第32話 地雷が来る

 生徒会選挙のある六月までは、大抵暇な時間が続いた。

委員会に顔を出して活動したりはしたが、この学校の治安が良いのか、

生徒会がしっかりと取り締まっているからかは知らないが、

大きく風紀を乱す出来事は特に無かった。喜ぶべきことだが、

個人的には優良さの点数を稼ぐことが出来ないので複雑ではある。

 無論、学生の本分と言ってもいいことの一つである中間テストは

あったが、学業という基本でつまずいていては生徒会長の座には届かない。

勉強は正直好きでは無いが、これも私の欲望を叶えるためである。

学年内の成績上位に入り、私の名前を少しでもアピールできれば尚良い。

しかし、流石は格式高い女学院。自由度が高いとは言え、教養レベルの

高い才女達が集まっている。私の順位は…二十位。悪くは無いが、

本音を言えば、ベストテンには入っておきたかった。少々の悔しさを

表情ににじませ、掲示板を後にしようとした時、後ろから声を掛けられた。

「ねえ!あなた、北見海香でしょ!ちょっと、話があるんだけど。」

 この女学院には少々風格が合わないような青みがかったツインテール。

今流行りの地雷服と呼ばれるその目立った姿から、キンキンする声が出ている。

ちょっとむっちりしている太ももを弾ませて、私に歩み寄ってきた。

「…誰?中学の知り合いには、こんな子いなかったけど…。」

それを聞くやいなや、私の耳元に寄り掛かってこう呟いてきた。

「知ってるわよ。あなたがどんな下卑げびた目的で生徒会長になろうとしてるのか。」

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