第8話 昼食

「お前ら、なんでここでフランスパンを食ってる」

昼休み、僕らは資料室でご飯を食べていた。

言い出しっぺはもちろんそらだ。

遡ること数分前……


四限目終了のチャイムがなり、ご飯の時間になった。

「てるてる〜一緒に食べよ!」

「僕、弁当ないから購買に行かないといけない」

『購買?何それ』

おい、うんこ、ここで聞くなよ。周りに人がいるだろ。変に答えたら僕が変人みたいに扱われかねない。

僕は小声で答えた。

「昼食買うところ」

「あ、そういえば、てるてるお昼ご飯ないだろうと思って、私、てるてるの分のご飯持ってきた!」

え?朝遅刻しかけてたくせにいつ用意する時間あったんだよ。

そう言いながらカバンの中からながいものを取り出す。

「もしかして……フランスパン?」

まじかよ。朝も走りながら食べたんだけど。昼も食べるの?しかも時間が経って美味しくなくなってるだろうし。

「ご名答!フランスパンだよ!!一緒にたーべよ!!」

僕はしぶしぶ机をくっつけて、2人で食べる用意をする。

「え?ここで食べるの?」

「逆にどこで食べるんだよ」

「てっきり私は瑞雲みずも先生の部屋で食べるのかと」

瑞雲みずも先生の部屋……あぁ、資料室ね。

資料室?!あそこ埃だらけだったぞ。瑞雲みずも先生の部屋だから汚いのか。先生、家の部屋も汚かったし。もしかして、掃除苦手だったりして……

まぁ、埃だらけの部屋使いたくないし……

「あの部屋って勝手に使ってもいい部屋なの?」

「うん。多分大丈夫。多分」

多分で保険かけるなよ。そこははっきりとしてくれ。

「多分って言うなら、やめとこう。多分瑞雲みずも先生も迷惑だし」

それに汚いし……

「てるてるも多分って言ってるじゃん。それじゃ行くよ、てるてる!!」

そう言って僕は無理やり引っ張られて連れてかれた。

あまりの力の強さに抗えなかった……


「という経緯で、ここでフランスパンを食べてます」

一通り説明したら許してくれたりしないかな……

そう。言い出しっぺは空なのだ。

「輝斗はわかった。で、なんで珠数木すずのきもここにいるんだ?」

「わたしも同じような経緯で、ここにいます。空くんに誘われました」

おお、大胆な嘘をつくなぁ

珠数木すずのき、お前は資料室に行く僕と空に着いてきたんだよな。

まあ、確かに空が誘ってたような気がするけど、無理やり来たのと着いてきたのでは差があるのでは?

「まぁ、別にここで食べてもいいが、この部屋、汚いぞ?」

うん、ほんとに汚い。掃除してないのかよ。

「いいよ全然!出てもゴキブリくらいでしょ?」

良くない!断じて良くない!!ゴキブリは良くないぞ!!しかも食事中に言うとは。

「そろそろ、か」

瑞雲みずも先生が時計を見ながら奥の方へ入っていった。

先生、さっきから時計気にしてたし、何してるか気になる。

奥に行ったと思ったら、すぐに引き返してきた。カップ麺を持って。

なんだよ、カップ麺かよ。

しかも、珠数木すずのきも空も話してないし、気まずい……。頼むから誰か話してくれ……。いや、そもそも、珠数木すずのきも空もこういう空気で平気なタイプかもしれない。

でも!僕は!こういう空気好きじゃない!!苦手!!頼むから、誰か話してくれ……。それか話題を……


「いおおーあいえおいおう?」

へ?なんだって?

確かに話して欲しいと思ったものの、食べながら話して欲しい訳ではなくて、せめて食べ終わってから話してくれ。

「いや、自己紹介は明日にしよう。別に部活のときでいい」

え?部活?

「何ポカーンとしてるの?輝斗くん。明日からよ、部活」

え?やだ。やだ。もうはじまるの?いやいや、聞いてないって。

「正確には来週からだな。明日から仮入部だ」

「色々なところで仮入部の話とか、勧誘とかされているでしょう?」

え?うそ、全然知らないんだけど……

「まあまあ、てるてるここ最近忙しかったからね。そんなこと頭に入ってなかったのかもしれないよ」

え、まじで明日から?嫌だ!ただでさえ早く帰りたいのに!

あぁぁぁぁぁ嫌だぁぁぁぁぁぁ

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