第25話 突然の好機

 「ちょっ…!いきなり何?生徒会長だよ!?これからの予定なんて

いつもハードなの!たかだか一人の生徒に、時間割くことないよ会長!」

副会長が叫んだ。だが、一理ある意見。『生徒A』に割く時間があるものか。

それを承知で言っている。もし断られたらそれまで。この生徒会長に

こんなに近付く事も少ないので、一瞬のチャンスは出来るだけモノにしたい。

 「まあ!いいですわね。今日はもう少々の用を終えるだけですの。少し

お待ち頂ければ、すぐにでも場をご用意致しますわ。」

意外とあっさり答えが返ってきた。ドッキリかと思うくらいに。

「先日の件でお話を聞いた時点から、私気になってましたの。

私という存在がいても尚、生徒会長になりたいと豪語する北見海香さん。」

 『北見海香』として存在が知られていた。しっかりと記憶に留められたようだ。

「会長。まさか、私達に業務を丸投げするおつもりで?」

「…最悪。帰ってゲームしたいんだけど。」

役員が愚痴をこぼすも、生徒会長は自分本位で進み続ける。

「まさか!全てを一任するとは言いません。ある程度まではちゃんと

たずさわります故ご心配なく。仮にも役員。私が選んだ方々ですわ。

とどこおりなく出来ますわよね?」

生徒会長の柔和な、しかし圧のある一声が廊下に響き渡った。

私にも感じられた。優しそうな顔の中に秘めた、生徒会長としての

プライド。職務を果たす気概。ご令嬢は、中身もしっかり完璧だった。

「では、隣の空き教室でお待ちを。他の皆様にはお帰りいただきましょうか。」

膨大ぼうだいな情報量で困惑する姉妹に今回は同情する。無理もない。

「ごめんね。今日のところはここまで。神戸先輩、事情は委員長に。」

「…承知しました。お二方は私にお任せあれ。」

明日は質問攻めになるだろうな。まあ、明日のことは明日考えればいいか。

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