Episode.5
ほどなく顔認証もクリアする。
俺の能力とは、刹那的ではあるが様々な事象をコピーすることにあった。
少し前にこのセキュリティを使用した人物の静脈と顔画像をシステムからデータとしてコピーし、読み取りシステムに投影もしくはカメラに誤認識させることができる。
端子などを必要とせず、手をかざすだけで記憶媒体に働きかけることができるため重宝されていた。もちろん、キャッシュやRAMメモリにも対応することができ、生命体の脳や網膜の映り込みまでカバーする。
網膜は映像を電気信号に変えて送っており、脳はそれを変換して認識しているのである。少し大雑把な言い方をすれば、デバイスも
コピーする能力に関して重要なのは、いかに元の形をそのまま投影、もしくは誤認識させるかというところである。
右脳の働きが高水準だというのが条件となるが、一般的な働きとは根本的に違う異質さを備えていた。
もともと右脳の記憶容量は左脳の10倍以上ともされており、表面意識を司る左脳と比べて無意識に運用する右脳の記憶領域は計り知れないそうだ。
それを最大限活用できるかどうかは、先天的後天的な要素が多分に影響する。もちろん、これは超能力を持つ者の適性を大きく左右する要素といえるだろう。
特に何の問題もなく、セキュリティを突破した。
部屋へと入り、狭い通路を抜けていく。
左右にはファイルケースが本のように並べられた棚が置かれている。中身は紙媒体よりも記録用メディアが大半だろう。当たり前のことだが、紙よりも経年劣化に強く記録容量も大きい。ただ、背表紙には何の記載もなく、棚にはアルファベットと数字の組み合わせによる表記しかなかった。
今回の目的物がこのファイルのどこかにある可能性を歩きながら考えてみる。
ファイルの厚みは様々だが、並んでいるファイルの色には何らかの規則性がありそうだ。例えば、赤のファイルが何冊も続くこともあるが、他の色を挟んだ同じ赤のファイルの位置は複数の色のファイルが均等数で並んでいる。
赤赤赤青黄黄緑白紫紫紫黒赤や、赤青青黄緑緑白白紫黒黒赤赤といった感じだ。
赤青黄緑白紫黒赤の8色で案件ごとに分け、データ量が多いものは連続した同色のファイルでまとめているのか。
どうやら、棚の表記もその8色の組み合わせごとに貼られているように見える。
なるほど。
あらかじめ、どの表記の棚にある何色のファイルが必要なのかを知らなければ、安易には持ち出せないということか。
すべてをデバイス内蔵のディスクに記録していると、ハッキングによる漏洩を防げないと危険視して対策を施したということかもしれない。
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