連邦の制圧と魔女(前編)
ハビエル王国軍は、攻めてきたヴァリラ連邦軍を退けた後、勢いをかって進軍を続け、連邦国の旧公爵家の二つ目の都市を落とすことに成功したのだが、三つ目の都市に向け進撃中にヴァリラ連邦が反撃に転じたため、ハビエル王国の快進軍は停まり、結局は停滞することになった。
ヴァリラ連邦の都市は全部で四つある。数千人が暮らす街を、都市と呼んでいる。四都市は旧王国の四公爵家の各領都と呼ばれていた町だった。
この四都市には、性格の違いがある。文で治められた町と、武で治められた町だ。
ただし武に強い都市は脳筋の武辺一辺倒の当主が治める都市で、武に強いものが出世しやすい町で、文は軽視される傾向にあったことと、ハビエル王国に一番近く、ドルイド王国にも近いという立地から、他国の侵略を警戒する意味での位置づけになっていったことで、武で治められていると思われていただけという面もあった。こういう点でどちらかと言えばヴァリラ連邦は文治の国で、軍治至上主義と自他ともに考えていなかった。武に傾倒する脳筋当主はこのヴァリラ連邦の傾向を常々苦々しく感じてきたのだが、ハビエル王国を攻撃して兵を失ったドルイド王国の情報を掴んだと同時に、深く情報を探らせることもなく軍事力が落ちたと単純に考えてしまった。まったく脳筋と言えばそうなのだが、情報を重要視する他の当主達では到底しない情報を精査しない姿勢が悲劇を招くことになる。当主は他の当主達へ断りもなくドルイド王国に侵攻を命じてしまった。あわよくばドルイド王国の領土を削り取れればと考えて居た様だが、一公爵家の兵だけで良いと考えたその判断は遅きに失したと言える。
元々文治の国であったはずの挙国一致となったドルイド王国の反撃に遭い、ヴァリラ連邦軍は予想外の敗戦で逃亡する中でハビエル王国へと意図的だか無意識かは不明だが侵入し、国境の村を襲撃し狼藉を働いた。未だアストリットの能力に懐疑的だった国王に請われたアストリットが国境まで出かけてヴァリラ連邦軍の行為に激怒したアストリットに兵を消滅させられることになった。とは言ってもアストリットは事前にヴァリラ連邦側の所業を大まかには掴んでいて、どのような目にあわせようかとある程度考えていたようだ。
当主は自家の兵を消滅させられたことを強く恨み、今度はハビエル王国へと侵攻したが、またハビエル王国の魔女に軽くひねられて、反対に侵攻されてしまうことになった。そうして結局はヴァリラ連邦の中では一番最初に都市を失った公爵家となった。それは相当な屈辱であっただろうと思われる。そうして残りは文が強い都市しか残っていなかったために、侵攻したハビエル王国軍の威勢は当初は相当良かったようだ。
ハビエル王国内でも軍の進撃について連日盛んに宣伝した所為か、民たちはヴァリラ連邦の制圧の期待に相当沸き立っていた。そういう機運の中、ハビエル王国軍は二つ目の都市を制圧したのだが、ここで軍に驕りが出たのか、制圧された都市を治める当主を拘束することができなったことで、軍の侵攻に陰りが出始めた。
軍は取り敢えず三番目の都市に進軍していたのだが、ヴァリラ連邦国内の敗残兵を逃亡した当主と残りの当主二人が中心となり、取りまとめて狭隘地に陣地を構築し対抗し始めると、途端に進軍が停滞してしまった。
ハビエル王国の民たちの目が自軍の弱さに白い目を向け始めたのだが、実際のところ、武における魔女の力の突出を恐れた国王は、当初は魔女の力を当てにしないで、ハビエル王国の軍事力の向上を目指していた。そのため、国王はヴァリラ連邦侵攻に魔女アストリットを従軍させようとはしていなかった。つまりは進撃に勢いがあり防衛線を構築できなかったヴァリラ連邦の混乱に都市を二つ落とすことはできたが、元々自軍の実力はヴァリラ連邦軍とハビエル王国軍は大差がなかったと言える。そのために防衛線を下げて狭隘の地に陣地を構築したヴァリラ連邦軍の陣をハビエル王国軍は対する場所に陣地を構築しただけで、何の工夫もなく攻めあぐねるだけだった。無為に時間を過ごし始めた自軍の姿に国王はたぶん頭を抱えたことだろう。せっかく魔女に頼らなくてもハビエル王国は軍事に秀でることができると宣伝できたというのに、またアストリット、魔女に頼らざるを得ないことに、そして、魔女の国における比重が高まることを国王は恐れなくてはならなくなった。
しかし国王がもう少し長い対峙に我慢できていたら、国民も侵攻に時間がかかることを理解していたら、そして帝国の侵略の足音が聞こえてこなかったら、魔女に頼りきりとなってしまうハビエル王国の国家運営は影を潜めたのかもしれない。こうしてハビエル王国軍の軍事力向上の機会は遠ざかってしまった。
その日、ハビエル王国の兵士たちは、戦場には似つかわしくない一台の控えめではあるが軍隊には無縁に見える装飾で飾られた四頭立ての馬車と騎兵たちが、静かに陣地に近寄って来たのをぼんやりと眺めていた。
先頭にいる騎兵は、どう見ても王国の正式な騎士に与えられる略装に身を固めており、騎士団に所属していると思われた。ハビエル王国の騎士団は王都に詰めて国王及び王族を警護する者たちであり、その騎士が馬車の露払いをしているということは、馬車に乗る人物は王族か、それに準じるものであるということになる。
元々近衛騎士団は内務大臣下の組織であり、現在は内務大臣は国王が兼務している。アストリットが自らの家の領地を増やそうと、駄目元で国王に隣の貴族の領地を強請ったところ、まさかの国王が許可したためにそのとばっちりを食らったのが、内務大臣バンデラス伯爵だった。アストリットの家ベルゲングリューン家の領地のお隣の貴族は内務大臣のバンデラス伯爵だった。
元々国王は内務大臣には領地を持たない宮廷貴族が政を行うべきではないかと考えていたこともあり、バンデラス伯爵を宮廷貴族とするために領地を取り上げ、それとともに領地と同じだけの年金を与えるつもりだったのだが、バンデラス伯爵は領地に未練を持ち、内務大臣の地位には領地持ち貴族が成るべきだと大っぴらに不服を唱えた。
バンデラス伯爵の言葉に、国王は一度はバンデラス伯爵を教え諭したが、バンデラス伯爵が考えを改めることはなく、ついに怒った国王はバンデラス伯爵を更迭してしまった。さらにバンデラス伯爵の爵位を男爵位にまで落とした。ただ、内務大臣と言う職を全うしていたことを評価して、北の痩せた地域の王家の直轄地をバンデラス家に与えることにはしたのだが、元内務大臣のバンデラス男爵の禍根は残った。その恨みは国王ルシアノ・ハビエルと、そしてアストリットに向けられることになる。しかしながら、アストリットにはそのような恨みなど痛くも痒くもない。どれだけ恨みを向けられ、私兵を差し向けられて攻撃されたとしてもアストリットは退けることは容易だとわかっている。
そして今までの内務大臣の地位は暫定で国王が勤めることとなった。人選がされれば、内務大臣には宮廷貴族から選ばれることだろう。
騎士たちの一人が騎馬を急がせて陣地の門前まで駆けてくると、大声で怒鳴りたてた。
「開門!開門せよ!我々はハビエル王国近衛騎士団だ!陛下の命を伝えるため罷り越した!疾く門を開けよ!」
騎馬がイライラとハミを咬み、四肢を踏み鳴らすのを手綱を引いて宥めながら、乗りこなそうとしているのを脇目にし、馬車は進んだ。
騎士たちが散開して、近付く馬車を護るように騎馬を動かしている間に、門がようやく開けられた。
「・・・開門、感謝する!」
騎士がもう一度怒鳴りたてると、騎馬の腹を蹴る。騎馬がまた駆け出し、門を潜る。
馬車がゆっくりと進み、門を潜る。最後に散開して周りを警戒していた騎士団が門を潜り抜けると、門はまたゆっくりと閉まった。
馬車は陣地の空間に馬車を止めた。明らかに騎士団とは違う衣装に身を包んだ髪の長い騎兵が馬車を護る位置に騎馬を止め、周囲に注意を配っている。その四人は統一されていない装備に身を包んでいる。一目見て馬車の主の私兵だろうと思われた。
馬車の中から何か声がすると、その四人の女性騎士が軽く頭を下げ、その場で騎馬から地に飛び降りる。
四人の女性騎士は馬車の扉に左右に整列し立ち並ぶ。その中の一人が馬車の扉に手を掛け、ゆっくりと開く。反対側のもう一人の女性騎士が手を差し出した。
馬車の扉から装飾のない簡素に見えてその実上品な仕立ての騎士服姿の女性が姿を現した。差し出された女性騎士の手に自分の手を置き、男性用の長剣かもしれない、ふくらはぎの下までの長さの剣を手に掴んだまま、馬車から女性が地上に降り立った。普段から着慣れているのかもしれない、妙にその騎士服姿が似合うその女性はどう見ても貴族の雰囲気を漂わせていた。その令嬢は二三歩前に進んでから足を止め、腰に巻いた剣帯に手慣れた様子で長剣を吊るしながら、興味深そうに周囲をくるりと見回した。
さらに令嬢の後ろから、華美過ぎない落ち着いた色合いのドレスに身を包み、貴族の雰囲気を漂わせた成人の女性が女性騎士の差し出された手に手を置きながら続いて降り立った。その女性は素早く進み、ぴたりと令嬢の後ろの位置についた。
四人の女性騎士が騎士服の令嬢とドレス姿の女性を囲って警護に立った。
「誰だ?お前らは」
馬車から降り周囲を遠慮なく見回し始めたアストリットに近付いて、誰何したものがいる。元々はかっちりとした服だったのだろう、だが今は少しばかり着古して草臥れた感じの軍服に身を包んだ初老の男が、供回りと見られる将兵たちと近寄ってきた。
先ほど開門を怒鳴った騎士はちらりと明らかに場違いの騎士服の女性の前に出ようと騎馬を進めようとしたが、その女性に身振りで止められ、騎馬を止める。そのまま器用に騎馬を後退させた。
女性がにこりと笑い、前に出る。
「・・・あなたがヴァリラ連邦侵攻軍司令官であるブアデス子爵?」
「・・・ああ、そうだが?」
怪訝な表情をした子爵が探るようにアストリットを見つめていた。
「わたしはアストリット・ベルゲングリューン」
「・・・」
アストリットが右腕を胸に当てて頭を下げるという騎士礼をとった。
「この度ハビエル王国軍、ヴァリラ連邦侵攻軍の臨時総司令官と任命され赴任しました」
アストリットが言上すると、子爵の表情が微妙に変化した。
「・・・そ、そうか・・・だが、お前のような若い娘が戦場で生き残れるとは思えんな。悪いことは言わん、そのまま揺られてきた馬車に乗って帰ったほうがよろしかろう」
アストリットがその言葉を聞きながら騎士の礼を止め、手を斜め後ろに差し伸べた。
いつの間に騎馬から降りていたのか、騎士がアストリットの後ろに立っており、懐から出した金糸の房飾りがついた紐で丸められた書状がその手に置かれる。
その書状を目の前に立つブアデス子爵に差し出した。
「・・・あなたへの命令書です。お読みなさい」
その書状を目の前で紐を解き、中の流麗な文字に、ブアデス子爵が目を走らせた。目を見開き、何度も読みなおす。
「な・・・こんな、娘が臨時とはいえ、総司令官だと・・・」
思わず口走るが、アストリットはそのブアデス子爵の様子を面白そうに眺めているだけで、何も言うことはなかった。
やがて、放心したように呟く。
「・・・まったく信じられんことに、・・・これは間違いなく、陛下の書かれた任命状だ・・・」
その言葉にアストリットがまたにこりと笑う。
「その書面の一番下に書いてある文章を読みましたか?」
「・・・」
ブアデス子爵は苦虫を噛み締めたような顔でアストリットを見返しながら、頷いた。そこには、一向に攻勢に移らない司令官であるブアデス子爵に対する厳しい叱責の文字が並んでいた。
「・・・お国のお偉い方は少々怒っておられるのですよ。そして、国民たちもです。戦勝で勢いのあるはずの我々の軍が、なぜヴァリラ連邦の陣地を攻めることもなくただ対峙するのみで動こうとしないのかと。
・・・まあ、戦というものは勢いだけで勝てるものではないというのに、皆、ずいぶん勝手な言い分だと私は思いますが」
ブアデス子爵はアストリットの笑みに憮然としながらも、思わず頷く。ただ内心、軍の評価が、いや自分の評価が相当低くなったのは確かだろうと考え、自分の前途に暗雲が垂れ込めてきたと感じざるを得ない。
「・・・」
その子爵とは反対に、アストリットはにこやかに周囲を眺めまわして、言葉を続ける。
「・・・子爵が怠慢だとは私は思っておりませんが、そういう見方は王都ではされているので、まずはこの任命書に従ってください。・・・そこにも書かれている通り、私は臨時の司令官です。・・・睨み合っている場合じゃない、はやく進んで町を占領しろと上は言っています。
・・・文句を言ってはいけないのでしょうが、侵攻が遅いと思っている人がいるため、私はここに来ることになってしまった。本心を言えば、私としてはこのようなところまで来るつもりはなかったのですよ。このハビエル王国は私、アストリット・ベルゲングリューンの力を過大に評価しているようで、行けと言われれば行かざるを得ないのですがね。・・・まあ、それなりの見返りはいただくつもりです。
・・・まあ、あの陣地をどうにかするのが私の役目です。その役目が終わったらもう帰る予定です。・・・そのあとはブアデス子爵のお好きなようにどうぞ」
ブアデス子爵は不愉快そうに顔を歪めたが、にこやかなアストリットの表情を見て辛うじて表情を取り繕い、国王の書状を受け入れることにした。結局ブアデス子爵は魔女であるアストリットの機嫌を損ねないように、好きなように陣地内を歩き回ってもらってよいと告げ、それを将兵たちに周知した後、同時にアストリットの天幕を部下の将兵を移動させて用意した。国王に任命された臨時とはいえ総指揮官に対する礼儀は果たさなければと考えたからであった。アストリットへの待遇に不満を持たれて国王に報告されて痛くもない腹を探られるのは勘弁してほしいと、仏頂面で自分の宿舎に引きあげた。
『あの陣地を抜くことなど出来はしない。あんな小娘、泣きべそかいて逃げるだろうさ』
そう考えながら、宿舎の扉を閉める。ただ、その考えは本当は子爵の願いだったのだが。
このように、アストリットは国王の命で戦場に赴き、ヴァリラ連邦侵攻軍の指揮官の一人になったわけだが、ハビエル王国軍将兵たちは、騎士服を着ているが貴族令嬢然としたアストリットを見て、一概に冷笑していた。ブアデス子爵麾下の将兵たちは、ヴァリラ連邦侵攻で苦楽を共にしてきたという仲間意識を持ち、結びつきを強くしていた。彼らは、自分たちの苦労も知らないくせにとアストリットを、ヴァリラ連邦制圧の栄光を横取りするつもりの薄汚い性根の悪い泥棒女だと蔑んだ視線を向けていた。
アストリットはそのような将兵たちの考えなどは百も承知でいたが、その視線に何一つ気にした様子もなく、陣地内を歩き巡りだした。
アストリットはブアデス子爵に語ったように、本当にこのようなところに長居するつもりなどなかったが、軍隊が戦時に構築するという陣地に興味があった。陣地の構え方を自分の知識としたいと思い、せっかく来たのだからと色々陣地の内外を見て回り始めたのだった。
アストリットは丸太を地に打ち込んだ柵に触れたり、馬防柵の隙間から敵であるヴァリラ連邦の守備兵たちの陣地を覗き込んだりしている。それを長い対陣で気が緩んでいるのだろう、アストリットの行動をただただ突っ立って見ながら、兵士たちがひそひそ話している。
『・・・なにやってんだ?あれは』
『さあ・・・よくわからん』
『・・・だが、あの女を怒らせないほうがいいぞ』
『何言ってんだ?あんなバカな女、戦になればビビッてチビルだろう?』
『ぎゃははは、ちげえねえ』
『・・・おい、止めとけよ。・・・忠告するぞ・・・。あの女、陛下からの任命状を持ってきてんだぞ。・・・チクられたら最前線配備にされて、捨て駒にされるぞ』
『・・・そうかよ・・・』
今まで黙って従って後ろについていた四人の護衛騎士たちが兵たちのひそひそ話を耳にして、彼らを睨みつけている。侍女イレーネが、アストリットの行動に困惑して思い切って声をかけた。
「・・・お嬢、いえ、魔女様・・・何をしておられるのです?」
「・・・陣地の作り方を勉強してる・・・」
「・・・はあ?」
そのアストリットの答えに一斉にため息をつく侍女と女性騎士たち。
「・・・おじょ、魔女様、あのヴァリラ連邦の軍を打ち破りに来たのではないのですか?」
「・・・そうだよ・・・その通り。それが依頼だからね・・」
そう返しながらもアストリットは相変わらず、陣地の中を隈なく見て回る。その主人の姿に侍女と女性騎士たちは軽く肩をすくめてあとに従うことにした。
やがて満足したのか、アストリットはブアデス子爵が部下に命じて用意されたあまり大きくない自分の宿舎とされた天幕に向かった。
天幕の外にはアストリットをこの陣地まで護衛してきた近衛騎士たちがアストリットの身を案じて立哨している。近衛騎士たちは国王からの命と、そして国境の村での出来事を覚えている者が多く、アストリットの機嫌を損ねると何をされるかと恐怖を感じていた。そして自らの保身のためには、アストリットによく思われようと忖度している者が多い。率先してアストリットの安全に注意を払っていた。将兵がアストリットを襲うなどあったとしても、アストリットが後れを取るなど考えられないが、その時にもし万が一アストリットが怒りを自分たちに向けたら、完全なとばっちりだと、騎士たちは思わざるを得ない。
『巻き込まれて死ぬのはごめんだ。少なくとも巻き込まれないように、魔女殿に見せておかなければな。死にたい奴はご勝手に、だ』
そのような近衛騎士たちの心情を知ってか知らずか、アストリットは立哨する近衛騎士たちの労を笑顔でねぎらってから天幕内に入っていった。
アストリットは天幕内にあった丸椅子に腰かけて、近くに置いてあったテーブルを片手で引き寄せた。辺りを見回したアストリットが簡易的なかまどを見つけると独りでにそこに火が入り、薬缶が現れて火にかけられ、引き寄せたテーブルの上に六人分のカップと茶器が並んだ。
「・・・ちょっと一服しよう」
アストリットのその言葉に、イレーネが動き、アストリットがどこからか取り出してテーブルに置いた茶葉を茶器に入れる。
「皆の分も入れてあげて、お願い」
「はい」
侍女と護衛の女性騎士を含んだ六人の休憩が始まった。
「・・・それで、これからどうされるのですか?」
アストリットの後ろについて陣地内を歩き回った護衛の一人カルラ・イグレシアが尋ねる。
「・・・。・・・いい香りだよねえ・・・」
アストリットがお茶の香りを嗅ぎながら口に含み、のんびりした口調で呟く。
「・・・」
護衛の女性騎士たちが顔を見合わせる。
「大丈夫なんですか?」
「・・・」
その言葉にアストリットが持っていたカップをテーブルに置く。
「・・・試そうと思ってることはあるから、それを試してみるけどね」
テーブルの上に茶菓子が現れ、アストリットがそれをつまむ。
「・・・でも、お茶だけはしておきたいじゃない?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます