転生少女と剣術大会3
大会の優勝者は、表彰式で現王から直接酒の入った盃を手渡してもらい、飲み干す事になっている。表彰式が始まり、現王が姿を現した。白に近い金髪を長く伸ばしており、後ろで纏めている。エルネストが現王であるレオナール・アベラールの元に向かう直前、アニエスは囁いた。
「……殿下、酒は、毒見とかされてるんっすか?」
「うん、そのはずだよ。皆口には出さないけど、僕が命を狙われている事は周知の事実だからね」
「……ならいいっす」
現王の側に行き、エルネストが盃を受け取る直前、レオナールは呟いた。
「……あの子が例の子か」
レオナールは、表彰台にいるアニエスを見つめていた。
「はい、僕の大切な人です」
エルネストは、笑みを浮かべて言った。
「かんぱーい!!」
その日の夜、アニエス、ブリジット、エルネスト、フレデリクの四人は、ルヴィエ邸で祝勝会をしていた。剣術大会の結果は、エルネストが優勝、アニエスが二位、ロックが三位だった。女性が参加してはいけないという決まりは無いので、この順位は揺るがない。
「それにしても、驚いたわ。アニエスが大会に選手として参加してたなんて」
ブリジットが笑いながら言った。
「顔が隠れてたし、絶対男だと思ってたもんな」
フレデリクも口を挟む。
「僕も、対戦するまで気付かなかったよ。アニエスが応援席に居なかったのは、僕と違うブロックで試合に参加してたからなんだね」
「そう言えば、エルネスト殿下。どうして対戦相手が私だってわかったっすか?」
「普段から君の素振りを見てたからね。上から剣を振り下ろす時の癖が一緒だって気付いたんだ。まあ、その他にも、推測できる身長とか、気付く要素はあったけど」
「そうっすか……」
「改めて聞くけど、どうして大会に参加したの?アニエス」
「……昔から剣術に興味がありましたから。放課後、こっそり剣術を教えてもらってたっす。それで、自分の実力を試してみたくなったっす」
「誰に剣術を教わってたの?」
「ロック様っす」
またロックの名前が出てきた。
「あの方、教えるのがうまいっすね。私に合った闘い方を見つけて、私にわかりやすいように教えてくれたっす」
「ふうん……やっぱり妬けるな」
「またそんな……」
アニエスは、苦笑した。アニエスは無表情な時が多いが、エルネストには色々な表情を見せてくれる気がする。
祝勝会が終わり、自室に戻ったアニエスは、ベッドに横になると、ホッと一息ついた。アニエスが剣術大会に出たのは、確かに剣術に興味があったからだ。でも、それだけではない。
ゲームの中でも剣術大会のイベントがあり、その表彰式で、エルネストの暗殺未遂事件があるのだ。盃の中に毒が入っていて、エルネストはそれを飲んで倒れる。命に別状はないが、倒れたエルネストをヒロインが看病し、好感度が上がるというイベントだ。
今回の剣術大会でも同じ暗殺未遂事件が起こるのではないかと思い、念の為エルネストの優勝を阻もうと試合に参加したのだが、結局アニエスの心配は杞憂に終わった。アニエスは、エルネストの無事に安心しながら眠りについた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます