短編・ショートショート
京葉知性
面倒事
「面倒なことを全てなくしたいんだ。博士、できるかな?」
「お安い御用じゃ、ほれ、これで面倒事は無くなった」
「何が無くなったんですか、博士」
「労働じゃ、もうお前さんは働くことなく一生暮らすことが出来るぞ」
「ありがとうございます! 博士!」
男は満足して帰って行った。
数ヶ月した後、男がまたやってきた。
「博士、面倒なことは無くなったと前回仰られましたよね」
「ああそうじゃ。わしが言ったからには面倒ごとはもう無くなったはずじゃが」
「いえ博士、まだ面倒なことが沢山あります、例えば移動するのが面倒くさいです」
「そうかそうか、移動が面倒くさいのか。ならわしが移動を念じるだけでできるようにしてやろう。ほれ、これで面倒事が無くなった」
「ありがとうございます! 博士!」
男は満足して瞬間移動した。
数日後、男はまたやってきた。
「博士、面倒なことは無くなったと前回も仰られましたよね」
「ああそうじゃ。わしが言ったからには面倒ごとはもう無くなったはずじゃが」
「いえ博士、まだ面倒なことが沢山あります、例えば娯楽を享受するために能動的であるのが面倒くさいです」
「そうかそうか、娯楽を能動的に享受するのが面倒くさいのか。それならわしが能動的でなくとも娯楽を享受できるようにしてやろう。ほれ、これで面倒事が無くなった」
「ありがとうございます! 博士!」
男は満足して娯楽を享受した。
数時間後、男はまたやってきた。
「博士、考えることが面倒くさいです」
「そうかそうか。実はわしもお前が面倒くさかったんだ」
博士の面倒事は無くなった。
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