6.契約者と奴隷
「というわけで、君達の物理的な力が必要となってくる。今後は訓練と行きたいが、まぁ、昼食が出来るまで少し踏み入った話をしようか。ノエ、少し外してくれ」
「了解しました。アルス様」
まだ契約者と奴隷という立場だが、アルス的にはその関係性は却下だ。
だからこそ、奴隷ではなく、仲間、いずれ家族として迎え入れたい。男の欲望なんて思ったが、それでも衝動買いであったことに間違いはなく、確固たる意志はまだないが、買ったから以上、契約者としてこの後の人生を良いものにしたいという目的が生まれた。
そしてアルスの自室にはアルスとエルディス、センシアだけとなった。
「では、さっきの話について何か必要はあるか?」
「戦力が欲しいと言っていたが、そんなことを矮小な子供に頼むなんて鬼か?」
そう、警戒心強く契約者であるアルスに問い掛けたのはエルフのエルディスだった。
「まぁ……まぁ、それはそうだな」
たしかにそれは一般的な倫理観に倣えば、子供を戦力として扱うなんてことは子供趣味で性的なものとして扱うことに次ぐ扱い方だろう。
だが、まぁ、反論は出来ないが、買ってしまった以上、後戻りなんてできない。
「正論じゃろ?」
「あぁ、うん……ん、珍しい喋り方だな」
ふと、思った。
このような喋り方をする人物って子供というより人間で言うなら年老いた人だろう。
それなのに子供の外見であるエルディスがそのような喋り方、口調なのは単に身近にいた自分の口調を真似たのか、それとも……。
「エルディス、君は自分がエルフの中の希少種であることを自覚しているか?」
「な、何を言う?」
「質問に答えてくれ。君は自分の価値を自覚しているか?」
「……あぁ、この髪色は我以外にいなかったからのぉ。それに、我は五百年も生きたエルフゆえ、子ども扱いはよしてくれ」
「へぇ、だから何か違うと感じたんだよなぁ」
と、言っているが確信があったわけではない。
しかし五百年ってノエ、エル、ルアより二百年も生きているということだ。
つまりはまだエルフが絶命寸前ではなかった時代、その遥か前から存在していたのかと考えるが、人間である俺には想像の余地もないが……。
「まぁ、子供扱い……そうなら、そうするとしよう。それなら、センシアは?」
「センは生きてじゅう~に、くらい、です」
なるほど、獣人センシアは通常の少女のようだ。
「エルディス、魔法は使えるか?」
「あぁ、でも使う気はないぞ。そんなことのために使うなんて、そもそもお前の奴隷になった覚えはないぞ」
「……反抗的だな。まぁ、そりゃそうか」
逆に素直に従ってくれる奴隷も珍しいかもしれない。
しかしこの関係性は奴隷契約によって保たれ、今でも維持されているのだから、そうは言ってもアルスが命令をすれば、従わざるを得ない。
「でも、奴隷契約で俺達は関係を持っているぞ」
そうとアルスは指摘するとエルディスは鼻を鳴らす。
「ふん、こんな契約。すぐに破棄できるわ。あまり我を舐めるんじゃない」
「まぁ、舐めていないが……でも、破棄されちゃあ、困る。それに俺が出したお金は無論、有限。抜けることは許さない。もし、その奴隷契約を解除できるなら、奴隷商会の檻の中に入ることはなかっただろ?」
「……そ、それはセンシアがいたから」
「え?」
エルディスの話しでは二人が出会ったのは奴隷商会に追われている最中であり、その出会いから年上であるエルディスがセンシアを思って一緒に奴隷商会に捕まったと打ち明けた。
「そ、そんな事情があるなら、教えてくれればいいのに……なるほど、だからか」
この二人が同じ檻に入れられていたこと、二人一緒に買っても不仲なことや気まずい雰囲気がなかったことをアルスは気付いて思い返す。
「じゃあ、センシアは俺に従えるか?」
「ッ!! ちょっと待つのじゃ。獣人にそれを言うなんて――」
「せ、センは別にいい人そうだし……」
とセンシアは少しもじもじとしながら呟く。
「ほら、少しは俺の良心を信じてくれないか?」
少しはエルディスとセンシアの事が知れたことでノエが部屋に入ってきた。
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