第2話

 俺は歩いた。

 だが、曲がり角を曲がると目の前にいたのはキャサリンだった。


 マッチョな体のオカマ。

 2メートルほどある身長。

 パツンパツンの魔法少女コスプレ。

 そしてマジカルステッキはこん棒に見える。


「きゃああああああ! 助けてええん! モンスターが怖いのおん!(裏声)」


 そう言いながらパーティーメンバーを両脇に抱える。

 そして2人をスライムの群れに投げ入れた。


「ふんぬ! 私をモンスターから守てくれるなんてえん、3人全員マジ白い王子様あん!」


 3人がモンスターに囲まれる。


「3体同時は無理! うああああああああああああああああああ!」

「ゴブリンも来たああああああ! フカシ! 助けてくれえええええ!」

「俺達友達、いでええええ! うああああああああああああああああああ!」


:フカシ、助けるな。

:こいつらが逆の立場なら助けないだろう。助けるのは駄目だ、それにMPが無いだろ?

:キャサリン相手に新人が助けに入っても無理だぞ、あいつ奥に行ける冒険者でも勝てないから。


「あらあなたあん、ゴブリンの攻撃を受けたわねえん。これは緊急事態よおん。魔法少女である私のマジカルキッスで癒してあげるわあん!」


 キャサリンが信じられない速度で移動した。

 

 ドンシュン!

 ガシ!


 パーティーメンバーを掴んだ。


「離せ! 離せえええええええええええ!」

「あらん、シャイボーイねえん。じゅるり」

「うあああああああ!!」


 ぶちゅううんあ!

 超濃厚キスはているだけで鳥肌が立った。


「がぼおお! んんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんん!」


「美味しかったわあん、次はあなたねえん」

「ひい! お、俺は大丈夫、です、あそこにいるフカシが」


「遠慮はダメええん。ぶちゅううんあ!」

「んんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんん!」

「あなたも大変な状態ね。すぐにマジカルキッスで治療が必要よおん!」

「げ、元気です、ああああああああああああああ、んんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんん!」


 3人がキャサリンに捕まりキスで強制回復キッスを食らった。

 

「フカシ! 助けてくれ」

「フカシ、同じパーティーだろ!」

「フカシいいいいい、なんとかしてくれえええええええええええええええ!」


 キャサリンが俺の方を向いた。


 ぐるん!


「ひい!」


 キャサリンに強者のオーラを感じる。

 剣士3人で無理なんだ。

 MPが切れた俺には勝てない。


「あらん、あなた、可愛い顔してるわねえん。4人の中で一番好みよおん。じゅるり!」


 ぞわぞわぞわぞわ!

 危険を感じて後ろに下がるとキャサリンが歩いてくる。


:逃げろ! MPが無い状態では何もできない!

:まずいぞ! フカシ、逃げろ!

:逃げてください! フカシ君おファーストキスを奪われてしまいます!


「あらん! あなた、MPが枯渇しているのよねえん。その苦しさ、マジカルキッスで癒してあげるわあん!」

「い、いえ、け、結構です」


 俺は後ろに歩きだした。

 ドローンと浮きうさも付いてくる。


 そしてその後ろからキャサリンが追ってきた。

 俺は全力で走る。


「ひいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!」

「まってええん! おいてかないでえん! じゅるり!」


 ドドドドドドドドドド!


 キャサリンの進行方向にゴブリンが3体いた。


 パアンパアンパアン!


 キャサリンがマジカルステッキを1振りするとゴブリンが粉砕された。


 あの力、強すぎる!

 

 体力が高すぎる!


 地面を踏みしめる度に大地が揺れてないか!?


 化け物、化け物だ!


 角を曲がった瞬間に俺は全力で走る。

 それでもみるみるうちに距離を詰められていく。


「来るなああああああああああああ! こっち来るなよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」


 ドドドドドドドドドドドドドドド!


「まってええん! MPが切れてるのよねえん! 私のマジカルキッスで癒してあげるうん!」


 ドドドドドドドドドドドドドドド!


「うああああああああああああああああああああああああああああ!」

「もおん、はずかしがりやあん!」


 ドドドドドドドドドドドドドドド!

 キャサリンがどんどん距離を詰めてくる。


『ジョブ経験値を取得しました』


『ジョブ経験値を取得しました』


『ジョブ経験値を取得しました』


 キャサリンが俺を追い越して出口を塞いだ。


「さあ、私の胸に飛び込んできなさあいいん!」

「うああああああああああああああああああああああああああ!」


 俺は全力で逃げた。


「フカシ、そっちは短くて苦しい道だよ」


:キャサリンに追い詰められています! 落ち着いてください!

:お、おい、パーティーの3人が出口に向かって走って行くぞ!

:フカシをおとりにして逃げてる!


:フカシはもう駄目だ。キャサリンの術中にハマったな。

:LGBT以前に犯罪はダメだろう。

:同接が100を超えた、まだ増えてる!


:掲示板に書き込まれて色んなSNSにも書き込まれ始めた

:キャサリン=都市伝説&お化け&珍獣みたいなところがあるからな

:なんだろう、ホラーなんだけど見たくなるこの感じ、何といていいか分からんけどとにかく見てしまう

:どっちかって言うと珍味みたいな、形は悪いけど噛めば噛むほど味が出る感じだな

:頑張って走っているフカシを見ると感動して涙が出ちゃう、私も明日から頑張ろう


「うああああああああああああああああああああああああ!」


 壁に追い詰められた。


 ドン!


「壁ドンよおん! うっふうううん! こんな美少女から壁ドンされるなんてえん。フカシはマジラッキーボーイん♡」


 キャサリンがウインクした。

 そして俺の肩を掴む。


「やめ、やめろ! は、犯罪だ! 犯罪だぞ!」

「あらあん、今は緊急事態よおん。口から直接マジカルラブリーエキスをそそぎこんであげるわあん!」


「俺はいらないって言ってるだろ! 犯罪だ! やめろ! 離せええええええ!」

「あらあん、でも私は捕まってないわあん。つまり私は肯定されているも同じことよおん。おいしそうな唇ねえん。じゅるり!」


:キャサリンはダンジョンで暮らす事で捕まらず逃げているだけだ

:相手を追い詰めて人助けのふりをして欲望を満たすクズ、それがキャサリンだ

:もしJKがこんな目に合えば大問題だ、でも男子高生ならキスをされても尻を触られても笑って済まされたりする。日本にはそういう脆弱性があるからそこを突かれている


:これ普通に犯罪だけどモンスターがダンジョンから溢れて人命にかかわる事が日本で起きているから後回しにしているだけだから。衰退した日本に余力が無い事の裏返しでもある

:なんだろう、不思議と見続けたくなる、珍味が噛めば噛むほど味が出てくるみたいな中毒性がある

:ホラーは見てしまうよね、でも鳥肌が立って来た


:キャサリンがマジでむかつく、日本の脆弱性をフル活用して逃げ回っている

:追加で言うとLGBTで叩きにくい属性も悪用している、キャサリンは他の優しいLGBTに謝れ!

:キャサリンの冒険者としての才能と能力を世のため人の為に使っていればどんなに良かったかとは思う、今のキャサリンはただの犯罪者


「皆も私とフカシを祝福してるわあん」

「してない!」


 じたばたじたばた!


 キャサリンの唇が接近する。


『ジョブ経験値を取得しました』


 ぶちゅううんあ!


「んんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんん!!」


『ジョブ経験値を取得しました』


『ジョブ経験値を取得しました』


『ジョブ経験値を取得しました』


『ジョブ経験値を取得しました』


『ジョブ経験値を取得しました』


 その日、俺はファーストキスを失った。




 ※元パーティーの逃げた3人は帰った後もざまあされます。

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