雨の日にあった出来事をきっかけに聖女様と仲良くなりました～今日も聖女様に心溶かされてます～

第4話 彼女とショッピング

　七瀬とショッピングモールへ遊びに行くことになった土曜日。いつもより服装を気にして家を出た。

　待ち合わせは、現地集合。冬が近づき、外で待つのは寒いとのことでショッピングモール内にある雑貨屋で集合となった。

　集合時間前に到着するが、当然、七瀬はまだおらず店の外で待つこと数分後、走ってくる七瀬が見えた。

「お、お待たせしました！」

　そう言って駆け寄ってきたのはいいが、段差があるところでつまずきそうになったので俺は咄嗟に彼女が転ばないよう、手を差し出した。

「大丈夫か？」

「あ、ありがとうございます。助かりました」

　七瀬は俺から手を離し、一歩下がる。すると彼女の服装が目に入った。

　白いニットに下は黒と白のロングスカートを着ていた。靴は、黒のショートブーツを履いていた。

　彼女の私服は雨が降っていたあの日に一度見ていたが、前も見たが、七瀬の私服はとても可愛らしい。

　そしていつもと大きく違うところは髪型だ。いつもは、長い髪を下ろしているだけだが、今日は髪をまとめており、ポニテだった。

　髪型がいつもと違うだけで雰囲気が違うなと考えていると七瀬は、俺の顔を覗き込んできた。

「立川くん？」

「！」

(ち、近い……)

「ごめん、ちょっとぼーとしてた。その服、七瀬らしくて似合ってるな。可愛いよ」

「かわっ……あ、ありがとうございます」

　彼女は、嬉しそうに小さく笑った。

「どこ行こうか。七瀬は、ショッピングモールに来たらいつもここに行くとかある？」

「私は、雑貨屋や本屋に行くことが多いですね。立川くんは、どこに行くのですか？」

「俺は、ゲーセンとかフードコートで食べるためだけにショッピングモールに行くことが多いかな」

「げーせん……私、そのげーせん？に行ってみたいです！」

「……じゃあ、行ってみるか」

「はいっ！」

＊＊＊

「立川くん、見てください！　可愛いクマさんのぬいぐるみがあります！」

　七瀬にグイッと腕を掴まれ、彼女との距離がグッと縮まった。

(近いです、近いですよ、七瀬さん)

「やってみるか？」

　クマは少し大きく、取るのは難しそうだが、彼女はクマがいる台から離れる様子はない。

「クマさん、欲しいのですが、実は私、こういうのはしたことないんです。なので、やってみても取れるかどうか……」

「そうなんだ。なら、コツとか教えようか？」

「！　ありがとうございます、教えてほしいです」

　彼女はボタン操作、俺はどのタイミングでボタンを手から離すのか指示するという役割になった。

　一通り彼女にやり方を教えてから始めることにした。

「まずは、横……次に前後ですね。では、立川さん、お願いします！」

「おう、任された」

　ボタンを押すのは彼女に任せ、俺はクレーンゲームの台の横から見てストップと言った。

　１回目、やはりこういうものは簡単には取れず、２回目に挑戦する。

「難しいです……」

「俺がやってみようか？」

「いいのですか？」

「うん、いいよ」

「……では、お願いします」

　七瀬に頼まれ、５回ほどチャレンジしたところクマのぬいぐるみは下へ落ちた。

　俺は、取り出し口からクマのぬいぐるみを取り出し、それを彼女に渡した。

「大きいですね。袋がもらえるそうなので取りにいきましょう」

　ぎゅっと大きなクマのぬいぐるみ抱きしめる彼女はとても嬉しそうな表情をしていた。

　誰かが喜んでいるところを見ているとこちらまで嬉しくなる。

「お金はちゃんと払います」

「ううん、いいよ、お金は」

「そ、そんな……払います」

「この前のお裾分けのお礼だと思って受け取ってくれ」

「……わかりました。大切にしますね」

　七瀬は、クマのぬいぐるみを大切そうにぎゅっと抱きしめた。

＊＊＊

　ゲームセンターから出た後は、昼食を食べることになり、フードコートに移動した。

　取ったぬいぐるみがあるので俺、七瀬と順番に注文しに行くことに。

「お待たせしました。先に食べていても良かったのですよ？」

　オムライスを頼んで帰ってきた彼女はそう言って俺の目の前に座った。

「いや、先に食べるのも悪いなって……」

「ふふっ、ありがとうございます。立川くんは、麺類ですし早く食べないとですね」

「そうだな」

　彼女は頼んだオムライスを、俺はラーメンを食べ始める。

「ラーメン、美味しいですか？」

「うん、美味しいよ。少しいる？」

　彼女が欲しそうな顔をしていたのでそう尋ねると彼女は首を横に振った。

「いえ、大丈夫です」

　そこからは話すことなく食べ、少し休憩した後は、雑貨屋、本屋と彼女がよく行く場所に行った。

「もう５時か……そろそろ帰るか？」

「そうですね」

　楽しくて彼女といる時間はあっという間だった。もっと一緒にいられたらと思うが、帰らなければならない。

「今日はとても楽しかったです。また一緒にどこか行けたらいいですね」

「うん、そうだな。俺も今日は楽しかったよ、ありがと」

　女子と二人っきりで最初はどうなることかと不安だったが、誘ってよかったと思えた。

「こちらこそありがとうございます」

　彼女はそう言って手招きした。どうやら耳を貸して欲しいそうで、俺は少しかがんで耳を傾けた。すると、彼女は耳元で囁いた。

「立川くんの私服カッコいいです」

　耳元で言うのは反則だろ……。言われるだけでも嬉しいと言うのに。

(てか、小声でカッコいいと伝えてくれる七瀬、可愛すぎるだろ……)

「あ、ありがと……。降りる駅一緒だし、途中まで一緒に帰る？」

　外は暗いため、女の子を１人で帰らせるのはどうかと思い、誘ってみると彼女はコクりと頷いた。

「はい、一緒に帰りましょう立川くん」

　まだ距離はあるけれど今日１日で七瀬と仲良くなれた気がした。

「このクマさん、部屋に飾って毎日１回ぎゅーとします」

「いいんじゃないか、ぬいぐるみも喜ぶと思う」

「ふふっ、子供っぽいと言われると思いました」

「子供っぽいとは思ってないよ。可愛いと思った」

「可愛い……」

　急に黙ってしまったので大丈夫かと心配で隣を見ると七瀬は顔を真っ赤にしていたのだった。