第27話 星は天にあり

 いきなり敗退宣言。言葉が出る余裕も無く、ただ呆然ぼうぜんとした表情を

とるしか出来なかった。その顔を見てかは分からないが、生徒会長は続けた。

「青乃さんには劣りますが、私も情報を集めていただく方を抱えておりまして。

貴女のお話をうかがってから、調べ上げて貰いましたの。」

手にしていた茶封筒から出てきたのは、私の顔写真と文章がびっしり。

「北見海香さん、七星ななほし第三中学卒業…。こちらは何人か顔馴染みが

おりますの。生徒ではなく、先生方に。この学校にて第七十一代生徒会長就任。

この一年だけの着任ですのね。何が貴女を突き動かしているのかは

解りかねますが、その時の思いから『生徒会長になる』ということに

強い意志、執着…にも似たものがあるようで。しかし、海香さん。

その『思い』のためにしては、この学園にお持ちになった志は少々、

荷が重いかと存じます。此方こちらでの生徒会の特権についてはお聞きに?」

「多少は…。話を聞いたというだけで、詳細まではそこまで。」

「この蒼星女学院の生徒会の権限は、全てに及びます。普通校則というものは、

先生方が最終判断を下すというものかと思いますが、ここでは全て生徒会が

一決いっけつして良いものとなっていますの。その他、授業内容や学園の景観けいかん

果ては生徒個人にも。勿論、ある程度の法の範疇はんちゅうにおいてですが。

しかし、人々はこう思うのです。『ここの生徒会に入れば、学校を支配出来る』と。

そのような低俗ていぞくな思考で生徒会を運営されては、学園の風紀、風格、評判、伝統に

泥を塗るというものですわ。貴女のその意志は大層立派なもの。けれど、

『この学園の自由を背負う』という任は、なかなかに大きなものですわよ?

だからこそ、桐生院家令嬢として全てを磨いてきたこの私がこの任に就くのは、

『選ばれる』というよりも、『自然なこと』ではないかしら?」

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