第9話 登校

「あ、江崎さんおはようございます」

「えっと花守さん」

「はい?どうかしましたか?」

「これはあのメールと関係はありますか?」


 俺はマンションの外に出ると入り口のところに昨日ぶりである花守さんが制服姿で立っていた。

 普通こうなったら『どうしましたか』とかそういうのを言うと思うが、俺は少し違くなんとなくだがここにいる理由が多分俺だと分かっていた。

 何故そう思うかと言うとそれは朝とある出来事があったからだ。


 朝俺のスマホに一件のメールが送られてきた。

 スマホには『花守』と書かれていた。

 とりあえずスマホを数回タップして内容を確認する。


『おはようございます。突然ですが江崎さんは何時ごろ学校に向かうのですか?』


 俺の登校時間なんか聞いてどうするんだ?

 急に聞かれたことに疑問を浮かべる俺だったがとりあえず書くだけ書こうと思い時間を書いた後によく分からなかったので理由もつけて送る。


『七時四十分とかだけど、どうしてそんなことを?』

『後でお話ししますよ』

『え?どうしてですか?』

『多分言ったら、いやーそれは…、とか言いそうな気がしますので』


 そんなこと言うようなやつなの?

 余計気になってしまうが言ってはくれない。

 こうして俺は謎の疑問を浮かべたまま朝の支度をしていた。

 これが今日の朝あったことだ。


「はい、ありますよ」

「それじゃあ理由を聞いても?」

「それは江崎さんと一緒に登校したいからです」


 うん、確かにこれは基本、というかいつも一人である俺に突然言われたらえー、それは…とか言いそうだ。


「えっと何故一緒に?」

「私いつも一人で登校しているので誰かと一緒に行きたかったのと江崎さんと同じマンションだとわかったからです」

「それ、俺で良かったの?花守さんいつも話してる友達いるけどその人達は?」

「あの二人はここと反対の方向に住んでるので」


 あー、と俺は納得する。

 確かにそれだと一緒に行くことは無理でたり、さらには住んでいる場所が同じ地区どころではなく同じマンションともなれば


「それとも一緒は嫌ですか?」


 そういうと花守さんは少し悲しそうな顔になる。

 そんな顔されると断れるわけないじゃん…。

 でもまぁ、別に一緒に登校するのは全然構わないし、何なら一部の親睦会として考えると断る理由など特にない。


「そんなわけないよ。花守さんといると楽しいし」

「!そうですか。それじゃあそろそろ行きましょうか」


 花守さんは嬉しそうな顔をしてから、くるりと学校のある方向へと歩き出した。

 ちなみにだがこの日を境に俺と花守さんは一緒に登校するようになったのと、周りの視線が増えていたように気がした。

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