2.さらに新しい出会い

まさか入学式初日に女の子と友達になれるなんて思ってもみなかった。

名前は桂木さちさんで黒髪ツーサイドアップの美少女。

(美女と言うには色気が足りない感)

ただなんか怪しい関西弁で独特のノリの子だったな。


・・・


次の日、早めに大学について食堂に向かう。

朝ご飯も食堂で取れば料理しなくていいから楽だ。

さて、メニューはっと。


納豆定食。もうちょっと何か欲しいな。

焼き鮭定食。悪くはない、候補にしておこう。

卵かけ定食。それ定食なの?

カレー定食。なんでカレーに定食ってついてるの?

パン定食。なんでもかんでも定食にするのはやめようよ。

かつ丼。ようやく定食が抜けたけど朝から食べるの?

ゆで卵。サイドメニューとしてあるのか、これはいいね。

目玉焼き。ハムはついているのか、それが問題だ。

スクランブルエッグ。んん?

卵焼き。んんん?

出し巻き。いやいや、卵料理多すぎだろ!?

エッグマフィン。食堂で出すメニューか!?


ツッコミどころのメニューだった。

もしかして昼もこんな感じだったのか?

あの時は目についた唐揚げ定食を選んだだけだった。

ちょっと今日の昼は注意してメニュー見てみよう。


とりあえず朝ご飯は焼き鮭定食にゆで卵をつけた。

料理を受け取って手ごろな席に座って食べ始めると、

横から声をかけられた。


桂木「おはろー、早いねんな」

俺「おはよう、9時から必修あるから普通だろ」

桂木「そうやねん、朝から面倒やわー」


そう言いながら俺の席の横に座る桂木さん。

そのままぐでーっと机に倒れこむ。

いちいちリアクションが大きい。

彼女も同じ生物科だったので9時の講義に出る必要がある。


俺「ご飯食べて元気出しなよ」

桂木「露木君は何食べてるん?」

俺「焼き鮭定食とゆで卵」

桂木「普通やな」

俺「普通で何が悪い」


桂木さんがばっと起き上がって券売機に向かう。

そしてしばらく眺めた後こちらに戻ってきた。


桂木「男ならもつ鍋とか食べようやないか」

俺「朝から食べるものじゃないしそもそもない」

桂木「あるで」

俺「は?」

桂木「メニューにあったで」


券売機に行ってみると右下の隅に本当にあった。

なんで食堂にもつ鍋があってしかも朝に提供してるんだよ。


桂木「明日の朝食はこれで決まりやね」

俺「いやいやいや、無理だろ」

桂木「『無理』というのはですね、嘘吐きの言葉なんです」

俺「どこの社長の言葉だよ」

桂木「なせば成る、なさねば成らぬ、なにごとも」

俺「絶対そういう使い方する言葉じゃないと思う」

桂木「文句が多いなぁ、露木君は」

俺「無理なことを説明するのを文句とは言わない」

桂木「ああ言えば上祐」

俺「何歳なら分かるネタだよ」

桂木「ネタと分かとる辺り露木君も同じやね」


ニヤーっと笑う桂木さん。

すぐネタに走るのは関西人の特徴なんだろうか?

いや、関西人なのかは知らんけど。


桂木「お昼楽しみにしとるで」

俺「普通のメニュー選ぶよ」


桂木さんが去っていった。

結局朝ご飯は食べないようだ。

本当に嵐のような子だな。

ただ男友達みたいなノリで話せるのはありがたい。


そしてお昼。

よくよくメニューを見ると、

普通のものに混じって変なのがある。

なんでうな丼とかどて煮とかがあるんだ?


まあ無難なとんかつ定食にしておこう。

そう思ってボタンを押そうとしたら、

後ろからチキン南蛮定食のボタンを押された。


桂木「迷とるみたいやから買うといたでー」

俺「勝手に買うなよ!?」


後ろにいたのは桂木さんだった。

相変わらず(・∀・)ニヤニヤ笑っている。

そして隣には黒髪ロング前ぱっつん眼鏡の女の子がいた。


大人しめの顔に眼鏡がよく似合う。

知り合いに

「神は最初に眼鏡を作り給うた。そして眼鏡に合うように人間を作り給うた」

という人がいたけど、俺は違うと思う。

眼鏡はあくまで魅力を引き出させる道具であるべきだ。


桂木「おーい、聞いとるか?」

俺「っと、聞いてる聞いてる」


おっと妄想の世界に旅立ってしまうところだった。


女性A「さちちゃん、友達?」

桂木「そーそー、露木君言うてチキン南蛮大好きな人やねん」

俺「捏造するんじゃない」

桂木「そやった、露木君やのうて唐揚げ君やった」

俺「まだそのネタ引きずるのかよ」

女性A「ふふっ」

桂木「露木君、先に行って席とっといて」

俺「え、俺が?」

桂木「両手に花なんやから文句言わない」


それもそうか。

座る場所を探していると庄司がいた。

向こうも気づいたようで軽く手を上げている。

付近の座席も空いているのでちょうどいい。


俺「よっ、ちょうどよかった」

庄司「お、どうした?」

俺「他にも二人来るんだけどいいか?」

庄司「構わんぞ、女の子か?」

俺「ああ」

庄司「まじかよ!?冗談のつもりだったのに」


庄司が慌て始めた。

まあ逆の立場だったら俺も慌ててるな。

庄司が落ち着く間もなく二人が来た。


桂木「席取りありがとな」

女性A「ありがとうございます」


二人が向かいに座る。

なんか合コンみたいだな。


庄司「あ、昨日の女の子か」

桂木「ん?誰やっけ?」

俺「昨日怒られただろ」

桂木「ああ、あん時の」

庄司「覚えてもらってて光栄」

俺「隣にいる彼女は友達?」

桂木「昨日友達になったもみじちゃんやで」

諏訪「諏訪もみじと言います、ええと唐揚げ君さん?」

俺「ちゃんと名前覚えて!?」

庄司「何、そのネタ?」

桂木「露木君は唐揚げ君だったんだよ!!」

俺・庄司「「な、なんだってー」」

庄司「恭平がこのネタ分かるとは思ってなかったぜ」

俺「そもそも桂木さんが分かっているのがおかしい」

桂木「この世の悪いことは大体ノストラダムスが悪いかんな」

諏訪「ノストラダムス?」

俺「ただのネタだから理解しなくていいと思うぞ」

庄司「全ての原因をノストラダムスのせいにする漫画があったんだよ」

諏訪「なるほど……?」

桂木「MMRを知らんとは世間の漫画離れも著しいんよ」

俺「何十年前の漫画だよ」

桂木「聞きたいかね?……昨日までの時点では、大体20年前だ」

諏訪「え?」

俺「なんで正確じゃないんだよ!?」

桂木「おまえは今まで食ったパンの枚数をおぼえているのか? 」

俺「トレーズ閣下は覚えていただろ!?」

庄司「諏訪ちゃん、何言ってるか分かる?」

諏訪「ええと、分からないかな」


つい興奮して突っ込んでしまった。

なんでネタの使い方を間違えてるんだよ。

あ、ニヤニヤしてる。

分かっていてやったのか。


諏訪「ところで二人のお名前は……?」

庄司「そうだよ、俺は立木庄司っていうんだ、よろしく」

俺「露木恭平です、よろしく」

桂木「うちは桂木さちやで。さちはひらがなな」


ようやく自己紹介が終わった所でご飯を食べ始める。

俺は桂木さんが選んだチキン南蛮だ。

大きいチキンが切り分けられていてタルタルソースがかかっている。

周りを見ると桂木さんは真っ白い丼を食べていた。


俺「それはとろろ丼?」

桂木「鮭といくらで親子丼やな」

俺「とろろで何も見えない」


なぜに鮭といくらの親子丼にとろろ?

それならとろろ丼とかにすればいいのでは?


桂木「あ、今エロい想像したやろ」

俺「何を!?」

桂木「親子丼にとろろで興奮するとか変態やでー」

俺「おかしい、勝手に変態に仕立て上げられている」

諏訪「仲いいね」

庄司「でも昨日知り合ったばかりらしいぜ」

諏訪「え、ほんと!?昔からの友達かと思った」

桂木「運命を感じたんよ」

俺「電波系かな?」


桂木さんが醤油を回しかけたとろろに箸をいれると、

中からとろろをまとって刺身やいくらのつぶが出てきている。

とろろにはない食感が追加されることで、

飽きずに食べすすめられそうだ。

桂木さんは満面の笑みで食べ進めている。

すごく美味しそうに食べてるし今度頼んでみよう。


桂木「ん?見てもやらへんで」

俺「口の周りが真っ白だぞ」

桂木「エロい想像は厳禁やかんな」


鞄からウェットティッシュを取り出して口を拭いている。

エロさより皮膚がかぶれないか気になる。


諏訪「かわいい鞄だね」

桂木「ええやろ。一応ブランド物なんやで」


俺が見てもさっぱり良さがわからない。

頑丈さとか収納力とかそういうのしか見ないからなぁ。


鞄を眺めているとふとストラップが目についた。

12と書かれた金属のストラップ。

それはとあるゲー厶に出てくる義務を示したマークにそっくりだ。


俺「桂木さん、ちょっといいかな?」

桂木「ん?なんやろ?」

俺「20

桂木「!……そうやね、早寝早起きはやからね」

庄司「すごいな、俺はそこからが本領発揮だ」

諏訪「私も0時くらいまで起きてる」


やはりそうか。

女性でギャルゲーをする人はいると聞くけど初めて見たな。


桂木「ご馳走様でした。露木君ちょっと用事手伝ってくれへん?」

俺「構わないよ」

庄司「じゃあな、二人とも」

諏訪「またね」

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