Episode.7

具体的にどうやって能力を発動するのか、他者に説明するのは難しい。


ある時、偶然にもそれができることに気づいたのだ。  


パソコンなどの機器に触れることで、直近に使われたデータを脳内で閲覧することができる。


ただし、そのデータが複雑なものであるほど、鮮明なものにするには時間がかかってしまう。解析や復元の様な過程が必要なため、そのあたりは各種デバイスによる読み込みと似たようなものかもしれない。


超能力というものは、能力の特性によって出力の仕方は多岐に渡る。


映画やアニメのように目から光線を出したり、拳から刃が生えることはないが、人によっては雷や炎くらいは出せたりもする。


ただ、そういったド派手な能力は、危険視されるか軍事目的に使われておしまいだ。


やはり重用されるのは今の俺・・・が使っているような能力で、他の中途半端なものは微妙な扱いをされてしまう。データ収集のための被検者、もしくは死んだ方がマシと思うような日々を送らされることもあるらしい。


ただし、それは強大な能力を持つ者も例外ではない。遺伝子や脳波、身体的な能力から精神耐性まで、あらゆる検査の被検者とされる。研究者のやり過ぎによって、廃人となるケースも散見されると聞く。


だから俺は従順なフリをして、ギリギリのラインで使い勝手の良い能力を持つ男として生きる道を選んだ。


もちろん、その事実を知る者はいない。


同じ施設に収容された他の能力者がその事実を知った場合、情報は速やかに共有されてしまうだろう。


彼らにしてみれば、同じ立場の人間が難を逃れるために偽装しているのだ。いわば、裏切者として映るはずである。


自分が同じ立場でもそう思う可能性が高いのだがら、そこは仕方がない。


ただ、もしバレたとしても、従順な被検者になどなるつもりはなかった。


今の諜報員のような活動も、吐き気がするような生活から抜け出すための一過程だと考えている。


俺たちの体内にはチップが埋め込まれ、それによって所在を定期的に捕捉されていた。非接触型ICと同様の仕組みだが、IDカードや自動認証とは異なる特殊な周波数が用いられており、遠隔でも1キロメートル程度の誤差で所在が判明する。


逃走の抑止、そして他組織に身柄を拘束された場合の対策だそうだ。



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