清算 11
一応、軽い抵抗はしてみたものの。
あれよあれよと流されて。
なんか、押しに弱い娘の気持ちが少し分かった気がする。
そして。
やはりノアにはそっちの才能があるらしい。
押し切られてしまった。
それどころか、もう一つの初体験まで。
何がとは言わないが。
……うん。
今回の騒ぎで周り振り回して、多少の負い目はあったからね。
さっき、何でも聞くって言ったよねと言われ。
つい断れきれず。
あれだな。
これ、若者の性欲貯めさせると碌なことにならないらしい。
別にわざとやった訳じゃないんだが。
メスガキでもないのに、ワカラセくらったんだが?
恐ろしい。
これからは気をつけないと。
って、んな話はいいのだ。
もう過ぎた事だし。
うだうだ言っていても仕方がない。
肉体的な疲労と精神的な疲労。
ダブルパンチで、このままベッドでぬくぬくしていたい所だけど。
流石にね。
メスガキと女教師を放置して夢の世界に旅立つ勇気はない。
特に女教師。
ノアへの物と同じく負い目が……
それに、さっき聞こえてきた会話から言って。
同質のものを感じる。
ノアと違って若者ではない。
しかし、性欲だけでいったらそれ以上の物をお持ちでも何ら違和感ないし。
ただでさえとんでもない目に遭ったのだ。
これ以上、無駄に刺激するのはいかがなものかと。
搾り取られて干からびてしまう。
ノアからはまだゆっくりしようよ的な視線を感じるが。
誘惑に負けるのはマズい。
これは淫魔のそれとほぼ同一である。
同意したが最後。
その未来は想像に難くない。
他の家具同様、高級そうな寝心地のいいベッドを何とか振り払い。
よろよろと抜け出す。
服を着て、鋼の意志を持って寝室を出た。
メスガキ、まだ帰ってなかったらしい。
ま、話があるって言ってたもんな。
この家に来たってことは、ほぼ間違いなくノアへの用件だろうし。
とは言っても。
ほら、結構時間経っちゃったからね。
てっきり先生に伝言頼むなりして。
既に帰宅してたりしないかな、な〜んて思ったてたのだけど。
様子を見るに。
どうも、そういうつもりはなさそうだ。
先生と2人でソファーに腰掛け、おそらく紅茶でも飲んでいたのだろう。
机の上には飲みかけのティーカップ。
女教師が準備したのかな?
この家に来たの。
俺やメスガキと同じく、今日が初めてって感じだったが。
理不尽な放置くらった訳だしね。
まぁ、同僚のキッチンを多少物色するぐらいの権利はあってもいいはず。
……と、言うか。
あれ?
俺たちの事を待ってたのは間違い無いと思うのだが。
何故だろう。
2人と目が合わない。
出てきて気づかないってことはないよな。
部屋が広いって言っても、ドアの音が聞こえないって程じゃないし。
別にそっと出てきたつもりもないが?
そもそも、ぴくりと一瞬耳が反応してたし。
気づいてはいるはず。
明か。
意図的に視線を逸らされてる様な……
よくよく改めて見ると、この光景ちょっと不自然?
俺が出てきた時。
談笑するでもなく2人でソファーに腰かけて。
壁を眺めて。
一体何をしていたのだろうか。
飲みかけの紅茶も。
湯気出てないし。
気温から言って、あれ相当冷めちゃってるんじゃ。
それに、メスガキの目からハイライトが消えてる気が。
いや、以前から。
会う度に目の光が若干くすんで行ってる気はしていたのだ。
ただそんなあからさまではなかったし。
ここまで酷くなかったはず。
今のメスガキの瞳、これじゃほぼレイプ目である。
後、先生も頬が心なしかほんのりと赤く。
息も。
冬だという事を考慮しても、水蒸気が多い様な。
嫌な予感が……
淫乱女教師がついに生徒に手を!?
って、そっちではなく。
そういや。
この家の防音性能。
一体、どの程度のレベル感なのだろうか。
詰所にあった、拷問室。
あそこはかなり防音に気を遣っていたのが見て取れる。
地下にあったし。
その上、壁が厚い石に覆われていた。
部屋の中での話し声も。
多分、チートを持ってた俺以外聞き取れてなかった。
言い換えれば、だ。
本気で防音に気を遣うなら。
それぐらいの対策が必要って事なのでは?
それに比べてこの家はどうよ。
確かに豪華。
でも、現代ほど技術が進んでる訳でもない。
あくまで住宅なのだ。
豪華さも。
それは、王城の様な堅牢さとは全くの別物。
家の外でも若干怪しいのに。
隣の部屋とか。
もしかして、これ。
全部、声漏れちゃってたんじゃねーの?
少し遅れて寝室から出てきたノアの方へ視線を送る。
いい笑顔だ。
肌も心なしかツヤツヤして見える。
不自然な2人の様子を見ても、気づいてないのか気にしていないのか。
特に焦りもしない。
流石。
ってか、気にする様な人間なら。
こんな状況で俺のこと寝室連れ込んだりしないわな。
……
いや、俺は気にするんだが?
ごほん。
「それで、なんの用でここに来たの?」
気まずい。
その空気を払拭したくて、メスガキに話をふった。
元々話ありそうな感じだったし。
いや、中断させたのは誰だって話なんだが。
俺のせいではない。
不可抗力。
ノアが悪いのだ。
まぁ、メスガキと話すのも普通にアレなんだけど。
立場的に。
片思いの相手の彼氏。
しかも、一枚壁挟んでよろしくやってた直後という。
でも、仕方なくね?
沈黙に耐えられなかった。
だから、一旦無かったことにして進めようかと。
彼女もそうだったのだろう。
ハイライトの消えた瞳から察するに。
色々。
思うところはありそうだが。
普通に答えてくれた。
自分の感情を一旦押し殺して。
現状を解決する方向に舵を切ってくれたらしい。
ほんと、いい子だ。
「あ、そうでした。ノア先生に話があって来たんです」
「僕に?」
「フィオナ先生と。後、一応間男にも関係がある話で」
再びの間男呼び。
やっぱり押し殺してはいないのかもしれない。
って言うか、あのーノアさん?
先輩が、自分のとこの生徒からナチュラルに間男呼びされてますけど。
スルーでいいんです?
前はおじさん呼びですら結構怒ってた気が。
いや、何って事はないんだけどね。
どうやら。
俺は本格的に尊敬する先輩ではなくなったらしい。
まぁ、初回に反応しなかった時点で。
察してたけどね。
もしかしたら聞こえてなかった可能性もあったが。
その線も。
今の聞いてないって事はないでしょ。
「実は、犯人に心当が……」
「え、犯人って」
「はい、王都で暴れてる魔術師達の」
「……本当なの?」
「ノア先生に嘘なんて付きません」
なるほど。
そりゃ、この家来るはずだわ。
衛兵は頼りにならんし。
メスガキは、一応貴族の家の子だろうが。
おそらくは下級なのだろう。
情報があったところでどうにも出来ない。
上とのパイプはありはするのだろう。
ただ、今はガチで緊急事態。
上級貴族も慌ただしい。
その細いパイプが機能するかどうか。
Aランク冒険者の講師。
相談する相手としてはピッタリか。
自身の想いもあるし。
そんな発見すれば。
なんて淡い期待もあったのかも。
俺の存在を知りはしても、諦めてはいなかったのだろう。
当然ショックではあっただろうが。
その結果、とんでもない場面に出会した訳だけど。
……どんまい。
なんかこのメスガキ。
ノア関連で、ずっと散々な目に遭ってる様な。
運命じゃないんだよ。
諦めろと神様が忠告しているのだ。
まぁ、恋ってのはそういう物じゃないと言われたらね。
その通りなんだけど。
そのなんだ。
あれだ、強く生きろ。
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