第4話 死刑囚ラーナ・エークレー
「にしても、アレ何なんだろうね」
ギギラは対戦相手であるラーナを凝視する。
彼女の背中から這いずり出ていた悪魔は次第と液状に溶けてき、ラーナの体と混ざりあう。
そして数秒後、衝撃波と共に彼女の変身が始まった。
「あれって、悪魔と合体したのか?」
「だねぇ……ギギラ的に言えば、あの子が悪魔を取り込んでるって感じだけど」
ラーナの体はボロボロの布切れから一変して淡い青色のドレスに変わっていた。
ドレスから顔をだす手や足は真っ黒に変色しており、指先は鋭利な凶器へ様変わり。
背中からはコウモリの様な羽が生えている始末だった。
「あぁ……あれが武器に変えられた人間。なんて汚らわしい」
ラーナは杖となっているバランを見るなり、翼を大きく広げ始めた。
ものすごいスピードで彼女は前へ進み、その爪をギギラの首元へ送った。
「っとぉ」
ギギラはバランの刃物部分でその攻撃を防ぐ。
案外筋力は高くないんだなと、ラーナの事を見定めながら。
「禁術によって性質を変化させられた者は、術者が消えると一緒に死ぬみたいですね」
「そ~みたいだねぇ。そんな事ギギラに聞かせて何のつもり?」
「宣言ですよ。貴方を殺して、貴方に囚われた魂を開放するんです」
「うえぇぇ?!それ俺にとっては全然俺嬉しくないんですけど」
ラーナの四肢は今や全て刃物となっているも同義。
右の拳を止められたなら左の拳を。
左の拳を止められたなら右の拳を。
それを悪魔から奪った力で続けるだけで平凡な相手は殲滅出来る。
「はは~ん、なるほどなるほど。ギギラ分かっちゃった」
ラーナにとって不運だったのは、ギギラ・クレシアは平凡な相手などでは無かった事だ。
「君さ、戦うの慣れて無いでしょ」
「一体なんの話を」
「こんなのとか避けられないんじゃない?」
ガキン!!と音が鳴った。
ギギラの持つ杖とラーナの右腕が派手にぶつかり鍔迫り合いをする。
次は誰が仕掛けるか?
先ほどと同じ様にラーナが殴り倒すだろうよ。
ギギラが鍔迫り合いで押し勝つんじゃないか?
そんな予想を観客達が飛ばす中、誰も考えなかった展開が巻き起こった。
「うぉぉぉぉぉ!!!
そう、ギギラの使う武器は全て元人間。
そして、バランはその中でも唯一、自由に行動し、言語を話す存在だ。
ゆえに、彼が自主的に魔法を放つ事も可能なのである。
「うわぁ?!」
不意をつかれたラーナはその魔法をもろに喰らう。
しかし、バランが吐き出す魔法のスケールは全て極貧な物へ調整される。
ゆえに、この一撃も相手の体勢を崩すので精一杯の威力しか出力できない。
そのあまりにも滑稽なギャップがまた、ラーナの意識の中に隙を作った。
その隙をギギラは逃さない。
「よいしょ~!!」
バランの先端にある刃物でラーナの首をギギラが捌く。
回避行動の遅れたラーナは首から血を垂らし、咳き込みながらギギラとの距離を取った。
「あ、バラン君のリーチが無いから殺し損ねた」
「俺のせいだって言うのかよ?!」
「アハハ~。冗談だよ、冗談。バラン君のお陰で分かった事もあるしね」
ラーナの首は気づいた頃には再生されていた。
悪魔の力があるのだ、あのレベルの傷が再生されてもおかしくないと考察しながらギギラは話かける。
「君、ラーナだっけ?」
「そうですが、何か?」
「君さぁ、この監獄に来る前は戦いと無縁だったでしょ。てか、人を殺すのだってこのコロシアムの中でしか経験してないよね」
「……へぇ、貴方、分かるんですね」
「ギギラ、人を見る目には自信があるからね。まぁ、女なんか観察したって面白くないけど」
ギギラの言葉を聞いたラーナは静かに笑いだした。
「えぇえぇそうですよ!!私、外の世界で喧嘩なんかした事無いですし、ましてや人殺しなんて恐ろしい事はしていません」
その笑いは次第に声を纏い、彼女の中にある狂気を帯びていく。
「なにせ私は、冤罪で死刑になってるんですから」
「冤罪?」
「ええ、そうですよ。だって私、誰にも被害を与えていないですから」
ラーナのその言葉に対し、観客達が罵詈雑言の言葉をかける。
なぜなら観客達にとって、ラーナの犯した罪は火を見るより明らかだからだ。
「私はただ、皆さんを救うためにこの力を得ただけなんですよ。それで死刑なんて、おかしな話ですよね」
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