亡霊のかつら

O.K

第1話:亡霊かつら

章 1: 新たな始まり

田中美咲は、幼いころから健康で明るい性格の持ち主だった。しかし、数年前に病気が発覚し、治療の影響で髪の毛が全て抜け落ちてしまった。美咲は髪を失ったことで、自信も失い、外出するのが億劫になっていた。


ある日、美咲は友人の佐藤彩香に誘われ、ショッピングに出かけた。彩香は彼女の元気を取り戻させようと、様々なアドバイスやサポートをしていた。その日の午後、二人はカフェで一息ついていた。


「美咲、どうしても髪が気になるなら、かつらを試してみたら?」と彩香が提案した。


「かつらか…考えたことなかったけど、どうやって選べばいいかわからないよ」と美咲は答えた。


「インターネットで探せば、いろいろな種類が見つかるよ。レビューも確認できるし、一度試してみようよ!」彩香の励ましに、美咲は少しだけ希望を感じた。


章 2: 不気味な通販サイト

その夜、美咲は彩香の提案を受けて、パソコンでかつらを探し始めた。いくつかのサイトを見て回る中で、ある一つのサイトが目に留まった。そのサイトは「ドリームヘア」と名付けられ、魅力的なかつらが揃っていた。しかし、どこか不気味な雰囲気が漂っていた。


サイトのデザインは古めかしく、商品説明もどこか曖昧だったが、レビューは驚くほど好評だった。「こんなに自然なかつらは初めて!」「まるで自分の髪のよう」と絶賛する声が多かった。


美咲は一瞬ためらったが、レビューの多さに安心感を覚え、一つのかつらを選んで注文した。数日後、かつらが届いた。


章 3: 新しい自分

美咲は早速かつらを試着した。その瞬間、まるで元の自分に戻ったかのような感覚に包まれた。かつらは非常に自然で、誰も偽物だとは気づかないだろうと確信した。彼女の自信は瞬く間に回復し、久しぶりに外出することを決意した。


友人たちは美咲の変貌に驚き、称賛の言葉を贈った。彼女はかつらのおかげで再び笑顔を取り戻し、日常を楽しむようになった。


章 4: 怪奇現象の始まり

しかし、かつらをつけ始めてから数週間後、美咲の周囲で奇妙な出来事が起こり始めた。夜中に誰もいないはずの部屋から足音が聞こえたり、電気が勝手に点滅したりすることが増えた。最初は疲れのせいかと思っていたが、次第に頻度が増していった。


ある夜、美咲は寝室で奇妙な夢を見た。夢の中で彼女は見知らぬ女性と話をしていた。その女性は、悲しげな表情で「私の髪を返して」と繰り返し訴えかけてきた。


目が覚めた美咲は、冷や汗をかいていた。何かが間違っていると感じ始めたが、具体的に何が原因なのかはわからなかった。


章 5: 恐ろしい真実

美咲は恐怖を感じつつも、かつらが原因ではないかと疑い始めた。彼女はインターネットで「ドリームヘア」のサイトを再度調べ、さらに深く探ることにした。


そこで、美咲は衝撃的な事実に直面した。サイトの隠れたページにアクセスすると、かつらが亡くなった人々の髪の毛から作られているという情報が記されていた。髪の毛の持ち主たちは、未解決の事件で亡くなった者や、失踪者のものだったのだ。


美咲は恐怖に震え、すぐにかつらを外して捨てることを決意した。しかし、その夜も再び夢を見た。夢の中の女性はさらに強い怒りを込めて「私の髪を返して」と叫んでいた。


章 6: 解決への道

美咲は彩香に相談し、二人で解決策を模索することにした。彩香の知り合いに霊能者がいることを思い出し、連絡を取ることにした。霊能者の先生、鈴木玲子は、美咲の話を聞いて真剣に対応してくれた。


「このかつらには、亡くなった方の魂が宿っているようです。その魂を鎮めるためには、正しい供養が必要です」と玲子は説明した。


美咲と彩香は、玲子の指示に従い、亡くなった方々のための供養を行うことにした。彼女たちはお寺を訪れ、かつらを供養し、祈りを捧げた。


章 7: 平穏の戻り

供養が終わると、美咲の周囲で起こっていた怪奇現象はぴたりと止まった。彼女は再び平穏な日常を取り戻し、かつらを捨てた後も自信を失うことはなかった。むしろ、彼女は自分の内面の美しさに気づき、それを大切にするようになった。


美咲は、自分の経験を通じて、外見だけでなく内面の強さと美しさが重要であることを学んだ。そして、友人たちの支えに感謝しながら、新たな一歩を踏み出していった。


彼女の物語は、困難に立ち向かい、自分を見つめ直す勇気を持つことの大切さを教えてくれた。

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