Lost Love

星河語

序章

第1話 0

 スマホのバイブレーションが鳴ったので、舘山たちやま京太郎は電話に出た。

「……。Yes,I know.(はい、分かっています。)」

 しばらく向こうの話を聞いてから、京太郎は答えた。

『リセット日本支部の代表、山岸アリアと山岸千哉せんや夫妻を殺せ。アジア諸国で散々辣腕らつわんをふるってきたお前らしくない。日本が一番、リセットの活動が活発になっている。我々の計画に支障が出たら困るのだ。』

「はい。承知致しております。ご心配なく。」

 電話の相手との会話は全て英語だ。京太郎は電話を切った。軽くため息をつく。その時、ふわっと甘酸っぱい香りが鼻腔をくすぐった。恋人の水口みなぐち桂香の持っているワイングラスから香ったのだ。

「電話、終わった?」

「ああ。」

「なあに?苦い顔しちゃって。何か、嫌な指令でも来たの?はい、これ、どうぞ。」

 桂香は京太郎の気持ちをほぐすように笑いながら、ワイングラスを差し出した。

「Thanks.」

 受け取って、一口飲んでから口を開く。

「嫌な指令だ。」

「そう。」

 桂香が京太郎の後ろから抱きついてきた。

「ねえ。わたしが裏切ってるって言ったら、どうする?」

 京太郎は軽く笑って、小さなダイヤモンドが文字盤にちりばめられている腕時計をはめた、桂香の腕をでた。

「お前はそんなことをしない。」

 京太郎はワイングラスをテーブルの上に置くと、桂香の腕をほどき正面から抱き合った。見つめ合うと、どちらからともなく唇を重ね合わせた。

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