第11話 定期考査②

「…ということなんですけど、もし良かったら教えてくれませんか?」


 翌日、今日の朝、俺は花守さんとの登校時に昨日のことを相談した。

 結局昨日は花守さんにいろいろ用事があり昨日は別々で帰ってしまったので今日のこの時間に話すことになった。

 

「はい、良いですよ。私も一人でよりかは誰かと勉強したいですし」

「ありがとうございます」


 もちろん断れることも普通に考えていたが結果は快く了承してくれた。


「それでは場所などはどうしますか?」

「あー、場所は一応俺のバイトしてる喫茶店にしようかって考えてるんだけどいいですか?」


 昨日修哉とある程度場所とかは決めた結果、俺のバイトする喫茶店が帰りとか静かさとかが丁度いいんじゃないのかという理由で案の一つとして出た。


「そうなんですね、分かりました」

「場所は俺が案内しますけど、放課後ちょっと先生に教材の整理を頼まれてるいるので少し正門のとこで待っていてくれませんか?」

「はい、お願いします」


 話は驚くほどスムーズに進み、あとは放課後まで待つのみであった。


―― ―― ――


 放課後になって、俺は先生に頼まれた教材の整理を終わらせて正門へと向かった。

 正門に行くと花守さんが立って待っていてくれた。


「すみません待たせました」

「いえお疲れ様です。それで江崎さんのお友達はどちらに?」

「修哉は…なんか先に行くとか言って…」


 修哉に言ったら、『おし、俺は先に場所とって待ってる!』なんて言って先に喫茶店で待っているらしい。


「そうなんですか、じゃあ行きましょうか」

「うん」


―― ―― ――


 喫茶店はここからさほど遠くない。

 少し話でもしてたらいつの間にか着いてしまう。

 俺は喫茶店のドアを開ける。

 

「いらっしゃ…あれ智くん。今日シフト入ってたっけ?」

「あ、どうも千那瀬ちなせさん」


 俺たちが入店するとカウンターの奥から一人の女性が出てきた。

 彼女は塩島しおじま千那瀬さんでここで俺と一緒にアルバイトをしている大学生である。

 基本的にはとても明るく優しい性格でたまに変なことを聞いてくるがいい人である。


「いえ、今日は友達と少し勉強をしに」

「あー、なるほどね」

「てことで先に連れが待っているみたいなのでここで」

「おっけ、勉強頑張ってねー」


 本来ならもう少し話していても良いのだがあまり話しすぎると修哉がしびれを切らしそうなので、そう言って千那瀬さんとはそこで別れた。

 俺は先に待っている修哉を探すため周りを見渡すと、それらしき後ろ姿が見えた。


「待たせたな」

「お、来たな!さっそく教えてくれ!」

「はいはい。あ、花守さんそっちどうぞ」

「はい、ありがとうございます」

「ん?」


 俺は花守さんを席へと案内したのだが、何故か修哉は花守さんを見ると固まった。

 そして、突然立ち上がると俺の肩を掴んで『ちょっと来い』と言って俺を手洗い場の方へと連れていく。


「おい、聞いてねぇぞ!なんで花守さんいるの!?」

「ん?言わなかったか?」

「聞いてねぇよ!お前にやっと友達できたんだなって知っただけだよ!」


 どうやら俺はまだ最近できた友達が花守さんだったとは言ってなかったらしい。

 それにしてもそんなに早口になるまで驚くものなのか?

 別に隠してつもりはないが修哉に花守さんと友達に至るまでの経緯を話す。


―― ―― ――


「…てな感じだ」

「はー、お前ってやっぱいい奴だがバカだよな」

「え、どこら辺が?」

「いや、お礼として友達になってくれっていう変なこと言うやつお前ぐらいだろ」


 確かに大まかであるが自分で話してみてもやっぱりおかしいよな…。


「まぁでも、花守さんもお前の中身ちゃんと知ってくれたんだ。俺としては何故か嬉しいよ」


 突然いつもおちゃらけな修哉からこんなことを言われるとなんか変な感じがするが素直にそれを受け取っておく。


「よし、まぁこれはここまでにしてそろそろ勉強すんぞ!花守さんも待たせてるし!」

「あぁそうだな」


 ちょうど区切りの良いとこで俺たちは少し話し込んで花守さんを待たせている席に向かう。

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