以外では特にありません」


職業の強弱だけなら、やる価値はあるな。キリ番での登録で、今俺の運はあるだろうし。それに、たとえハズレて弱い職業に成ったとしても、地道にレベル上げすれば良い事だからな



よし!!どうせこのまま悩むなら『ランダム』で勝負してみるか


「それじゃあ、職業はランダムでお願いします」


「承りました。それでは、今から職業選択欄の画面右上にランダムボタンが出ますので、そのボタンを押して下さい」


そう言われたので、画面右上を見ると今まで無かった『ランダム』が現れる


「ボタンを押したら、こちらのキューブの色が『黒・白・赤・金・虹』の順番に変わります。黒だと最初に選ぶ事が出来ない最弱職、虹だと最初に選ぶ事が出来ない最強職に成る事が可能です」


「因みに最弱職と最強職って、数はどれだけあるの?」


「数に関しては最弱最強ともに、50程御座います」


うわー、結構あるのね。今更ながらちょっと後悔する。せめて、最弱は選ばれませんように



「それでは、フーマ様。宜しいでしょうか」


「スーハースーハー、ヨシッ!覚悟は出来た!今の俺なら大丈夫だ」


自分に言い聞かせて、ボタンを押す




ボタンを押してキューブを見ると、、、、あれ~、黒のままだぞ。くぉ~れぇ~わぁ~、やっちまったか。こんな事になるなら、ちゃんと選べば良かった


絶賛後悔中なのだが、起きてしまった事は仕方がな無いので、どんな職業でも楽しもう、最悪幼馴染の卓也に力を貸してもらおう。そう思っていた時、突如キューブが輝き出す


「えっ、、、マジで、、」


ナビゲーターの説明では、黒から順番に色が変わると聞いていたが、今は黒から一気に虹へと変わる



「これは、珍しい事が起こりましたね。しかも、この職業は」


ナビゲーターも予想外の出来事だったのか、驚きの表情をする。しかし、AIであるはずなのに表情が豊かなので、実は制作会社の社員の誰かがやっているのかな?


「虹色って事は、大当りなんだよね」


「はい、おめでとう御座いますフーマ様」


「それで、どんな職業なのかな?」


賭けに勝って、ウハウハ気分でナビゲーターに聞いてみる



「フーマ様の職業は『全呪統ぜんじゅとう』になります」


「『全呪統ぜんじゅとう』?何その職業?」


「それでは説明致します。『全呪統』と言う職はその名の通り【全ての呪いを統べる】事が出来る職に成ります。ただし、装備出来る物が呪われた物で無いと、装備することが出来ません」


「呪われた物しか装備出来ないの!」


何それ!じゃあ、装備を手に入れるまで裸一貫でやれと?それ、R-18になっちゃうじゃん



「装備品に限りですので、最初段階で着ている服や靴等は対象外となります」


「裸一貫よりはマシか。でもさ、最初に支給される武器等はどうなるの?」


「それなのですが、フーマ様にはキリ番での特典が御座いますので」


そうだった!最弱職に成ってしまうかもって思っていたから、すっかり忘れていた



「じゃあ、その特典で呪いの装備一式貰えるの」


「はい、そうなります。ですが、私達運営もまさか『全呪統』が当たるとは思っていなかったので、フーマ様には大変申し訳ないのですが、ゲーム開始地点を変更させて頂きたいのですが」


今、運営って言っちゃったよこの人。通りでAIにしては感情豊かで可笑しいなあと思ったよ。でも、AIで無いのなら、、、このお姉さん凄く綺麗なんですけど



「まあ、装備品一式貰えるのなら、別に構わないけど。因みに開始地点は、何処になるの?」


「本来であれば、Goodならゼールズ村、Evilならアーヴィ村でチュートリアルを行うのですが、フーマ様はどちらにも属さないCurseですので」


「ちょっと待って、CurseならEvilではないの?」


「それなのですが、呪いの装備に関してはEvilでも装備不可になりますので。Curseは善悪どちらにも属さない、第三の勢力となります」


「いや、第三の勢力って響きは良いけどさ、俺以外は居ないでしょ」


「現状、Curseの所属は、フーマ様のみになります。ですがご安心を、フーマ様の場合善悪どちらのパーティーに参加が可能となりますので。騙し討ち、裏切り等も簡単に可能ですよ」


「運営がそれを進めるなよ!まあ俺は、基本ソロでやるからそんな事はやらないよ」


「それは、残念です。最近は、善悪お互いに一ヶ月後に初開催のイベントに向け、攻略だけに集中しているので、運営としては攻略だけではなく、他の事にも目を向けて欲しかったので」


「他の事って?何かあるの?」


運営のお姉さんが言った、【他の事】が気になったので聞いてみるが



「それは、フーマ様の目で色々と確かめて下さい」


一応ヒントなのかな?上手く煙に巻かれたような気もするが、まあ他にも聞きたい事があるし、今はこれで納得しよう



「分かったよ。他にも聞きたい事があるんだけど」


「はい、私に答えられる範囲内でしたら、お答えします」


「最初に装備一式貰えるけど、他の装備が欲しい時、呪いの装備品って店で買えるのか、後はドロップ品にもあるのか、そこはどうなの?」



「では、説明致しますね。まず、店での売買なのですが、行っています。更に、現状フーマ様以外装備は出来ませんので、大半がジャンク品として格安での売買になっております」


おぉ~♪これは良い情報をゲット出来たぞ、お姉さんは続けて説明する


「次に、ドロップ品等に関してはですが、こちらもダンジョン内の宝箱や特定のモンスター等から確率は低いのですが、ドロップ品はありますのでご安心を」


確率は低いんだ。まあ、どんなゲームでもある事だし。それに今の俺なら、確率の壁を突破出来そうだ、今日限りだけどね



「他に質問は御座いますか。質問が無ければ、開始地点へ転送を行いますが」


「うーん、、、、あっ、じゃあ最後にこれだけ。俺の『全呪統』って、呪われていれば全て装備品が装備可能なんだよね」


「そうなりますが、それが何か?」


「例えば、剣や弓、他にも杖とかの魔法関連の装備で、魔法を使う事は可能なのか気になって」


「それでしたら、可能とだけ言っておきます」


全て可能なのね。こりゃ、装備品を集める楽しみが出来たな



「他に質問は御座いますか」


「今の所、聞きたい事は全部聞いたから大丈夫かな」


「それでは、『滅びの村 デカース』に転送致します」


ん?今滅びの村って、、村人が居ないって事は、、、、無いよね




「それではフーマ様【Freedom of Good and Evil Online】の世界をお楽しみ下さい」




「ちょっ、、その村に、人は、、、」


質問は打ち切られ、光に包まれる。ああもう、こうなりゃ出たとこ勝負だ



眩しい光も収まり、目を開けて見た光景は


辺り一面全て廃墟、廃屋しかない、とても村人がいる様には見えない村がある



「スゥー、、、ふざけんなぁぁぁぁーーーー、、、、ハァハァ、、、いや、流石にチュートリアルは終わっていないから、誰かいるはず」


そう、チュートリアルだよ、チュートリアル。これから、受けるんだから、その村人は居るよね。そんな淡い期待は、村に入った瞬間に打ち砕かれる事となる















~後書きみたいなもの~


この作品は、作者の息抜きで書いているので、更新は不定期になります

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